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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第136話 消えた灯台の影

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


ようやく辿り着いたエーデルは、五十年の時を経て魔物たちの住処へと変わっていました。


悠真たちの目的は魔物の討伐ではなく、すでに失われた白い灯台の跡を見つけること。


そこでレオンは、八人を二手に分けることを提案します。


絵に残された景色だけを頼りに、灯台があった場所を見つけられるのか。


今回もよろしくお願いします!

雪の向こうから姿を現したフロストオーガは、悠真たちを見つけると、太い腕で棍棒を持ち上げた。


「グオオオオッ!」


 腹の底まで震わせる咆哮が、人気のないエーデルに響き渡る。


 その声に呼応するように、崩れた建物の陰から白い影が次々と現れた。


 スノーウルフだ。


 さらに屋根の抜け落ちた倉庫から、青白い翼を持つアイスバットまで飛び出してくる。


「一匹じゃなかったのかよ!」


 ラパンが杖を構えながら叫んだ。


「悠真、どれくらいいる?」


 レオンの声に、悠真は《エリア感知》へ意識を集中させる。


 反応は町の至るところにあった。


 目の前にいる魔物だけではない。廃墟の奥にも、港の周辺にも大小様々な反応が散らばっている。


「数え切れない。町全体が魔物の住処になってるみたいだ」


「最悪じゃねえか!」


「ラパン、騒いでる暇があったら前を見ろ」


 ドゴルドが剣を抜く。


 レオンは魔物ではなく、一度町の奥へ目を向けた。


「ここで全員一緒に戦っていても仕方がないな」


「分かれるの?」


 リズが剣を構えたまま振り返る。


「俺たちが魔物を引きつける。悠真たちは灯台を探してくれ」


 レオンが素早くメンバーを振り分けていく。


「こっちは俺、ドゴルド、ラパン、リズ、メリーだ」


「私はそっちなんだ」


「魔物を倒す方がいいだろ?」


「うん!」


 即答したリズに、ラパンが呆れた顔を向ける。


「説明一言で納得したぞ、この子」


「じゃあ俺は?」


「悠真はクランとララを連れて行ってくれ」


 悠真は隣に立つ二人を見る。


「この三人?」


「クランの戦い方を俺はほとんど見てない。海底ダンジョンでも別行動だったからな。お前なら分かるだろ?」


 確かに悠真は、メルキラと戦う前からクランと二人で行動している。身体強化を使った素早い動きも、双短剣による攻撃も、防御の性質も知っていた。


「それにララがいれば、灯台を探す助けになるはずだ。五十年前の絵一枚から場所を探すんだ。戦える奴だけ集めても仕方ない」


「随分信用してくれるじゃない」


 ララが少しだけ口元を緩める。


「頼りにしてるってことだ」


「それなら任せて」


 話している間にも、フロストオーガが雪を蹴散らしながら近づいてきた。


「グオオッ!」


 巨大な棍棒が振り上げられる。


「みんな散るんだ!」


 レオンの声と同時に全員が左右へ飛んだ。


 直後、棍棒が地面へ叩きつけられる。


 ズドンッ!


 積もった雪が爆発したように舞い上がり、その下の石畳まで砕けた。


「こいつは俺たちが引き受ける!」


 レオンが踏み込む。


 反対側からドゴルドも距離を詰め、フロストオーガの意識を二方向へ散らした。


「リズ、右から来るぞ!」


「見えてる!」


 スノーウルフへ向かってリズが駆け出す。


 メリーがその背中へ杖を向けた。


「身体強化をかけます!」


 淡い光がリズを包んだ直後、その速度が一段上がる。


 一体目のスノーウルフが飛びかかってきた。


 リズは身体を沈めて牙をかわすと、そのまま下から剣を振り上げる。


 ザシュッ!


