第132話 凍てつく巨体
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ララ、リズ、メリーが合流し、ついに五人となった悠真たち。
しかし、相手はこれまでの魔物とは明らかに格が違うメルキラ。
人数が増えたとはいえ、簡単に突破できる相手ではありません。
五人はこの強敵をどう攻略するのか。
今回もよろしくお願いします!
メルキラが大きく口を開いた。
喉の奥が赤く輝き、次の瞬間、猛烈な炎が石室を埋め尽くす勢いで吐き出される。
「みんなバラけるぞ!」
悠真の声に、全員が一斉に動いた。
リズとクランが左右へ飛び、ララとメリーも後方へ退く。悠真は《風圧バリア》を展開しながら横へ走った。
ゴォォォォッ!
炎が石床を舐める。
熱気が一気に広がり、離れていても肌が焼けるようだった。
「五人になっても、楽にはさせてくれないか!」
悠真が剣を構え直す。
「当たり前でしょ!」
リズが床を蹴った。
メルキラの正面へ飛び込み、剣を振り下ろす。
ガキィン!
剣は半透明の魔法障壁に阻まれた。
「またこれ!」
リズが舌打ちして飛び退く。
その隙を狙って、クランがメルキラの背後へ回った。
身体強化を使った動きは速い。巨体の死角へ一瞬で潜り込み、二本の短剣を構える。
しかし、額の目がギョロリと動いた。
「やっぱり見えていますか!」
メルキラの腕が背後へ振るわれる。
クランは攻撃を諦め、すぐにバリアを展開した。
ドンッ!
巨大な腕が障壁へ激突し、クランの身体が吹き飛ばされる。
「クラン!」
「大丈夫です!」
着地したクランが答える。
そこへララが杖を向けた。
「今度はこっちよ!」
杖の先から魔法が放たれる。
だが、メルキラはすぐに反応した。
片腕を上げ、防御魔法を展開する。
魔法がぶつかり、激しい音とともに弾けた。
「本当に隙がないわね……!」
ララが顔をしかめる。
「烈風斬!」
今度は悠真が剣を横薙ぎに振り抜いた。
扇状の斬撃がメルキラへ襲いかかる。
しかし、それすら防御魔法に阻まれた。
バァン!
衝撃で障壁が揺れたものの、破るまでには至らない。
「硬すぎるだろ!」
悠真が叫んだ直後、メルキラの両腕に炎が集まった。
「また来ます!」
メリーの声が飛ぶ。
二つの巨大な火球が放たれた。
悠真たちは散開する。
ドォン!
ドォォン!
火球が石床へ激突し、爆炎とともに破片が飛び散った。
息をつく暇もない。
炎の向こうからメルキラが飛び出してくる。
「速い!」
リズが剣で腕を受けた。
ガキィン!
「くっ……!」
両足が床を滑る。
「リズ!」
メリーが杖を向けた。
身体強化魔法の光がリズを包む。
「助かった!」
リズは踏ん張ると、メルキラの腕を押し返した。
だが、反撃しようとした瞬間には、もう一方の腕が迫っている。
「うわっ!」
慌てて身を屈める。
頭上を巨大な腕が通り過ぎた。
五人になった。
それでも状況は変わらない。
三つの目が別々の方向を捉え、誰かが動けばすぐに反応する。
遠距離から攻撃すれば防御魔法。
近づけば巨体から繰り出される強烈な攻撃。
さらに口から吐く炎と火炎魔法まである。
悠真は攻撃を避けながら、必死にメルキラの動きを見ていた。
このままでは駄目だ。
一人ずつ攻撃しても、すべて対応される。
「みんな! 一度下がれ!」
悠真が叫んだ。
四人がメルキラから距離を取る。
「どうするの?」
ララが尋ねる。
「一人ずつ攻撃しても全部防がれる。だったら、こいつが対応できないくらい同時に攻める」
クランがメルキラの三つの目を見る。
「人数を使って、無理やり隙を作るということですね」
「そう。倒そうとしなくていい。とにかく動かし続けるんだ」
「分かった!」
リズが剣を握り直した。
悠真がメルキラを見る。
「行くぞ!」
最初に飛び出したのはクランだった。
身体強化で一気に加速し、メルキラの右側へ回り込む。
当然、一つの目がクランを追う。
同時にララが反対側へ走った。
杖を振り、魔法を放つ。
別の目がララへ向いた。
「烈風斬!」
正面から悠真も攻撃する。
三つ目が悠真を捉え、防御魔法が展開された。
バァン!
烈風斬が障壁へぶつかる。
クランも短剣を振るい、ララも続けて魔法を放つ。
三方向から休む暇を与えず攻撃を続けた。
メルキラの三つの目が忙しく動く。
「リズ!」
「任せて!」
メリーの身体強化を受けたリズが飛び出した。
四人目。
メルキラの右目がリズへ向く。
その瞬間、クランがさらに深く踏み込んだ。
額の目がクランを追う。
ララの魔法が飛んでくる。
左目がララへ。
メルキラの反応が、わずかに遅れた。
「今!」
リズが真正面から懐へ飛び込む。
メルキラの巨大な腕が振り下ろされた。
「リズ、危ない!」
悠真が叫ぶ。
リズは止まらなかった。
「ここまで来たんだから、もう遅い!」
紙一重で身体を捻る。
ブォン!
