第12話 足りないものと、新しい手
第12話です。
今回は、戦闘・現代・新しい稼ぎ方と、
物語が少し広がる回になります。
悠真が自分の力の限界を知り、
次にどう動くかを考え始めます。
朝。
悠真は、部屋のリビングで軽く伸びをした。
まだ完全に慣れたわけじゃないが、この場所が自分の拠点だという感覚は少しずつ出てきている。
「……行くか」
「砂金?」
リズがソファに座ったまま聞く。
「その前に、ちょっと試したい」
悠真は腰に下げた短剣に触れる。
昨日買ったばかりの武器と防具。
それに、身体強化のスキルカード。
「戦えるか、見とかないと」
リズは少しだけ考えてから頷いた。
「いいよ。でも無理しないで」
「やばかったら頼む」
「もちろん」
二人は街の外へ出る。
前に砂金を取った川へ向かう途中だった。
草むらが揺れる。
「……来たな」
悠真が小さく言う。
出てきたのは、以前と同じタイプの魔物。
四足で、動きが速い。
一体。
距離は近い。
「……やる」
悠真は前に出る。
心臓の音がうるさい。
怖い。
でも、逃げるわけにはいかない。
「身体強化」
カードを使う。
体が軽くなる。
力が入る。
いつもより、明らかに動ける感覚。
「……いける」
そう思った。
次の瞬間、魔物が突っ込んでくる。
速い。
予想より速い。
「っ!」
ギリギリで避ける。
土が跳ねる。
すぐに体勢を立て直して、短剣を構える。
振る。
だが、浅い。
「硬っ……!」
手応えが軽い。
魔物の皮膚は思った以上に硬い。
反撃。
横から来る。
防ぐので精一杯。
「くそ……!」
身体は動く。
でも、追いつかない。
判断も、技術も、全部足りない。
ただ、防ぐだけ。
攻められない。
「……全然、足りない」
思わず口に出る。
次の一撃が来る。
避けきれない。
その瞬間。
風が走る。
リズの剣が横から入り、魔物を一刀で仕留めた。
静かになる。
悠真はその場で息を吐いた。
「……助かった」
「無理しすぎ」
リズが言う。
「でも、悪くなかったよ」
「いや……」
悠真は苦笑する。
「全然だ」
身体強化を使っても、これだ。
「戦えないわけじゃない。でも、勝てない」
その差は大きい。
リズは少しだけ考えてから言った。
「経験と慣れだね」
「……あと金か」
悠真は小さく呟く。
強くなるには、もっと装備も必要だ。
スキルも。
つまり、金。
結局そこに戻る。
「……やっぱ稼がないとだな」
気持ちを切り替える。
そのまま川へ向かう。
砂金採取。
前と同じ作業。
だが、今回は時間をかけられない。
効率よく集める。
結果は――
「……少ないな」
前より明らかに少ない。
「場所の問題?」
リズが聞く。
「たぶんな」
それでも、ゼロではない。
「まあ、今回はこれでいいか」
袋にまとめる。
「戻るか」
二人は廃墟へ戻る。
リズが飛行カードを使い、先に悠真を抱えて上へ。
天井裏に出る。
そのままリズはおじさんの店へ向かうことにした。
「じゃあ後で」
「うん」
別れる。
悠真は家へ戻る。
ドアを開ける。
「ただいま」
母がキッチンから顔を出す。
「あら、久しぶりね」
少しだけ驚いた顔。
「最近どうしてたの?」
「ちょっと、いろいろ」
曖昧に答える。
テーブルには夕飯が並んでいた。
「食べるでしょ?」
「うん」
席に座る。
「いただきます」
久しぶりの家のご飯。
味が、安心する。
「ちゃんと食べてる?」
母が何気なく聞く。
「……まあ」
異世界の食事を思い出す。
比べると、全然違う。
「たまには顔出しなさいよ」
「うん」
短い会話。
でも、少しだけ気持ちが落ち着く。
こういう時間も大事だなと思った。
翌日。
おじさんの店へ向かう。
リズはすでにいた。
「おはよう」
「おう」
誠が軽く手を上げる。
悠真は袋を出す。
「これ、換金お願いできる?」
誠が中を見る。
「……少ないな」
「今回はあんまり時間なかった」
「まあいい」
誠は頷く。
「ついでに相談があるんだけど」
悠真が言う。
「店舗持ちたい」
誠が少しだけ眉を上げる。
「ほう」
「露店だと場所いじられるし、評判も操作される」
「……なるほどな」
誠は少し考える。
「次の休みまで、向こうは無理だな」
「やっぱりか」
「店もあるしな」
現実的な問題だった。
「じゃあ、その間どうするかだな」
悠真は頷く。
「別の稼ぎ方、考える」
誠が言う。
「いい考えだ」
そのあと、換金された金額を聞く。
「……二万くらいだな」
「そんなもんか」
前よりかなり少ない。
でも、ゼロじゃない。
「これ使って、ちょっと試す」
悠真は言う。
向かったのは、近くの百円ショップだった。
店内に入ると、リズが目を輝かせる。
「なにこれ」
「便利なものがいっぱいある場所」
「全部安いの?」
「基本はな」
リズは棚を見て回る。
お菓子のコーナーで止まる。
「これ、甘い?」
「かなり」
「買う」
即決だった。
他にも。
調味料。
袋。
小物。
いろいろ手に取る。
「これ、向こうで売れそう」
「どれだ?」
「これ」
リズが見せたのは、だしの素だった。
「これ入れるだけで味変わる」
「……確かに」
他にも、塩や調味料を選ぶ。
「これ、絶対売れる」
リズが言う。
「異世界の料理、味薄いから」
悠真は頷く。
「……まだやり方はあるな」
カゴの中を見る。
金だけじゃない。
この世界のものも、武器になる。
悠真は小さく笑った。
「……いけるかもしれないな」
新しい可能性が、少し見えた気がした。
第12話を読んでいただきありがとうございます。
今回は、
・戦闘での実力不足の実感
・砂金での資金の現実
・現代での休息と日常
・新たな稼ぎ方の発見
を描いています。
特に「100均のアイテム」は、
この物語の大きな鍵になっていきます。
異世界で通用するものは何か。
どこに価値があるのか。
悠真は少しずつ、その答えに近づいています。
次回は、
いよいよ“異世界での新商品販売”へ。
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引き続きよろしくお願いします。




