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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第122話 伝説の白き竜

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


雪山の奥で悠真のエリア感知が捉えた、これまでとは明らかに違う強大な反応。


その正体を確かめるため、悠真たちはドゴルドの案内で山脈を見渡せる場所へ向かいます。


そこで彼らが目にしたものとは。


今回もよろしくお願いします!

スノーワイバーンとの戦いを終えたあとも、悠真は雪山の奥から意識を離せずにいた。


 エリア感知に引っかかった反応は、あまりにも大きい。


 距離があるせいで輪郭までは掴めない。それでも、そこにいる何かがスノーワイバーンとは比較にならない存在だということだけは、嫌でも分かった。


「まだ反応するのか?」


 レオンが隣へ来る。


「する。かなり遠いけど、ずっと同じ場所にいる」


 悠真が山脈の奥を指差すと、ドゴルドもそちらへ目を細めた。


 吹雪の向こう。


 白く霞んだ山々しか見えない。


「このまま近づくのはまずいな」


 ドゴルドはすぐに判断した。


「心当たりがあるの?」


 リズが聞く。


「いや。だからこそだ」


 ドゴルドは大剣を背負い直す。


「昨日は七匹。今日は十五匹以上のスノーワイバーンが山から降りてきた。しかも、その奥にそんな反応があるんだろ?」


「偶然とは思いにくいですね」


 ララも杖を握ったまま山を見る。


 ラパンは少し考え込んだあと、ドゴルドへ顔を向けた。


「遠くから見られる場所、なかったか?」


「ある」


 答えは早かった。


「北西の尾根だ。山奥まである程度見渡せる。ここからならそれほど遠くない」


「じゃあ、そこへ行こう」


 悠真が言うと、メリーが少し不安そうに眉を寄せた。


「近づきすぎないようにしましょう。正体が分からないんだから」


「そのつもりだ」


 ドゴルドを先頭に、一行は雪原を進み始めた。


 商隊と救助した冒険者たちは、ギルドから来た別の者たちに任せてある。


 雪はさらに強くなっていた。


 足元は深く、踏み込むたびに靴が沈む。少しでも気を抜けば体力を奪われる。


 クランは相変わらず文句一つ言わず歩いていたが、時折前方の悠真たちへ視線を向けている。


 雪山の奥にいる強大な存在。


 もしそれが石版の探索に影響するようなものなら、デアボロスへ報告する価値は十分にある。


 ただ、今はまだ正体すら分からない。


 クランは余計な動きをせず、歩き続けた。


 しばらくして、森が途切れた。


 その先には雪に覆われた岩場があり、さらに奥には山脈が大きく開けて見える。


「ここだ」


 ドゴルドが足を止めた。


 悠真はすぐにエリア感知を使う。


 反応はまだある。


「……いる」


「どの辺?」


 リズが悠真の示す方向へ目を凝らす。


「もっと奥。あの白い山の手前あたり」


 しかし肉眼では何も見えない。


 ラパンが杖を持ち上げた。


「風が少し収まるまで待つか」


 数分ほど待っていると、吹雪が一瞬だけ弱まった。


 その時だった。


「……あれ」


 メリーの声が止まる。


 山肌の一部に、不自然な白い塊があった。


 最初は巨大な雪の丘にも見えた。


 だが。


 その塊がゆっくりと動いた。


 ズズッ、と雪が崩れ落ちる。


「……嘘だろ」


 ドゴルドの声が低くなる。


 白い影が首を持ち上げた。


 長い胴体。


 太い四肢。


 そして、山肌を覆うほど巨大な翼。


 翼が開かれた瞬間、積もっていた雪が一斉に舞い上がった。


 ゴオオッ!


