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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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135/162

第135話 雪原の先に眠る港

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


絵が示していた場所は、約五十年前に壊滅した港町エーデル。


悠真たちはボッツのスノーフローターで、さらに北を目指すことになります。


一方その頃、クランは誰にも知られないまま、ある人物へ連絡を取っていました。


今回もよろしくお願いします!

ウィストンの夜は、昼間よりもずっと静かだった。


 港から少し離れた宿の一室で、クランは窓の外を確かめる。通りに人影はなく、吹きつける雪が薄暗い灯りの中を流れていた。


 悠真たちは明日の出発に備え、すでにそれぞれの部屋へ戻っている。


 クランは扉にも目を向けてから、小さく息を吐いた。


 そして、懐から連絡用の道具を取り出す。


 しばらくして、低い男の声が返ってきた。


『クランか』


「はい。ご報告があります」


『話せ』


 クランは声を抑えたまま、これまでの出来事を順に伝えていった。


 アルファ地区でスノーワイバーンが大量に現れていること。


 その原因と思われるスノードラゴンが確認されたこと。


 さらに、そのドラゴンへ対抗できる可能性を持つ武器が存在すること。


「聖剣マクベスという剣です」


 向こう側が、ほんのわずかに静かになった。


『聖剣マクベス……』


「ゼラモードが作った剣だと、悠真さんは聞いています。ドラゴンをも切り裂く可能性があるそうです」


『ほう、ゼラモードが作ったものか』


「現在はウィストンの武器店にあります。ただ、店主が提示した金額は三十億マニーでした」


『三十億』


 驚いた様子はなかった。


 むしろディアボロスは、その金額を測るように一度だけ繰り返した。


『ドラゴンをも切り裂く剣ならば、その程度は妥当かもしれんな』


 クランは黙って次の言葉を待った。


 しかし、ディアボロスはマクベスについて、それ以上何も言わなかった。


『悠真たちはどうしている』


「剣を買うための資金を集めています。海底ダンジョンを攻略し、そこで手がかりを見つけました。明日、その先にあると思われるエーデルへ向かう予定です」


『エーデル……か』


「ご存じですか?」


『名だけはな。今はたしか廃港だったはずだが』


「はい。五十年ほど前に魔物に襲われ、壊滅したと聞いています」


 再び短い沈黙が落ちる。


『引き続き同行しろ』


「承知しました」


『何か動きがあればすぐに報告しろ。特に聖剣についてはな』


「……はい」


 返事をしてから、クランは連絡を切った。


 静けさが戻る。


 窓の向こうでは雪が降り続いていた。


 クランはしばらく手元を見つめ、それから連絡用の道具をしまった。


 翌朝。


 ウィストンの外れには、一台のスノーフローターが用意されていた。


「これ、ボッツさんのだったんですね」


 悠真が車体を見上げる。


「海しか知らねえと思ったか?」


 運転席からボッツが笑った。


「この辺じゃ冬に動ける足がなきゃ生活できんからな。潜水艇より使う回数は多いくらいだ」


 十数人が乗れる車体に、悠真たち八人が乗り込む。


 ラパンは席へ腰を下ろすなり、外を見て顔をしかめた。


「なあ、本当にこれより北へ行くのか?」


「そうだけど?」


 リズが窓の外を覗く。


「昨日より雪すごいんだけど」


「お前、楽しそうに言うなよ。俺には嫌な予感しかしないぞ」


「ラパンって、いつも嫌な予感してない?」


「大体当たってるだろ!」


 ボッツが笑いながらスノーフローターを動かした。


 魔石の力で車体が雪面からわずかに浮き、そのまま白い大地を滑り始める。


 ウィストンを離れて一時間ほどは、まだ周囲の景色を見る余裕があった。


 しかし北へ進むにつれ、吹雪は明らかに強くなっていった。


 風が車体を叩き、窓の外はほとんど白一色になる。


「魔法の絨毯じゃ無理だったわけね」


 ララが外を見ながら呟いた。


「飛んだら一瞬で流されそうだな」


 悠真も同意する。


「俺なら絶対飛ばないぞ」


 ラパンが即答した。


「誰も飛べって言ってないよ」


 リズが笑う。


 さらに北へ進み、出発から三時間近く経った頃だった。


 悠真の表情が変わった。


「ボッツさん、止めてください」


「どうした?」


 スノーフローターが速度を落とす。


 悠真は目を閉じ、《エリア感知》へ意識を集中させた。


 ひとつ。


 ふたつ。


 いや、そんな数ではない。


 雪原のあちこちに魔物の反応がある。


 そしてさらに北。


 エーデルがあるはずの方向には、それとは比べものにならないほど多くの反応が集まっていた。


「……多いな」


 レオンが悠真の顔を見て察する。


「この先、魔物がかなりいる」


 ボッツが眉を寄せた。


「まだエーデルまでは距離があるぞ」


「でも、ここからは歩こう」


「おい」


「これ以上進んだら、ボッツさんまで危険に巻き込む」


 悠真は迷わなかった。


 自分たちは戦える。


 だが、ボッツにそこまで付き合わせる理由はない。


「俺たちは防寒もしてるし、ここからなら何とか行ける」


 ララも頷く。


「雪は厳しいけど、装備は揃ってるわ」


「私は平気!」


 リズが真っ先に立ち上がった。


 ラパンがその姿を見て嫌そうな顔をする。