巨大な拳がリズの肩を掠め、そのまま石床を叩き割った。
その一撃でメルキラの体勢が前へ崩れる。
リズは踏み込み、剣を両手で握った。
「これならいける!」
渾身の力で斬りつける。
ザシュッ!
初めて剣がメルキラの身体へ深く食い込んだ。
「グオオオオオッ!」
石室を震わせる咆哮。
メルキラの巨体が大きくよろめいた。
「よし、入った!」
悠真が叫ぶ。
だが、リズも無事ではない。
メルキラが苦し紛れに腕を振るった。
「きゃっ!」
直撃こそ避けたものの、リズの身体が弾き飛ばされる。
「リズ!」
「大丈夫! それより今よ!」
床を転がったリズが叫んだ。
悠真もすぐに気づく。
これまでほとんど隙を見せなかったメルキラが、初めて大きく体勢を崩している。
「ララ、今だ!」
「分かってる!」
ララが杖を石床へ向けた。
冷気が一気に広がる。
メルキラの足元が白く染まり、分厚い氷が両脚を覆った。
「グオオッ!」
メルキラが口を開く。
炎で氷を溶かそうとしている。
「まずい、ララ!」
「分かってるけど、このままじゃ……!」
炎の熱で氷に亀裂が走る。
その時、メリーがララの隣へ駆け寄った。
「ララさん、そのまま続けてください!」
メリーが杖を掲げる。
柔らかな光がララを包んだ。
「これは……?」
「魔法を強化します!」
ララの杖から放たれる冷気が、一気に強くなった。
溶けかけていた氷が再び広がる。
足から膝へ。
膝から腰へ。
さらに胸、腕へと凍結が駆け上がっていく。
メルキラが暴れ、巨大な腕を振り回した。
「グオオオオオッ!」
「まだ……!」
ララが歯を食いしばる。
メリーも魔法を切らさない。
二人の魔法が重なり、ついに氷がメルキラの首まで達した。
最後に頭部が凍りつく。
五メートルの巨体が、巨大な氷の塊へ変わった。
「やった……?」
リズが身体を起こす。
「まだよ!」
ララが叫んだ。
氷の内部が赤く光っている。
メルキラが内側から炎を放っていた。
ピシッ。
氷に亀裂が入る。
ピシッ、ピシッ。
「悠真さん! 長くはもたないわ!」
ララの声に、悠真が剣を握り直した。
狙うのは一つ。
完全に動きを封じられたメルキラ。
今なら防御魔法も使えない。
悠真は大きく踏み込んだ。
「これで……終わりだ!」
剣を横薙ぎに振り抜く。
「烈風斬!」
ズバァァァン!
巨大な斬撃が一直線に走った。
氷へ激突する。
一瞬の静寂。
次の瞬間。
ガシャァァァン!
巨大な氷が砕け散った。
無数の氷片が石室を舞い、その中でメルキラの巨体がゆっくりと崩れ落ちる。
ドォン……。
重い音が響いた。
悠真は剣を構えたまま動かなかった。
《エリア感知》へ意識を向ける。
先ほどまで石室を圧倒していた巨大な反応は、もう感じない。
「……倒した」
「ほんと!?」
リズがその場に座り込んだ。
「もう無理……身体中痛い……」
「リズ、大丈夫ですか?」
メリーがすぐに駆け寄る。
「大丈夫だけど、さすがに疲れたぁ……」
「無茶をするからです」
メリーが杖を向けると、柔らかな光がリズを包んだ。
傷がゆっくりと癒えていく。
「悠真さんとクランさんも怪我をしています。こちらへ来てください」
「俺も?」
「何度も吹き飛ばされていたじゃないですか」
「……確かに」
「私もお願いします」
クランも素直にメリーのところへ向かう。
メリーは順番に傷を癒やしていった。
ララもその場に腰を下ろす。
「さすがに魔力を使いすぎたわ……」
傷は癒えても、消耗した体力や魔力まですぐに戻るわけではない。
しばらく休みたい。
誰もがそう思った、その時だった。
ゴゴゴゴゴ……。
石室全体が低く震え始めた。
「えっ、今度は何!?」
座っていたリズが慌てて剣へ手を伸ばす。
「待って」
ララが立ち上がり、メルキラが倒れている奥を見た。
巨大な石壁に一本の亀裂が走っている。
ゴゴゴゴゴ……。
壁が左右へゆっくりと開いていく。
その向こうから冷たい空気が流れ込んできた。
やがて振動が止まる。
そこには、先ほどまで存在しなかった新たな道が現れていた。
悠真は開いた通路の奥を見つめる。
「メルキラを倒したから……開いたのかな?」
「たぶん、そうでしょうね」
ララが答えた。
誰も完全に攻略したことがないと言われていた海底ダンジョン。
そのさらに奥へ続く道が、悠真たちの前に静かに口を開けていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
メルキラとの激戦、ついに決着です!
一人では作れなかった隙を全員で作り、リズの一撃からララとメリーの連携、そして最後は悠真の《烈風斬》。
それぞれの役割を活かした総力戦となりました。
そしてメルキラを倒したことで、これまで存在しなかった新たな道が出現。
誰も完全攻略したことのない海底ダンジョン。
その奥には、いったい何が待っているのか。
次回もよろしくお願いします!




