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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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111/161

第111話 カミシロフーズ誕生

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は石版探しの前に、悠真たちの拠点を少し掘り下げる回になっています。


今まで名前のなかった会社も、ついに正式な名前が決まりました。


それでは第111話をお楽しみください。

神々の国の朝は静かだった。


 空には雲一つなく、どこまでも澄み切った青空が広がっている。眼下には白い雲海がゆっくりと流れ、その上へ築かれた神々の都は、朝日を浴びて柔らかな光に包まれていた。


 昨夜の宴の賑わいが嘘のように、神殿の回廊には穏やかな空気が流れている。


 悠真は大きく息を吸い込んだ。


「今日で帰るんだな。」


 その時、奥の扉がゆっくりと開いた。


 モーガントを先頭に、十二神が姿を現す。


「もう出発するのか。」


 モーガントが穏やかな表情で尋ねる。


「はい。皆さんには本当にお世話になりました。」


 悠真が頭を下げると、神々もそれぞれ微笑んだ。


「次はゆっくり話そう。」


 ペレナートが笑顔で言う。


「今度は私の国にも来てください。」


 エレーナが優しく微笑む。


 豪快な笑い声を上げたのはオオザトだった。


「次は酒でも飲みながら勝負しようではないか!」


「まずは石版を集めてからですね。」


 悠真が苦笑すると、周囲から笑いが起こる。


 ラリーは腕を組みながら静かに口を開いた。


「焦る必要はない。一枚ずつ確実に集めることだ。」


 マリリンも小さく頷く。


「油断だけはしないで。」


 短い言葉だったが、その瞳には仲間を案じる優しさがあった。


 悠真は十二神を見渡した。


 最初に神々の国へ来た時は緊張しかなかった。


 だが今は違う。


 頼れる仲間として笑い合える存在になっていた。


「ありがとうございました。」


 改めて深く頭を下げる。


 神々も静かに頷いた。


 ゼラモードが懐から双界カードを取り出す。


「それでは戻るとしよう。」


 カードを手にしたゼラモードがスキルを発動すると、カードが淡く輝き始めた。


 すぐにカードの上へガイオの姿が映し出される。


『ゼラモードさん。』


「ガイオ、今から戻る。」


『承知しました。受け入れます。』


 短い確認を終える。


 双方が転移を承認した瞬間、双界カードが強く光を放った。


 次の瞬間、悠真たちの景色が白く染まる。


 光が収まると、そこは見慣れたガイオの屋敷だった。


「お帰りなさい。」


 待っていたガイオが笑顔で迎える。


「無事で何よりです。」


「ただいま。」


 悠真も笑顔を返した。


 応接室へ移動すると、全員が席へ着く。


 ガイオがお茶を用意し、一息ついたところでレオンが切り出した。


「それで、神々の国では何が分かった?」


 悠真は順番に説明を始めた。


 十二神それぞれが石版を管理していたこと。


 すでに回収された石版。


 まだ所在が判明しているもの、していないもの。


 神々から聞いた情報を一つ残らず共有していく。


 全てを聞き終えたガイオは静かに頷いた。


「つまり、残る石版は五枚ということですね。」


「そうですね。」


 悠真も頷く。


「まだ半分近く残ってる。」


 リズは地図を見つめながら言った。


「でも、少しずつ目的地が見えてきましたね。」


 ララも笑顔を見せる。


「一枚ずつ集めていけば、きっと全部そろいます。」


 ゼラモードは静かに湯飲みを置いた。


「焦る必要はない。」


「大事なのは確実に集めることじゃ。」


 その落ち着いた言葉に、一同の表情も自然と引き締まる。


 しばらく石版について話し合ったあと、悠真はふとゼラモードへ顔を向けた。


「そうだ、おじいちゃん。」


「ん?」


「静岡で約束したこと、覚えてる?」


 ゼラモードは少しだけ目を細める。


「もちろんじゃ。」


「ヴァレルターニアへ戻ったら、お主が育てた畑や工場を見せてくれるという約束じゃな。」


 悠真は嬉しそうに笑った。


「うん。」


「ぜひ見てもらいたいんだ。」


「楽しみにしておった。」


 ゼラモードも柔らかく笑う。


「お主がどんな事業を築いたのか、この目で確かめさせてもらおう。」


 レオンは二人の会話を聞き、懐から転移カードを取り出した。


「それじゃ行こうか。」


「グラード・マーケットまで送る。」


 悠真たちは立ち上がる。


 レオンの転移カードが光を放ち、一行の姿はゆっくりと光へ包まれていった。


 次の瞬間。


 賑やかな人々の声が耳へ飛び込んでくる。


 荷車が行き交い、商人たちの呼び込みが街中へ響いていた。


 活気あふれるグラード・マーケット。


 ゼラモードはゆっくりと周囲を見回す。


 街を歩く人々の笑顔。


 忙しく働く商人。


 整えられた道路。


 絶え間なく流れる物流。


ゼラモードは街の様子をゆっくりと見渡し、小さく頷いた。


「活気のある良い街じゃ。」


悠真は嬉しそうに笑う。


「まずは、俺たちの店へ案内するよ。」


「ユウジと師匠が切り盛りしてる和食の店なんだ。」


「ほう。」


「それは楽しみじゃな。」


「そのあとに畑と工場も見てもらうよ。」


「静岡で約束したからね。」


ゼラモードは優しく頷いた