「元気だな、お前」


「行けば着くでしょ」


「その考え方で雪原を歩くな!」


 結局、ボッツは渋い顔をしながらも八人を降ろした。


「無理だと思ったら戻れ。俺はウィストンにいる」


「分かった。ありがとう、ボッツさん」


 スノーフローターが吹雪の向こうへ消えていく。


 八人は厚手の防寒具を整え、徒歩で北へ進み始めた。


「……寒い」


 歩き始めて十分も経たないうちに、リズが呟いた。


 ラパンが振り返る。


「早い! さっきまで平気って言ってただろ!」


「平気と寒くないは別だから」


「その理屈、便利すぎるだろ!」


 ラパン自身も肩をすくめ、首元の布を引き上げた。


 吹雪の中では声を張らなければ会話も聞き取りにくい。


 その時だった。


「止まって」


 悠真が手を上げた。


 全員の足が止まる。


「前にいる。七体」


 レオンが剣へ手をかける。


「近いか?」


「かなり」


「どこ?」


 リズが雪の向こうへ目を凝らす。


「まだ見えない。だから勝手に」


「あ、いた!」


「最後まで聞け!」


 白い影が吹雪の中から飛び出した。


 スノーウルフ。


 雪と同じ白い毛に覆われた狼型の魔物が、低い姿勢のまま一気に距離を詰めてくる。


「来た!」


 リズが剣を抜き、先頭の一体へ踏み込んだ。


 ザシュッ!


 横薙ぎの一撃がスノーウルフを斬り飛ばす。


「一体!」


「リズ、後ろ!」


「え?」


 雪を巻き上げ、別の一体が横から跳びかかった。


 レオンの剣がその進路へ走る。


 鋭い一閃。


 スノーウルフが雪の上へ落ちた。


「だから一人で飛び出さないで!」


 ララの声が飛ぶ。


「ちゃんと一体倒したでしょ?」


 リズが不満そうに振り返る。


「一体倒して残りに囲まれたら意味ないだろ!」


 ラパンまで加わった。


 その間にも残るスノーウルフが距離を詰めてくる。


 悠真が剣を構える。


「烈風斬!」


 ブォン!


 横一文字に振り抜いた剣から広い風の刃が走り、三体のスノーウルフをまとめて吹き飛ばした。


 残った魔物もレオンたちが仕留める。


 最後の一体が雪へ倒れた直後、悠真の頭の中に声が響いた。


《レベルが18に上がりました》


「十八?」


 悠真が目を瞬かせる。


 メルキラを倒した時に一気に経験値が入っていたのだろう。


 どうやら次のレベルまで、あとわずかだったらしい。


 続いて、もう一つ声が響く。


《新たなスキルを習得しました》


《絶風壁》


「新しいスキル……」


「何覚えたの?」


 リズがすぐに覗き込んでくる。


「《絶風壁》」


「強そうな名前だな」


 ドゴルドが興味を示す。


 悠真は試しに前方へ手を向けた。


「絶風壁」


 ゴォッ!


 一瞬で風が圧縮され、目の前に半透明の壁が立ち上がった。


 吹きつけていた雪が壁へぶつかり、左右へ弾かれていく。


「おお……」


 ラパンが近づこうとして、すぐ足を止める。


「これ、触って大丈夫なやつか?」


「たぶん」


「たぶんで触らせるなよ!」


 悠真はしばらく確認してからスキルを解除した。


「風圧バリアよりかなり硬そうだ。でも前しか守れないみたいだな」


「使い分けってことね」


 ララが納得したように頷く。


 新しい力を確認し、一行は再び歩き始めた。


 さらに一時間ほど進んだ頃。


 吹雪の向こうに、黒い影が見えた。


 最初は岩かと思った。


 しかし近づくにつれ、それが建物だと分かる。


 屋根の崩れた家。


 半分雪に埋もれた倉庫。


 折れた桟橋。


 港には朽ちた船の残骸まで残っていた。


「……ここか」


 悠真が足を止める。


 五十年前に壊滅した港町。


 エーデル。


 人の姿はどこにもない。


 代わりに《エリア感知》には、町のあちこちから魔物の反応が返ってきた。


「悠真?」


 メリーが表情を窺う。


「いる。それもかなりの数」


 雪に埋もれた建物の窓から、スノーウルフの目がこちらを覗いていた。


 別の建物の屋根裏からは、翼を持つ小さな反応。


 そして町の奥。


 ひときわ大きな反応が動いた。


 ズシン……。


 崩れかけた建物の陰から、巨大な人影が姿を現す。


 三メートルを優に超える体。


 青白い皮膚。


 雪をかぶった分厚い毛。


 手には建物の柱をそのまま引き抜いたような巨大な棍棒を握っている。


「……大きいね」


 リズが見上げた。


 ラパンがすぐ横から釘を刺す。


「お前、『戦ってみたい』とか絶対言うなよ」


「言わないよ」


「よし」


「でも、どれくらい強いんだろ?」


「同じだよ!」


 その声に反応したのか、巨大な魔物がこちらを向いた。


 悠真は剣へ手をかける。


 かつて人々で賑わっていた港町エーデル。


 五十年の時を経た今、そこはすっかり魔物たちの住処へと変わっていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


クランからディアボロスへ伝わった《聖剣マクベス》の存在。


ドラゴンをも切り裂く剣と聞いたディアボロスは、いったい何を考えているのでしょうか。


そしてメルキラ戦で大量の経験値を得ていた悠真は、スノーウルフとの戦いでついにレベル18へ!


新スキル《絶風壁》も習得しました。


ようやく辿り着いたエーデルは、かつての港町の面影を残しながらも、今では完全に魔物たちの住処。


果たして、すでに失われた灯台の手がかりを見つけることはできるのか。


次回もよろしくお願いします!

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