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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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138/162

第138話 これで終わりだ

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


悠真へ迫る、フロストオーガの強烈な一撃。


《絶風壁》を使う暇もなく、レオンたちも間に合わない。


絶体絶命の悠真を救うため、動いたのはリズでした。


長く続いたフロストオーガとの戦いも、ついに決着へ。


今回もよろしくお願いします!

「悠真、危ない!」


 レオンの叫びが雪原に響いた。


 フロストオーガが振り抜いた巨大な棍棒。その軌道から放たれた斬撃のような衝撃波が、雪を巻き上げながら悠真へ迫ってくる。


 避けなければ。


 頭では分かっている。しかし《烈風斬》を放った直後で、振り抜いた身体がまだ戻っていない。


《絶風壁》を使えば防げるかもしれない。


 だが、それすら間に合わなかった。


「くっ……!」


 レオンとドゴルドも動こうとしていた。しかし二人ともフロストオーガの左右へ回り込んでいたため、悠真との距離が離れすぎている。


 衝撃波が目前まで迫る。


 その瞬間。


「間に合って!」


 リズが懐から一枚のカードを取り出した。


 すでにメリーの身体強化魔法を受けている身体へ、さらにカードの力が重なる。


「《超加速》!」


 カードが眩い光を放った。


 次の瞬間、リズの姿が消えた。


「えっ?」


 悠真が声を漏らした時には、横から強い衝撃を受けていた。


 誰かの腕が身体に回る。


 視界が流れた。


 何が起こったのか理解するより早く、身体が横へ運ばれていく。


 直後。


 ズガァァァン!!


