第133話 三枚の絵が示す場所
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メルキラとの激戦を終え、ついに開いた新たな道。
その先で悠真たちを待っていたものとは。
そして、三つに分かれて進んだそれぞれのルートで手に入れたものが、ようやく一つに集まります。
今回もよろしくお願いします!
メルキラを倒したことで現れた通路は、これまで歩いてきたダンジョンとは明らかに雰囲気が違っていた。
悠真を先頭に、クラン、ララ、リズ、メリーが慎重に進んでいく。
戦いを終えたばかりということもあり、誰の足取りも決して軽くはない。メリーの回復魔法で傷こそ癒えているが、消耗した体力や魔力まで完全に戻ったわけではなかった。
「またメルキラみたいなのが出てきたら、今度こそ無理だからね」
リズが剣を持ったままぼやく。
「縁起でもないこと言うなよ」
「だって、ダンジョンってまだ奥があるんでしょ?」
「ボスは倒したんだから、さすがにもういないと思いたいけどな」
悠真自身、それを信じたいところだった。
ただ、不思議なことに《エリア感知》には魔物らしい反応がない。
代わりに、少し先に三つの反応があった。
「……ん?」
悠真が足を止める。
「どうしました?」
クランが尋ねた。
「前に誰かいる」
「魔物?」
ララが杖を構える。
「いや……人だと思う。三人」
その数を聞いた瞬間、悠真には思い当たる顔があった。
「もしかして」
歩く速度を上げる。
通路の先に明かりが見え、やがて広い空間へ出た。
「おっ!」
最初に声を上げたのはラパンだった。
「やっと来たか!」
「やっぱり!」
そこにはレオン、ドゴルド、ラパンの三人がいた。
レオンは壁際に立ち、ドゴルドは古びた椅子に腰掛けている。ラパンだけが元気よく悠真たちへ近づいてきた。
「なんでお前たちが先にいるんだ?」
「こっちが聞きたいくらいだ。俺たちは何日も階段を歩いたんだぞ!」
「それ前に共有カードで聞いたけど」
「聞いただけじゃ分からないんだよ! 下りてると思ったら上ってるし、同じ骨には何回も会うし、食い物は減るし!」
「でも外にでたらそんなに時間経ってなかったんだろ?」
「だから余計に怖いんだよ!」
ラパンが力いっぱい訴える横で、レオンが小さく息を吐いた。
「その話はあとでいい。それより、そっちは大丈夫だったのか?」
「まあなんとか。ちょっと大変だったけどな」
「ちょっと?」
ララが呆れた顔をする。
「メルキラと戦ったのを、ちょっとで済ませるの?」
「メルキラ?」
レオンが眉を寄せる。
「かなり古い記録に残っている魔物です」
クランが説明する。
「おそらく、このダンジョンのボスだったのでしょう。倒したことで道が開き、ここへ来ました」
「ボスと戦ってたのかよ!」
ラパンが目を丸くした。
「俺たちは階段歩いてただけなのに!」
「こっちだって好きで戦ったんじゃないよ!」
リズが言い返した。
ようやく八人が揃った。
悠真はそこで初めて、周囲をゆっくり見回した。
「ここ……」
ダンジョンの一室ではない。
長い木製のテーブルがあり、その周囲には形の違う椅子がいくつも並んでいる。壁際には簡素な寝床が並び、古びた毛布まで残されていた。
棚には錆びた皿や杯。床には空になった酒瓶が転がっている。
奥には調理場らしき場所もあり、煤で黒くなった鍋がそのまま残っていた。
壁には色褪せた海図が貼られ、その隣には錆びた剣や斧が何本も掛けられている。
長い年月を経て、どれも朽ちかけている。
それでも分かる。
ここにはかつて、大勢の人間がいた。
「海賊のアジト……」
悠真が呟く。
「俺たちもそう思った」
レオンが答える。
「ここは隠れていただけの場所じゃない。かなり長い間、生活していたみたいだ」
リズが古びたテーブルへ近づく。
「そういえば私たち、外で沈没船を見つけたよ」
「沈没船?」
「たぶん海賊船。中に宝石がいっぱいあったの!」
ラパンが勢いよく振り向いた。
「宝石!?」
「まだ価値は分からないわよ」
ララがすぐに釘を刺す。
「全部、私の空間魔法で保管してあるから、戻ってから調べればいいわ」
「三十億マニーくらいあるかな?」
リズの期待に満ちた声に、ララは肩をすくめた。
「だから、それは調べないと分からないって言ってるでしょ」
少なくとも、何も得られなかったわけではない。
だが、悠真たちがこの海底ダンジョンへ来た目的は聖剣マクベスを買うための資金だ。
三十億マニー。
あの宝石だけで届くとは、さすがに悠真も思っていなかった。
「そうだ」
レオンが何かを思い出したように荷物へ手を伸ばした。
「俺たちが宝箱から手に入れたものがある」
取り出したのは、一枚の紙だった。
描かれているのは意味の分からない線や模様だけ。
「あ、それ!」
リズが声を上げる。
「私たちも持ってる!」
ララが自分たちの紙を取り出した。
悠真もクランを見る。
「俺たちのもある」
「はい」
三枚の紙が、古びた海賊のテーブルに並べられた。
それぞれ単独では何が描かれているのか分からない。
「これ、やっぱりつながるんじゃない?」
リズが一枚を動かす。
ララも別の一枚の向きを変えた。
「たぶん……こうね」
悠真が最後の一枚を近づける。
三枚の端が重なった。
その瞬間だった。
カッ!