 白い巨体が横へ転がった。


 上空ではアイスバットの群れが旋回している。


「ったく、上までいるのかよ!」


 文句を言いながらも、ラパンはすでに杖を空へ向けていた。


 杖の先に魔力が集まり、風が渦を巻く。


「吹き飛べ!」


 放たれた風が上空で弾け、アイスバットの群れをまとめて巻き込んだ。


「やるじゃん!」


 リズが声を上げる。


「俺を誰だと思ってる! これでもベテラン冒険者だぞ!」


「喋ってないで次が来てるわよ!」


「分かってるって!」


 背後からメリーに注意され、ラパンが慌てて杖を構え直す。


 その様子を確認した悠真は、ララとクランへ顔を向けた。


「俺たちはこっちから行こう」


 三人は戦場を離れ、エーデルの奥へ走り出した。


 雪に埋もれた町は、絵に描かれていた姿とはあまりにも違っていた。


 建物のほとんどが崩壊している。


 壁だけが残った家、屋根の落ちた倉庫、雪の中から斜めに突き出した柱。かつて道だった場所さえ分からなくなっており、三人は何度も瓦礫を迂回しながら進んだ。


 ララは時折立ち止まり、持ってきた絵を開く。


「この辺りに大きな建物があったはずなんだけど……」


「これじゃ分からないな」


 悠真が周囲を見回す。


 五十年という時間は、町の姿を完全に変えていた。


 それでも海岸線までは変わっていない。


 クランが絵と港を何度も見比べた。


「建物を基準にしない方がよさそうですね」


「私もそう思う。海と高台の位置から探しましょう」


 ララが絵の一点を指でなぞる。


「灯台は港から見て、少し奥まった高台に建ってる」


「だったら、あっちか」


 三人が向かおうとしたところで、悠真が足を止めた。


「待って」


 《エリア感知》に反応がある。


「前に三体」


「避けられますか?」


「一体がこっちへ来てる。もう気づかれてるな」


 ほどなく崩れた壁の向こうからスノーウルフが飛び出した。


 悠真が剣へ手を伸ばすより早く、クランが前へ出る。


 両手には短剣。


 身体強化を使ったクランが雪を蹴った。


 一気にスノーウルフとの距離を詰め、牙を横へかわす。


 すれ違いざまに短剣が走った。


 スノーウルフが雪へ倒れる。


「やっぱり速いな」


「先を急ぎましょう」


 クランは短剣をしまうと、何事もなかったように歩き出した。


 三人はさらに町の奥へ進んだ。


 やがて建物が途切れ、その先に緩やかな斜面が現れる。


「この高台……」


 ララが絵を見る。


「たぶん、ここよ」


 雪を踏みしめながら斜面を登る。


 高台へ出ると、眼下にエーデルの港が広がった。


 壊れた桟橋。


 雪に埋もれた船。


 崩れた町並み。


 絵に描かれた賑やかな港とは別世界だった。


 それでも、海へ突き出した岬の形は同じだった。


「ここからなら合わせられそう」


 ララとクランが並んで絵を覗き込む。


 悠真は二人の指示に従って高台を歩いた。


「もう少し右です」


「こっち?」


「行きすぎ。悠真、二歩戻って」


「俺が灯台役になってない?」


「今はそうね」


「最初に言ってくれよ」


 何度か位置を変えたところで、ララの表情が変わった。


「そこで止まって!」


 悠真が足を止める。


 クランも絵から顔を上げ、港と悠真の位置を確認した。


「おそらく、その周辺です」


「ここに灯台があったのか?」


 三人で雪を払い始める。


 しばらくすると、悠真の靴が何か硬いものに当たった。


 ゴツッ。


「ん?」


 雪を掻き分ける。


 下から平らな石が現れた。


 さらに周囲の雪をどけると、石は弧を描くように並んでいる。


 ララがしゃがみ込み、手袋で表面をなぞった。


「円形になってる……。灯台の基礎じゃない?」


「場所はここで間違いなさそうですね」


 クランが立ち上がる。


 ようやく最初の手がかりを掴んだ。


 しかし悠真が暗号を思い出す。


「問題は影だな」


『陽の沈む刻、影は眠れる場所を指し示す』


 肝心の灯台は、もう存在しない。


「まず高さを考えましょう」


 クランが絵を受け取った。


 描かれている灯台と周囲の建物をじっと見比べる。


「正確には無理ですが、周りの建物との比率からある程度は推測できます」


「クラン、そういうの得意なの?」