 衝撃波が悠真のいた場所を直撃した。


 雪原が大きく抉れ、砕けた石と雪が爆発したように空へ舞い上がる。


「悠真!」


 レオンが叫んだ。


 ドゴルドも思わず足を止める。


 吹き上がった雪煙が周囲を覆い、何も見えない。


「嘘だろ……」


 ラパンの顔から血の気が引いた。


 悠真の姿がない。


 それだけではなかった。


「リズ……?」


 メリーが周囲を見回す。


 リズまで消えている。


 あまりに一瞬の出来事だった。


《超加速》を使ったリズの動きを、誰も目で追うことができなかったのだ。


「まさか、二人とも……」


 ラパンが言葉を失う。


 雪煙だけが風に流されていく。


 その時だった。


「おおーい!」


「……は?」


 ラパンが間の抜けた声を出した。


「こっちだ!」


 全員が一斉に声の方向を見る。


 フロストオーガから大きく離れた廃墟の脇で、悠真が手を振っていた。


 その隣にはリズもいる。


「生きてる……」


 メリーが胸を押さえた。


「『おおーい』じゃねえよ!」


 ラパンの怒鳴り声が飛んできた。


「二人まとめて跡形もなくなったかと思っただろ!」


「俺だって何が起きたか分からなかったんだよ!」


 悠真はそう返してから、隣のリズを見る。


「リズが助けてくれたんだよな?」


「うん……なんとかね」


 リズは笑ったものの、その直後、膝から力が抜けた。


「わっ!」


 悠真が慌てて身体を支える。


「どうした!?」


「ちょっと……脚が動かない」


「え?」


「《超加速》の反動。短い距離しか使えないんだけど、それでも身体にかかる負担がすごいの」


 リズは自分の脚を動かそうとしたが、細かく震えるだけだった。


「ごめん。しばらく歩けないかも」


「謝るのは俺の方だろ」


 悠真はリズの肩を支えながら笑った。


「助かった。ありがとなリズ」


 その言葉に、リズは少しだけ目を丸くする。


 やがて頬を緩めた。


「へへ……今度は私が悠真を助けたね」


「まあな。今回は完全に助けられた」


「二人とも、そのままでいてください!」


 メリーが駆け寄ってきた。


 リズの脚へ両手を向けると、柔らかな光が包み込んでいく。


「かなり負担がかかっています。すぐには動かないでください」


「はーい……」


 素直に返事をしたリズだったが、すぐに顔を上げた。


「でも、あいつまだいるよ」


 雪煙の向こうから、巨大な影が現れる。


「グオオオオオッ!」


 フロストオーガだった。


 全身に無数の傷を負い、胸には悠真の《烈風斬》による大きな傷まで刻まれている。


 それでも倒れない。


「本当にしぶといやつだな……」


 悠真が剣を握り直した。


「悠真さん」


 リズの治療を続けながら、メリーが呼びかける。


「もう一度、《烈風斬》を撃てますか?」


「撃てる。でも、さっきので倒せなかったぞ」


「だからです」


「え?」


「悠真さんの《烈風斬》が、一番深く入っていました。あと少し足りないなら、その少しを私が補います」


 リズの脚を包んでいた光が消える。


「リズさん、まだ立たないでください」


「分かった」


 メリーは立ち上がると、今度は悠真へ杖を向けた。


「いきます!」


 杖の先から光が溢れ、悠真の身体を包み込む。


 その瞬間、全身に力が満ちてきた。


「おお……」


 剣が軽い。


 腕だけではない。脚も、背中も、身体そのものが一回り軽くなったように感じる。


「これが身体強化か」


「長くは続きません! 次で決めてください!」


「わかった!」


 フロストオーガも悠真を睨んでいた。


 自分へ最も深い傷を与えた相手を覚えているのだろう。


「グオオオオオオッ!」


 咆哮とともに棍棒を大きく引く。


「あの構え……」


 悠真には分かった。


 さっきと同じだ。


「悠真! また来るぞ!」


 レオンの声が飛ぶ。


 フロストオーガが棍棒を横薙ぎに振り抜いた。


 ブォンッ!


 再び巨大な斬撃が生まれる。


 雪原を削りながら、一直線に悠真へ迫ってきた。


 だが、今度は違う。


 身体も動く。


 何より、一度見ている。


「今度は見えてる!」


 悠真は斬撃をぎりぎりまで引きつけた。


 そして地面を蹴る。


 ドンッ!


 身体強化された脚力で雪が大きく弾ける。


 同時に《飛行》を発動した。


 悠真の身体が一気に上空へ跳ね上がる。


 斬撃が足元すれすれを通過した。


 そのまま後方へ走り、廃墟の壁を切り裂く。


「速っ!」


 座り込んだまま見上げていたリズが目を丸くした。


 上空へ逃れた悠真は、すぐにフロストオーガへ視線を戻した。


 巨大な棍棒を全力で振り抜いた直後。


 腕は大きく外へ流れ、胸から腹まで完全にガラ空きになっている。


 これ以上ないほどの隙だった。


「悠真さん、今です!」


 メリーの声が聞こえた。


「分かってる!」


 悠真は空中で剣を両手に握った。


 腕に力を込める。


 身体強化によって引き上げられた力が、剣へ集まっていく。


 フロストオーガが悠真を見上げた。


 だが、もう遅い。


 悠真は全身を使って剣を振り抜いた。


「これで終わりだあああっ!」


 風が爆発した。


「《烈風斬》!!」


 ゴオオオオオッ!!


 巨大な風の刃が、上空から斜めに走った。


 先ほどまでの《烈風斬》とは勢いが違う。


 フロストオーガが棍棒を戻そうとする。


 間に合わない。


 風の刃が無防備な胸へ食い込んだ。


 ズバァァァンッ!!


「グオッ……!」


 咆哮が途中で途切れた。


 青白い巨体に、胸から腹へ一本の斬線が走る。


 フロストオーガは数秒、そのまま立っていた。


 やがて棍棒が手から滑り落ちる。


 ドスン。


 巨体がゆっくりとずれた。


「……やった?」


 リズが呟く。


 次の瞬間。


 フロストオーガの身体が二つに分かれた。


 ズズンッ!!


