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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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131/162

第131話 ダンジョンボス・メルキラ

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


今回は悠真とクランのルートへ。


隠し通路の先へ進む二人を待っていたのは、これまでとは明らかに違う気配でした。


果たして、この先にいるものとは。


今回もよろしくお願いします!

魔石を使って開いた隠し通路を、悠真とクランは慎重に進んでいた。


 通路は緩やかに下っている。湿り気を帯びた石壁からは冷たい水が滴り、足元には小さな水溜まりがいくつもできていた。


 最初のうちは静かだった。


 しかし奥へ進むにつれて、魔物との遭遇が増えていった。


「また来る」


 悠真が足を止める。


 《エリア感知》に複数の反応が入っていた。


 直後、通路の奥から獣型の魔物が姿を現す。一体ではない。その後ろから次々と現れ、狭い通路を埋め尽くしていく。


「今度はずいぶん多いですね」


 クランが腰を落とし、二本の短剣を抜いた。


「ちょうどいい。新しいスキルを試せる」


 悠真も剣を構える。


 魔物の群れが一斉に駆け出した。


「烈風斬!」


 横薙ぎに振り抜いた剣から、扇状に広がる斬撃が放たれる。


 ズバァン!


 先頭を走っていた魔物たちがまとめて吹き飛び、その後ろにいた数体まで巻き込まれた。


 それでも倒しきれなかった魔物が横から飛び出す。


 クランの身体が沈んだ。


 次の瞬間には魔物の懐へ潜り込み、右手の短剣を腹部へ突き立てる。返す刃でもう一体の喉元を切り裂き、そのまま悠真の横を抜けようとした魔物の背後へ回った。


 悠真が広範囲を崩し、クランが残った敵を仕留める。


 二人だけでも、普通の魔物なら問題なく戦えていた。


 最後の一体が倒れると、クランが短剣についた汚れを振り払った。


「かなり使えるようになりましたね、そのスキル」


「集団相手ならな。でも、一体を狙うなら斬撃の方がいい」


「使い分けができるなら十分ですよ」


 クランが小さく笑う。


 二人は再び歩き始めた。


 だが、悠真の表情から次第に余裕が消えていった。


 奥へ進むほど、《エリア感知》に入る魔物の数が増えている。


 そして、そのさらに先。


 これまでとは明らかに違う反応が一つあった。


 悠真が足を止めた。


「……なんだ、これ」


「どうしました?」


「奥に一体いる」


「一体ならいいじゃないですか?」


「いや、そういう感じじゃない」


 悠真は意識を集中させる。


 大きい。


 単純に身体が大きいというだけではない。存在そのものが強烈で、周囲にいた魔物の反応が霞んで感じられるほどだった。


「かなり強いかもしれない」


 クランから笑みが消えた。


「じゃあ、引き返しますか?」


 悠真は後ろを見る。


 ここまで進んできた長い通路が、暗闇の向こうへ続いている。


「とりあえず、様子だけ見よう」


「そう言って、本当に様子を見るだけで済めばいいんですけどね」


「俺も言ってからそう思った」


 二人は足音を殺しながら進んだ。