「数字や計算は昔から得意なんです」


 意外な一面だった。


 クランはしばらく絵を眺めてから、灯台跡の中心を示す。


「悠真さん、飛んでいただけますか?」


「俺が?」


「十メートルくらいからお願いします」


 悠真は《飛行》を使い、灯台跡の中央から真上へ浮かび上がった。


「このくらい?」


「もう少し高いですね」


 さらに上昇する。


「十五くらい!」


 ララが下から絵と悠真を交互に見る。


「もう少し!」


「まだ?」


 十八メートルほどまで上がったところで、ララが手を上げた。


「その辺りかも!」


 念のため二十メートルまで試し、再び少し下げる。


 二人が絵と地形を照らし合わせた結果、灯台の高さは十五から二十メートル程度だった可能性が高いという結論になった。


 悠真が地面へ降りる。


「高さは大体分かった。でも影はどうする?」


 その時だった。


 先ほどまで激しく降っていた雪が、いつの間にか小降りになっていた。


 厚い雲がわずかに裂ける。


 その隙間から、沈みかけた夕日がほんの一瞬だけ姿を見せた。


「あっ」


 ララが顔を上げる。


 クランはすぐに夕日の位置を確認した。


「……この方向ですね」


 しかし、夕日はすぐ雲の向こうへ隠れてしまった。


「一瞬だったな」


「ですが、方向は確認できました」


 クランが灯台跡から反対側へ視線を向ける。


「影はこの方向へ伸びるはずです」


「じゃあ、その先を探せばいい?」


 悠真が歩き出そうとすると、クランが首を横に振った。


「まだです」


「違うの?」


「方向は分かりました。でも、『陽の沈む刻』がいつなのか分かりません」


 ララも暗号を見直す。


「日が沈む少し前なのか、本当に沈む直前なのか……」


「はい。太陽の高さが変われば影の長さも変わります。灯台の高さも正確には分かっていませんから、計算しながら範囲を絞るしかありません」


「何か使えないかな」


 悠真が高台から港を見下ろした。


 雪に埋もれた廃船。


 その中に、斜めに倒れた長い柱のようなものが見える。


「あれ……マストじゃない?」


 ララも気づいた。


「使えるかもしれない」


 三人は港まで戻り、朽ちた船から比較的状態の良いマストを運び出した。


 問題は、想像以上に重かったことだ。


 どうにか高台まで運び、灯台跡の中央へ戻る。


「これ、本当に使うの?」


「使えるものはこれくらいしかないもの」


「簡単に言うなあ……」


 悠真は《風圧バリア》の力も利用しながらマストを持ち上げた。


 下端を灯台跡へ合わせ、上部を支えながら《飛行》で浮かぶ。


「ララ! これでいいのか?」


「少し右!」


「こっち?」


「行きすぎ! 戻して!」


 悠真が歯を食いしばりながらマストを垂直に近づける。


「これでどう?」


 ララは少し離れ、傾きを確認した。


「そこ! そのまま!」


「そのままって……これ、重いんだけど」


「今考えるから、そのままキープして!」


 クランはすでに雪の上へしゃがみ込み、短剣の先で線と数字を書き始めていた。


 灯台の高さ。


 マストの長さ。


 夕日の方向。


 そして、これから影が伸びると考えられる範囲。


「クラン、まだ?」


「もう少しだけお願いします」


 クランは雪の上の数字から目を離さない。


 ララもその隣へしゃがみ込み、絵と計算を交互に確認している。


 二人とも完全に考え込んでいた。


 悠真だけが空中でマストを抱えたまま取り残される。


「うーん……結構きついんだけど」

最後まで読んでいただきありがとうございます!


レオンたちが魔物を引き受ける間に、悠真、ララ、クランはついに灯台が建っていたと思われる場所を発見しました。


しかし暗号に残されていたのは、


「陽の沈む刻、影は眠れる場所を指し示す」


という言葉。


灯台はすでになく、「沈む刻」がどの時点なのかも分かりません。


ここで思わぬ力を発揮しそうなのが、計算を得意とするクラン。


そしてその横では、なぜか悠真が重いマストを支え続けることに……。


果たして三人は、五十年前に灯台が落としていた「影」を再現できるのでしょうか。


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