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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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114/161

第114話 デアボロス

いつも『異世界は金で強くなる』を読んでいただきありがとうございます!


今回は少し視点を変え、石版を狙う謎の人物たちの側を描きます。

これまで見えなかった敵の一端が明らかになりますので、ぜひ最後までお楽しみください!

夜の王都。


 昼間の賑わいが嘘のように静まり返った裏路地を、数人の黒装束が音もなく駆け抜けていた。


 屋根から屋根へ。


 壁を蹴り、影から影へと姿を移す。


 やがて彼らが足を止めたのは、大通りに面した一軒の立派な建物だった。


 昼間であれば、多くの冒険者や貴族で賑わう王都最大級のスキルカード専門店。


 店の看板には、大きく店名が刻まれている。


 しかし彼らが入ったのは正面ではない。


 裏口だった。


 店内はすでに営業を終え、人気はない。


 男たちは迷うことなく奥へ進み、一枚の重厚な扉の前で足を止めた。


 コンコン。


 規則正しく三度叩く。


「入れ」


 落ち着いた声が返ってきた。


 扉が静かに開く。


 部屋の中には豪華な調度品が並び、大きな机の向こうに一人の男が座っていた。


 年齢は四十代ほどに見える。


 黒髪を後ろへ流し、整えられた髭。


 高級そうな黒い服を身にまとい、どこから見ても成功した商人だった。


「お帰りなさいませ」


 隣に立つ秘書らしき女性が頭を下げる。


 男は一冊の本を閉じると、静かに視線を向けた。


「報告を聞こう」


 黒装束の男が片膝をつく。


「石版を一枚、回収しました」


 そう言って布に包まれた石版を差し出す。


 男はそれを受け取り、ゆっくりと布を外した。


 奈良の大仏。


 独特の文字が裏面いっぱいに刻まれている。


 男は静かに目を閉じた。


「神眼」


 次の瞬間。


 瞳が淡い金色へと変わる。


 石版から淡い光が立ち上り、男の瞳へ吸い込まれていく。


「……なるほど」


 静かな声だった。


「間違いなく本物だ」


 部屋の空気が少しだけ変わる。


「ゼラモードの神気を感じる」


 部下たちが顔を見合わせる。


「では、本当に……」


「ああ」


 男は頷く。


「六十年前に残されたと言われる石版に間違いない」


 裏面へ視線を落とす。


 文字を見つめる。


 しばらく沈黙が流れた。


 やがて小さく笑う。


「これは読めんか」


 肩をすくめる。


「相変わらずだな、ゼラモード」


 その言葉には懐かしさと苛立ちが入り混じっていた。


「昔から、お前はこういう男だった」


「誰にも理解できないものを平然と作る」


 男は石版を机へ置いた。


「神眼でも読めない」


「だが、まあそれでいい」


「価値があることだけは分かる」


 一人の部下が口を開く。


「宝については……」


「何も分からん」


 男はあっさり答えた。


「だが石版を集めれば宝へ辿り着く」


「そこまでは分かっている」


「だが、その宝が何なのかまでは知らんがな」


「ならば集めるしかない」


 それだけだった。


 部下たちは何も言わない。


 男の判断を疑う者はいない。


「襲撃した者たちはどうでしたか」


 秘書の女性が尋ねる。


「石版を持っていたのは若い男でした」


「三人の仲間と行動していました」


 男は目を閉じる。


「神眼」


 黒装束の男の頭の中に、悠真たちの姿が浮かび上がる。


 一人ずつ見ていく。


「剣士」


「魔法使い」


「女剣士」


 そして。


「……ほう」


 男の口元が少しだけ緩んだ。


「どうされました?」


「一人だけ面白い男がいる」


 悠真だった。


「強さはまだ未熟」


「だが……」


 男は少し考え込む。


「何かがおかしい」


「神眼でも測り切れん」


 秘書の女性が驚いた表情を浮かべる。


「神眼でも?」


「初めてだ」


 男は静かに笑った。


「実に面白い」


 立ち上がり、窓際へ歩く。


 王都の夜景が広がっていた。


 灯りが街を照らし、人々は何も知らず眠りについている。


「追跡は?」


 部下が尋ねた。


 男は首を横へ振る。


「必要ない」


「連中は石版を集めている」


「ならば必ず残りも探しに動く」


 一拍置く。


「こちらから探すより、泳がせた方が早い」


「では監視を続けます」


「ああ」


 男は静かに頷いた。


「絶対に見失うな」


「石版を持つ者は、必ず最後まで導いてくれる」


 部屋の奥の壁には、大きな世界地図が掛けられていた。


 そこにはいくつもの印が書き込まれている。


 男は奈良の大仏の石版へもう一度視線を落とした。


「ゼラモード」


 静かな声が部屋へ響く。


「二百五十年経った今も、お前は私を楽しませてくれる」


 その瞳には、嫉妬とも執着ともつかない複雑な感情が宿っていた。


その姿を見つめながら、部下たちは深く頭を下げる。


「デアボロス様。」

第114話を読んでいただき、ありがとうございました!


今回は新たな敵「デアボロス」がついに登場しました。

まだ多くの謎を残していますが、これから悠真たちとどのように関わっていくのか、少しずつ明らかになっていきます。


次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!

ブックマークや評価、感想も励みになりますので、よろしくお願いします。

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