 やがて通路が途切れ、目の前に巨大な空間が現れた。


 高い天井。円形に近い広大な石室。


 その中央に、何かが立っていた。


 悠真は思わず足を止めた。


「……でかい」


 五メートルはある。


 太い二本の脚で立つ巨体。その身体は硬そうな皮膚に覆われ、長い腕の先には巨大な爪が伸びている。


 そして何より異様なのは顔だった。


 目が三つある。


 左右の目の間、その額にも大きな目が開いていた。


 三つの瞳が、それぞれ別の意思を持っているかのように動く。


 隣で、クランが小さく息を呑んだ。


「……まさか」


「知ってるのか?」


「以前、魔物についてまとめられた古い資料で見たことがあります」


 クランは巨体から目を離さない。


「三つの目を持つ巨体。そして炎を操る魔物……おそらく、メルキラです」


「メルキラ?」


「かなり古い記録にしか残っていない魔物です。今も存在していたなんて……」


 普段は落ち着いているクランの表情が、明らかに強張っていた。


 悠真は改めて目の前の巨体を見上げる。


「そんな奴が、なんで海底ダンジョンにいるんだよ」


「分かりません。私も、まさかこんなところで遭遇するとは思いませんでした」


 その時、メルキラの三つの目が一斉に二人を捉えた。


「悠真さん、来ます!」


 クランが短剣を構えた瞬間、メルキラが動いた。


「速っ!」


 五メートルもの巨体が、一瞬で距離を詰める。


 巨大な腕が横薙ぎに振るわれた。


「風圧バリア!」


 悠真の周囲に風の壁が生まれる。


 ドゴォン!


 凄まじい衝撃が風圧バリアを揺らし、悠真の身体ごと後方へ吹き飛ばした。


「ぐっ!」


 背中から床へ落ち、何度も転がる。


 バリアで威力を弱めていなければ、まともに受けただけで終わっていたかもしれない。


「悠真さん!」


「大丈夫!」


 クランが床を蹴った。


 身体強化された脚力で一気にメルキラの側面へ回り込み、そのまま背後へ抜ける。


 短剣を振り上げた瞬間だった。


 額の目が、ギョロリと動いた。


「……!」


 明らかにクランを見ている。


 メルキラが振り向くより先に、巨大な腕が背後へ振るわれた。


 クランは攻撃を中断した。


「バリア!」


 カードが光り、透明な障壁が身体を包む。


 直後、拳が激突した。


 ドォン!


「くっ!」


 障壁は攻撃を防いだものの、クランの身体はそのまま床を滑っていく。


 バリアを張っている間は攻撃できない。


 クランは距離を取るしかなかった。


「烈風斬!」


 立ち上がった悠真が剣を振るう。


 広がった斬撃がメルキラへ迫る。


 ところが、メルキラが片腕を上げた。


 目の前に半透明の壁が現れる。


 バァン!


 烈風斬が魔法障壁へ激突し、砕けるように消えた。


「防御魔法まで使うのかよ!」


 メルキラの三つの目が悠真へ向く。


 大きく口が開いた。


 喉の奥が赤く光る。


「まずい!」


 ゴォォォォッ!


 猛烈な炎が吐き出された。


 悠真は咄嗟に風圧バリアを展開する。


 炎と風がぶつかり、熱風が左右へ吹き荒れた。


「熱っ……!」


 完全には防ぎきれない。


 顔を庇いながら後退した悠真の視界に、メルキラの腕が映った。


 その手の周囲に炎が集まっている。


「まだあるのか!?」


 巨大な火球が放たれた。


 悠真は横へ飛ぶ。


 ドォォン!