「うわっ!」
強烈な青白い光が三枚の境目から噴き出した。
悠真たちは思わずテーブルから離れる。
「何!?」
「触らないで!」
ララがリズを止めた。
「まだ何もしてないよ!」
「あなたは先に触るから言ってるの!」
三枚の紙がテーブルからふわりと浮き上がった。
「紙が……」
メリーが見上げる。
空中で三枚が横一列に並ぶ。
すると境目から細い光が無数に伸び、糸のように互いを結び始めた。
シュウウウ……。
三枚の境界が光に包まれ、ゆっくりと消えていく。
それだけでは終わらなかった。
紙に描かれていた意味不明な黒い線が輝き始める。
青い光が流れた場所に海が現れた。
次に港。
いくつもの船。
建物が並ぶ町並み。
「絵が変わってる……!」
リズが目を見開く。
今まで存在しなかった景色が、紙の上に次々と描き出されていく。
そして最後。
港を見下ろす高台へ光が集まった。
そこに一本の白い塔が浮かび上がる。
灯台だった。
次の瞬間、絵の中の灯台が強く輝いた。
パァァッ!
まるで本物の灯台が光を放ったように、一筋の光が部屋を横切った。
「うおっ!」
ラパンが頭を抱えてしゃがみ込む。
光は一瞬で消えた。
空中に浮かんでいた紙が、ゆっくりとテーブルへ落ちる。
悠真たちは恐る恐る近づいた。
三枚だった紙は、完全に一枚になっている。
継ぎ目すらない。
「魔法のインクね」
ララが紙を注意深く観察した。
「三枚が揃ったことで、仕込まれていた魔法が発動したんだと思う」
「こんなことまでできるのか」
「かなり手の込んだ魔法よ。最初から三枚揃わないと、本当の絵が見えないようにしてあったのね」
悠真は完成した絵を見る。
高台の灯台。
その下に広がる港町。
海には何隻もの船が浮かんでいる。
「ここ、どこだ?」
誰も答えない。
レオンもドゴルドも知らない。
ララも首を横に振った。
悠真はしばらく絵を見つめてから、ふと思いついた。
「じいちゃんなら知ってるかも」
《双界カード》を取り出す。
ゼラモードへ連絡すると、しばらくして声が返ってきた。
『どうした、悠真』
「じいちゃん、ちょっと見てほしいものがあるんだけど」
悠真は完成した絵を見せる。
「この港、どこか分かる?」
『港?』
ゼラモードが絵をじっと見る。
『うーむ……』
「知ってる?」
『どこかで見たような気はするのう』
「本当?」
悠真の表情が明るくなる。
「どこ?」
『それが分からん』
「分からないのかよ!」
『長く生きとると、いろいろ忘れるんじゃ』
「肝心なところ忘れすぎだろ……」
結局、ゼラモードでも場所を特定することはできなかった。
悠真は双界カードをしまい、もう一度絵を見る。
「これだけじゃ分からないか」
「ねえ」
リズが紙の端を持ち上げた。
「裏にも何かあるよ」
「え?」
紙を裏返す。
そこには先ほどまでなかった文字が、淡い光を帯びて浮かび上がっていた。
悠真がゆっくり読み上げる。
「海を見守る白き塔。陽の沈む刻、影は眠れる場所を指し示す……」
全員が黙って聞く。
「三つの鍵を持つ者よ、その影の先を探せ。海を制した者の富は、光の届かぬ場所に眠る」
沈黙が落ちた。
やがてレオンが荷物へ手を伸ばす。
「三つの鍵……」
一本の古びた鍵がテーブルに置かれた。
ララも自分たちが持っていた鍵を出す。
悠真もクランから受け取り、最後の一本を置いた。
三本。
絵に描かれた灯台。
そして、裏側に現れた暗号。
悠真は三本の鍵を見つめ、それからもう一度、名も知らぬ港町の絵へ視線を移した。
「……まずは、この灯台がどこにあるのか探さないとな」
誰も完全攻略できなかった海底ダンジョン。
その最奥で悠真たちが手に入れたのは、宝そのものではなかった。
さらに大きな宝へと続く、新たな手がかりだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
ついに八人が再合流!
そして三枚の紙が揃ったことで魔法が発動し、謎の港町と灯台が描かれた一枚の絵が完成しました。
さらに裏側には、三本の鍵につながる謎めいた言葉まで。
ゼラモードなら分かるかと思いきや、まさかの「見たことがある気はする」で終了。
海底ダンジョンを攻略すれば宝が手に入ると思っていた悠真たちですが、どうやら本当の宝まではもう一段階ありそうです。
謎の灯台はいったいどこにあるのか。
次回もよろしくお願いします!