「もちろん覚えておる。」


「お主たちが築き上げたもの、この目でしっかり見届けさせてもらおう。」


一行は賑わう通りを歩き始めた。


まず向かうのは、ユウジと師匠が営む和食店だった。


賑わう通りを歩きながら、一行は一軒の店の前で足を止めた。


 木の温もりを感じる落ち着いた店構え。昼時ということもあり、多くの客で賑わっていた。


「ここだよ。」


 悠真が扉を開ける。


「いらっしゃ……おっ、悠真!」


 厨房から顔を出したユウジが笑顔を見せた。


「帰ってきたんだな!」


 その声に反応し、奥で料理を作っていた師匠も顔を上げる。


「おう、帰ったか。」


「ただいま。」


 悠真が笑顔で返す。


 ユウジはゼラモードへ目を向けた。


「もしかしてこの人がおじいちゃん?」


「そう。」


 悠真が頷く。


「ゼラモードだ。」


 ゼラモードは穏やかに頭を下げた。


「初めまして。」


「悠真がお世話になっております。」


 師匠は笑って手を振る。


「世話になってるのはこっちだ。」


「まあ、座ってくれ。」


 ほどなくして料理が運ばれてきた。


 炊き立ての白いご飯に、香ばしく焼き上げた焼き魚。湯気とともに出汁の香りが立ちのぼる味噌汁。じっくり味の染みた肉じゃがに、小鉢と漬物が彩りを添える。


 ゼラモードは一品ずつ丁寧に箸を進めた。


 やがて静かに頷く。


「美味い。」


 その一言に、ユウジと師匠が顔を見合わせて笑う。


「素材の持ち味をよく生かしておる。」


「毎日でも食べたくなる味じゃ。」


「長く愛される店になるじゃろう。」


 師匠は照れくさそうに頭をかいた。


「そう言ってもらえると嬉しいな。」


 ゼラモードは店内を見回しながら悠真へ視線を向けた。


「ところで悠真。」


「この店や工場の名前は何というんじゃ?」


 悠真は少し困ったように笑う。


「店には特に名前を付けてないし、工場もそのまま工場って呼んでるだけかな。」


「そうか。」


 ゼラモードは小さく頷いた。


「では、お主の会社の名前は?」


 悠真は一瞬言葉を失った。


「……。」


 レオンも苦笑する。


「そういえば、会社名も決めてなかったな。」


 ゼラモードは穏やかに笑う。


「会社には名が必要じゃ。」


「働く者の誇りとなり、商いの顔にもなる。」


 悠真は腕を組み、しばらく考え込んだ。


 やがて顔を上げる。


「決めた。」


 皆の視線が集まる。


「会社名は……カミシロフーズ。」


 静かな店内に、その名が響いた。


 ユウジは嬉しそうに笑う。


「いい名前だ!」


 師匠も大きく頷いた。


「覚えやすくていい。」


 ゼラモードは満足そうに微笑む。


「良い名じゃ。」


「今日から、お主たちの会社はカミシロフーズじゃな。」


 食事を終えた一行は店をあとにし、悠真の案内で畑へ向かった。


 一面に広がる畑では、青々と育った作物が風に揺れ、多くの人々が収穫作業に励んでいる。


 ゼラモードは土を手に取り、ゆっくりと確かめた。


「管理が行き届いておる。」


「良い畑じゃ。」


 悠真は少し照れながら笑う。


「みんなのおかげだよ。」


 続いて工場へ向かうと、入口ではガレスが待っていた。


「悠真さん、お帰りなさい。」


「ゼラモード様、お待ちしておりました。」


 ガレスは工場内を案内しながら、生産量や出荷状況を丁寧に説明していく。


 ゼラモードは作業場、倉庫、商品の保管方法、荷積みの様子まで、一つひとつ目を配りながら歩いた。


 一通り見終えると、満足そうに頷く。


「短期間でここまで築き上げたのは見事じゃ。」


 その言葉にガレスは安堵の表情を浮かべた。


「ありがとうございます。」


 ゼラモードは続ける。


「ただ、さらに良くできる。」


 商品の配置。


 作業の流れ。


 荷物を運ぶ順番。


 人員の配置。


 どれも今ある仕組みを生かしながら効率を高める提案だった。


 ガレスは何度も頷きながら熱心に耳を傾ける。


「勉強になります。」


「すぐに改善へ取り組みます。」


 ゼラモードは優しく微笑み、悠真へ向き直った。


「悠真。」


「これからお主は残る石版を探しに行かねばならん。」


「会社のことまで一人で抱える必要はない。」


 悠真は少し申し訳なさそうに笑う。


「でも、みんなに負担を掛けるのは……。」


 ゼラモードは肩へそっと手を置いた。


「仲間を信じることも代表の務めじゃ。」


「しばらくの間、わしもカミシロフーズを手伝おう。」


「ガレスたちと力を合わせ、さらに良い会社へ育てていく。」


 ガレスは深く頭を下げた。


「よろしくお願いいたします。」


 悠真も祖父を見つめ、安心したように笑う。


「ありがとう、おじいちゃん。」


 ゼラモードは優しく頷いた。


「会社のことは安心して任せるのじゃ。」


「お主は、お主にしかできぬ役目を果たしてこい。」


 悠真は力強く頷く。


 新たな名を得たカミシロフーズ。


 頼れる仲間と、世界一の経営者である祖父の支えを得て、悠真たちは残る五枚の石版を求め、新たな一歩を踏み出すのだった。


第111話を読んでいただきありがとうございました。


グラード・マーケットで始まった事業も、今回ようやく「カミシロフーズ」という会社名が決まりました。


ずっと「工場」や「店」と呼んでいたので、このタイミングで名前を付けられて自分でもすっきりしています。


次回からはいよいよ残る石版を求め、新たな冒険が始まります。


これからも応援よろしくお願いいたします。

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