 背後で爆発が起こり、石床の破片が飛び散った。


 口から吐く炎だけではない。


 強力な火炎魔法まで使う。


 しかも、その間にもメルキラは止まらない。


 クランが隙を狙って接近すれば、三つの目のどれかが動きを捉え、すぐに攻撃が飛んでくる。悠真が《斬撃》を放てば、瞬時に魔法障壁が展開された。


 速い。


 強い。


 それだけなら、まだ戦い方は考えられる。


 だが、メルキラには攻撃の後に生まれるはずの隙がほとんどなかった。


 悠真が剣を握り直す。


「こいつ……どうやって倒すんだよ」


 クランもバリアを解除し、悠真の近くまで下がってきた。


「少なくとも、私たち二人では厳しそうですね」


「俺もそう思う」


 倒すどころではない。


 今は二人とも、攻撃を凌いで生き残るだけで精いっぱいだった。


 言葉を交わしている間にも、メルキラの口元に炎が集まり始める。


 一方その頃。


 ララ、リズ、メリーの三人は、沈没船を離れて海底を進んでいた。


 ララが空間魔法で宝石を収納したことで荷物の心配はなくなったものの、このままウィストンへ戻るつもりはなかった。


 悠真たちがまだダンジョンにいる。


 まずは戻る道を探さなければならない。


「本当に入口なんてあるの?」


 リズが海底の岩場を見回す。


「海賊が使っていた場所なら、海側から出入りする道があってもおかしくないわ」


 ララが岩壁を注意深く観察していく。


 やがてメリーが一ヶ所を指差した。


「あそこ、少し形が違いませんか?」


 三人が近づく。


 海藻に覆われて分かりにくいが、岩の一部が人工的に削られていた。


「これ……通路よ」


 ララが海藻を払い除ける。


 その奥に、人が通れるほどの穴が開いていた。


「見つけた!」


 リズが真っ先に中へ入ろうとする。


「待ちなさい。罠かもしれないでしょ」


「でも、ここしかないよ」


 ララは少し迷った末、頷いた。


 三人は水中の通路へ入った。


 狭い岩の間を進んでいくと、少しずつ水位が下がっていく。やがて完全に水のない石造りの通路へ出た。


 リズが濡れた髪をかき上げる。


「戻れた!」


「まだダンジョンのどこか分からないわよ」


 ララは杖を握ったまま周囲を見る。


 妙だった。


 海から直接入れる通路にしては、内部がしっかりと造られすぎている。


 その時だった。


 ドォォン!


 通路の奥から大きな音が響いた。


 三人の表情が変わる。


「今の……」


「誰か戦ってる!」


 リズが走り出した。


「ちょっと、リズ!」


 ララとメリーも後を追う。


 奥へ進むほど、衝撃音が大きくなっていく。


 そして通路を抜けた瞬間、三人の目の前に巨大な空間が広がった。


「え……?」


 リズが足を止める。


 中央には、五メートル近い巨大な魔物。


 その前で悠真が剣を構えていた。


「悠真!?」


 声に反応して、悠真が振り返る。


「リズ!? ララとメリーも!」


「なんで悠真がここにいるの!?」


「それはこっちが聞きたい!」


 だが、話している暇はなかった。


 メルキラが床を蹴った。


 巨体からは想像できない速度で悠真へ迫る。


「悠真!」


 リズが駆け出した。


 メルキラの巨大な腕が振り下ろされる。


 リズが滑り込むように間へ入り、剣を構えた。


 ガキィン!


「くっ……!」


 あまりの重さに膝が沈む。


「リズ!」


 メリーが杖を向ける。


 身体強化魔法の光がリズを包み、押し潰されかけていた身体が踏みとどまった。


 さらにララが杖を振る。


 放たれた魔法を嫌ったメルキラが後方へ跳んだ。


 悠真は驚きながら三人を見る。


「助かった。でも、どうやってここに?」


「外から戻れる道を見つけたのよ!」


 ララもメルキラから視線を外さない。


「まさか、こんなところにつながってるとは思わなかったけど」


 リズが剣を構え直す。


「これ、もしかしてボス?」


「たぶんな」


「私たち、とんでもない道から入ってきたんじゃ……」


 メリーが呟くと、ララが苦い顔をした。


「帰り道どころか、ボスのところへ直行する道だったみたいね」


 悠真、クラン、ララ、リズ、メリー。


 五人がメルキラへ向き直る。


 メルキラの三つの目が、一人ずつ確かめるように動いた。


 次の瞬間、その全身から先ほどまでとは比べものにならないほどの魔力が溢れ出す。


 口元には炎。


 両腕の周囲にも巨大な火球が生まれていく。


「……まだ本気じゃなかったのかよ」


 悠真が剣を握り直した。


 五人の前で、メルキラが大きく口を開いた。

最後まで読んでいただきありがとうございます!


ついに現れたダンジョンボス、メルキラ。


巨体なのに速く、三つの目で動きを捉え、さらに炎と防御魔法まで使う厄介な相手です。


悠真とクランだけでは防ぐだけで精いっぱいでしたが、そこへまさかのララ、リズ、メリーが合流!


ダンジョンへ戻る道を探していたはずが、見つけたのはまさかのボス直行ルートでした。


五人になった悠真たちは、メルキラを倒すことができるのか。


次回もよろしくお願いします!

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