 巨大な身体が雪原へ倒れ込み、積もっていた雪が一斉に舞い上がった。


 しばらく誰も動かなかった。


 悠真はゆっくり地面へ降りる。


「……倒した」


「やっとかよ……」


 ラパンがその場に座り込んだ。


「長すぎるだろ、この戦い!」


 ドゴルドも大きく息を吐く。


「こいつは本当に硬かったな」


「でも最後はすごかったよ!」


 リズが座ったまま興奮した様子で言った。


「真っ二つだよ! 真っ二つ!」


「お前はまず脚を治してもらえ」


「治してもらってるもん」


 メリーが苦笑する。


「もう少し休んでください」


 悠真の身体を包んでいた光も消えていった。


 同時に、自分の中で何かが一気に高まった感覚があった。


「……レベル20」


 一気に二つ上がっている。


 次のスキルを覚えるのはレベル21。


 そこまでもう遠くはなさそうだった。


「悠真」


 レオンが近づいてくる。


「鍵が必要なんだったな」


「ああ。三本揃わないと何も起きないみたいなんだ」


 レオンは持っていた古い鍵を取り出し、悠真へ渡した。


「だったらみんなで行こう。もうここで別れてる必要もないだろ」


 フロストオーガを失った町に残っているのは、スノーウルフやアイスバットなどの魔物ばかりだった。


 リズが歩けるまで少し待ってから、六人は灯台跡へ向かった。


 途中、何度か魔物が姿を見せたが、八人を分断するほどの相手ではない。


「また来たぞ!」


「今度は俺に任せろ!」


 ラパンの風魔法がアイスバットをまとめて吹き飛ばし、地上から飛び出したスノーウルフはレオンとドゴルドが素早く仕留める。


「私もいけるよ!」


「リズはまだ無理するな!」


「もう歩けるってば!」


 そんなやり取りをしながら進み、やがて灯台跡の高台が見えてきた。


「悠真!」


 ララが手を振った。


 その隣にはクランもいる。


「ずいぶん時間がかかりましたね」


「こっちは大変だったんだぞ」


 ラパンが答えると、ララは悠真へ視線を向けた。


「それで、鍵は?」


「第一声がそれかよ」


「だって、そのために行ったんでしょ?」


「まあ、そうだけど」


 悠真は苦笑しながら三本の鍵を取り出した。


「ちゃんと揃った」


 クランが立ち上がる。


「では、先ほど絞り込んだ範囲へ行ってみましょう」


 八人で移動し、悠真が三本の鍵を手にしたまま、灯台の影が届くと推測された場所へ足を踏み入れた。


 その瞬間だった。


「ん?」


 三本の鍵が同時に震えた。


「悠真、鍵!」


 ララが声を上げる。


 古びていた鍵の表面から、淡い光が漏れ始める。


 そして三本それぞれの先端から、細い光が地面へ伸びた。


 光は土の上を走り、角を曲がり、別の光とつながっていく。


 やがて悠真たちの目の前に、大きな長方形の枠が浮かび上がった。


「……ここが入口みたいね」


 ララが呟いた。


「でも、扉なんて見えないぞ」


「五十年分の土が上に乗っているのかもしれません」


 クランの言葉に、全員で土や石を取り除いていく。


 やがて硬い石のような扉が現れた。


「あった!」


 リズがしゃがみ込む。


 扉の端には、小さな鍵穴があった。


「どの鍵だ?」


「試すしかないわね」


「じゃあ一本目」


 悠真が鍵を差し込む。


「……違う」


「次ね」


 二本目を差し込んだ。


 今度は奥まで入った。


「お?」


 悠真がゆっくり回す。


 ガチャッ。


 確かな手応えがあった。


「開いた!」


 直後、足元から低い音が響き始めた。


 ゴゴゴゴゴ……。


 地面に埋まっていた扉が、土をこぼしながらゆっくりと上へ持ち上がっていく。


 その下から現れたのは、暗闇へ続く石造りの階段だった。


 冷たい空気が地下から流れてくる。


 ララが杖を掲げると、その先に淡い光が灯った。


 光に照らされ、長い階段が闇の奥へ伸びている。


 ララはその先を見つめてから、悠真たちを振り返った。


「行ってみましょう」


 悠真は三本の鍵を握り直す。


 そして七人の仲間とともに、五十年間閉ざされていた地下へ足を踏み入れた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


絶体絶命の悠真を救ったのは、リズの《超加速》でした。


二人とも跡形もなく消えたように見えたので、ラパンたちにとってはたまったものではありませんでしたが……。


そしてメリーの身体強化を受けた悠真が、再び放たれた攻撃を《飛行》でかわし、


「これで終わりだあああっ!」


からの《烈風斬》!


長く苦戦したフロストオーガを、ようやく倒すことができました。


さらに三本の鍵も揃い、ついに五十年間閉ざされていた地下への入口が開きました。


この階段の先に、本当に海賊たちの莫大な富が眠っているのでしょうか。


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次回もよろしくお願いします!

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