 離れているにもかかわらず、風圧がこちらまで届いた。


 リズが思わず一歩後ろへ下がる。


「何……あれ」


 ラパンの顔から、先ほどまでの好奇心が消えていた。


「ドラゴン……」


 その言葉に悠真が振り返る。


「ドラゴン?」


「たぶんな」


 ラパンの声は固い。


「俺だって本物を見るのは初めてだ」


 メリーも目を離せずにいる。


「本当にいるのね……」


「そんなに珍しいの?」


 悠真が聞くと、ドゴルドは呆れたように悠真を見る。


「珍しいなんてもんじゃない」


「俺たちだって、伝承や古い本でしか知らない」


 ラパンが続ける。


「ドラゴンを見たって話自体、ほとんど残ってない。人間が戦った記録なんて、俺は聞いたこともない」


 レオンは遠くの巨体から目を逸らさなかった。


「なら、手を出さない方がいいな」


「当然だ」


 ドゴルドは即答した。


「俺はあんなものと戦うつもりはない。できることなら、そっとしておきたいくらいだ」


「でも、このままだと……」


 ララがノルディアの方角を見る。


 昨日は七匹。


 今日は十五匹以上。


 もし山奥の魔物たちが何かに追われているのなら、次に来るのがスノーワイバーンだけとは限らない。


「こいつが原因なら、街の方に魔物が流れ続けるってことか」


 悠真が呟く。


「可能性は高い」


 ドゴルドは苦い顔をした。


「倒す必要はない。どこか別の場所へ移ってくれれば、それでいいんだがな」


「そんな方法あるのかな」


 リズが腕を組む。


 誰も答えられない。


 そもそもドラゴンについての情報が少なすぎる。


 悠真はしばらく白い巨体を見つめていたが、ふと思い出した。


「……じいちゃんなら知ってるかも」


「ゼラモードさんですか?」


 ララがすぐに反応する。


「うん。あの人ならドラゴンのことも知ってそうだし」


 悠真は収納鞄から双界カードを取り出した。


 カードへ意識を向ける。


 しばらくすると、表面にゼラモードの顔が映った。


『どうした悠真』


「じいちゃん、ちょっと見てほしいものがあるんだけど」


『何じゃ?』


「かなり遠いから拡大するよ」


 悠真は双界カードをスノードラゴンのいる方向へ向けた。


 映し出された雪山の景色を指で操作し、遠景を少しずつ拡大していく。


 白い山肌。


 舞い上がる雪。


 そして、その奥でゆっくりと体を動かす巨大な影。


 カードの向こう側で、ゼラモードが黙った。


「じいちゃん?」


『……もう少し寄せてみい』


 悠真はさらに拡大する。


 巨大な頭部。


 白い鱗。


 折り畳まれた翼まで、はっきりと映った。


『ドラゴンじゃと……』


 ゼラモードの声が低くなる。


「やっぱりドラゴンなんだ?」


『間違いない。じゃが、妙じゃな』


「何が?」


『ドラゴンは本来、人間が目にするような場所まで出てくる魔物ではない。もっと人の寄りつかぬ土地にいるはずじゃ』


 ドゴルドたちもカード越しの会話を静かに聞いている。


 悠真はこれまでの状況を簡単に説明した。


 スノーワイバーンが大量に山から降りてきていること。


 街道で商隊や冒険者が襲われたこと。


 このままではノルディアにも被害が出るかもしれないこと。


「なんとか別の場所へ移動させられない?」


『うむ……』


 ゼラモードは難しい顔をした。


『無理に刺激するのは勧めんぞ。下手に怒らせれば、そちらへ向かってくる可能性もある』


「やっぱり危ないか」


『危ないどころではないわ』


 ゼラモードは即座に返した。


 悠真は少し考えてから尋ねる。


「もし、こっちへ来たらどうする?」


『逃げるしかないのう』


「じいちゃんでも倒せない?」


『今のわしでは無理じゃ』


「……じいちゃんでも?」


 思わず聞き返した。


 これまで、ゼラモードなら何とかできそうだと思っていた部分が悠真にはあった。


 だが、返ってきた言葉に迷いはない。


『神だった頃なら話は別じゃ。今のわしは人間じゃぞ。まともに戦えば到底敵わん』


 その一言で、周囲の空気がさらに重くなった。


 ラパンが遠くのドラゴンを見る。


「そこまでなのか……」


『ただし』


 ゼラモードが続けた。


『どうしても戦わねばならん状況になった時、一つだけ可能性はある』


「あるの?」


『わしが昔作った剣じゃ』


「剣?」


『聖剣マクベス』


 ドゴルドの眉がわずかに動いた。


『あれならドラゴンにも傷を負わせられる。人間が使っても、まともに攻撃を通せるはずじゃ』


「それなら倒せる?」


『勘違いするでない』


 ゼラモードの声が少し強くなる。


『剣があれば勝てるわけではない。ドラゴンの力が弱くなるわけでもないからの。ただ、人間にも倒せる可能性が生まれる。それだけじゃ』


「できれば使わない方がいいってことか」


『その通りじゃ』


 悠真は頷いたあと、当然の疑問を口にした。


「その聖剣、今どこにあるの?」


『…………』


 妙な沈黙が続く。


「じいちゃん?」


『どこへやったかのう』


「知らないのかよ!」


 思わず声が大きくなる。


『何百年も前のことじゃぞ。作ったのは覚えとる。じゃが、その後誰に渡したかまでは……』


「一番大事なところじゃん」


 悠真が肩を落とした、その時だった。


「ちょっと待て」


 ドゴルドが口を挟んだ。


「今、聖剣マクベスって言ったか?」


 悠真が顔を上げる。


「知ってるの?」


「詳しくは知らん。ただ……名前には覚えがある」


 ドゴルドは記憶を探るように目を細めた。


「確か、隣街のウィストンだ」


「ウィストン?」


「武器屋にあった気がする。アルファ地区でも珍しい武器を扱う店でな。俺も昔、一度だけ入ったことがある」


「本当にマクベスだった?」


「たぶんな」


 ドゴルドは顎を撫でる。


「とんでもなく高い剣が飾ってあったんだ。値段を見て、誰が買うんだと思ったくらいでな。名前くらいしか覚えてない」


 悠真はレオンたちと顔を見合わせた。


 聖剣が本当にそこにあるかは分からない。


 それでも、今ある唯一の手掛かりだった。


「行ってみよう」


 悠真はもう一度、遠くにいる白いドラゴンを見た。


 できれば戦いたくない。


 あの存在を刺激することなく、別の場所へ移動させられるなら、それが一番いい。


 だが、もし。


 どうしても戦わなければならない時が来るのなら。


「まずはウィストンだ」


 雪山の向こうにいる巨大な影を残し、悠真たちは新たな手掛かりへ向かうことを決めた。

第122話を読んでいただき、ありがとうございました!


雪山の奥にいたのは、伝承や古い書物でしか知られていないドラゴンでした。


できることなら戦わず、どこかへ移動してもらいたいところですが、このままでは山奥から追い出された魔物たちがノルディアへ流れてくる可能性があります。


そしてゼラモードから語られた「聖剣マクベス」。


人間でもドラゴンに対抗できる可能性を持つ剣が、どうやら隣街ウィストンにあるようです。


果たして本当に聖剣は残っているのでしょうか。


次回もよろしくお願いします!

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