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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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110/161

第110話 神々の宴

いつも読んでいただきありがとうございます。


前回で残る石版の手掛かりが全て判明しました。


今回は少し息抜き回です。普段あまり見ることのない神々の日常や、それぞれの個性を楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、第110話をお楽しみください。

残る五枚の石版の手掛かりが明らかになると、雲海の上に建つ神殿を包んでいた張り詰めた空気が、少しずつ和らいでいった。


神殿の大広間は白い石で造られ、天井を支える柱は一本もない。それでも広大な空間は不思議な力によって支えられており、開かれた窓の向こうには果てしない雲海が広がっていた。柔らかな陽光が差し込み、黄金色に染まった雲がゆっくりと流れている。


石版の話し合いを終えた十二柱の神々も、それぞれ安堵したように息をついていた。


「これで、ようやく全ての手掛かりが揃いましたね」


モーガントが穏やかに言うと、ゼラモードは満足そうに頷いた。


「うむ。長かったな」


そして周囲を見渡し、にやりと笑う。


「せっかくだ。今日は宴にしよう」


その一言に、神々の表情が一斉に明るくなった。


「宴ですか?」


エレーナが目を輝かせる。


「今日はわしが持って来てる。もちろん料理は地球のものだ」


その言葉に、今度は神々がざわついた。


「地球の料理?」


「初めて聞くな」


「どんな味なんだ?」


次々と興味深そうな声が上がる。


悠真も思わず笑みを浮かべた。


神といっても、初めて見るものへの反応は人間と変わらないらしい。


ゼラモードが軽く手を振ると、空間が淡く揺らぐ。


次の瞬間、大きな机の上へ次々と料理が並び始めた。


唐揚げ、寿司、天ぷら、焼き鳥、餃子、ラーメン、焼きそば、お好み焼き、カレーライス。


さらにプリンやショートケーキ、シュークリームまで並び、色鮮やかな料理が机いっぱいに広がっていく。


たちまち神殿中に香ばしい匂いが満ちた。


「な、なんだこの香りは……」


ラリーが思わず鼻をひくつかせる。


「見たことのない料理ばかりだ」


マリリンも興味深そうに料理を眺めている。


「これは美しいですね」


オルニードは寿司を見つめながら感心したように呟いた。


「見た目だけでも楽しめる料理とは」


「我慢できん!」


オオザトが勢いよく立ち上がろうとする。


しかし、その瞬間。


「待て」


ゼラモードの一言で動きが止まった。


「いただきます、だ」


「いただきます?」


聞き慣れない言葉に神々は顔を見合わせる。


ゼラモードは笑いながら説明した。


「食材や料理を作ってくれた者への感謝を込める、地球の挨拶だ」


「なるほど……」


モーガントは静かに頷いた。


「素晴らしい文化ですね」


他の神々も次々と頷く。


ゼラモードが悠真へ視線を向けた。


「悠真、お前が手本を見せてやれ」


「はい」


悠真は軽く頭を下げると、両手を合わせた。


「いただきます」


その姿を見て、十二柱の神々も同じように手を合わせる。


「いただきます」


声が綺麗に揃い、神殿へ静かに響いた。


次の瞬間。


「うまい!」


最初に声を上げたのはオオザトだった。


唐揚げを一口食べるなり目を丸くし、勢いよく二つ目へ手を伸ばす。


「肉が柔らかい! しかも、この衣は何だ!」


「少しは落ち着け」


ラリーが呆れながら言うものの、自分も焼き鳥を口へ運んだ瞬間、驚いたように目を見開いた。


「……これは確かにうまい。」


その様子を見ていた悠真は、小さく笑った。


神々の宴は、想像以上に賑やかなものになりそうだった。


神々は思い思いに料理へ手を伸ばし、あちこちで驚きの声が上がっていた。


「この麺料理も面白いな」


ラリーは箸を器用に使いながらラーメンをすすり、満足そうに頷く。


「この白いものは何です?」


マリリンが恐る恐るプリンを口へ運ぶと、その滑らかな食感に目を丸くした。


「……溶けました。」


その一言に周囲から笑いが起こる。


「甘いものも悪くないな。」


オルニードはショートケーキをゆっくり味わいながら微笑んだ。


「地球には、こんな文化があるのですね。」


「気に入ったなら何よりだ。」


ゼラモードは嬉しそうに神々の様子を眺めていた。


料理が一通り行き渡った頃、モーガントが静かに口を開く。


「ペレナート、一つだけ話しておきたいことがある。」


和やかだった空気が少しだけ引き締まる。


ペレナートは湯飲みを置き、モーガントへ視線を向けた。


「何だ?」


「ロペ家の件だ。」


その言葉に、悠真の表情も自然と変わる。


ロペ家。


あの館の中に広がる異空間。


悠真もレオンも、あの場所で堕天使との戦いに敗れた。


「人間と堕天使を戦わせるのはやめろ。」


モーガントは静かな口調だったが、その瞳には強い意思が宿っていた。


「堕天使も命だ。見世物のように扱うべきではない。」


ペレナートは少しだけ目を閉じ、小さく息を吐いた。


「……昔から何度も言われているな。」


「当然だ。」


モーガントは視線を逸らさない。


「私は神として認めることはできない。」


しばらく沈黙が流れる。


やがてペレナートは肩をすくめた。


「分かった。今後は見直そう。」


その返答に、モーガントも静かに頷いた。


「それでいい。」


険悪な雰囲気になることもなく、二人の会話はそこで終わった。


ゼラモードは満足そうに微笑む。


「互いに言いたいことを言えるのは悪いことじゃない。」


その言葉に神々も頷き、再び宴が始まった。


「悠真。」


エレーナが声を掛ける。


「石版集めは大変でしょうが、無理はしないでくださいね。」


「ありがとうございます。」


「私たちも、それぞれの地域で気を配っておく。」


モーガントも続けた。


「何か異変があれば、すぐ知らせよう。」


「助かります。」


悠真は深く頭を下げる。


十二柱の神々が協力してくれる。


それだけでも心強かった。


窓の外では、夕日に照らされた雲海が黄金色に輝いている。


残る石版を探す旅は、いよいよ本格的に始まる。


だが今だけは、そのことを忘れ、この穏やかな時間を楽しもう。


悠真は湯気の立つ料理へ再び箸を伸ばき、神々の笑い声が雲の上の神殿へいつまでも響き渡っていた。

第110話を読んでいただきありがとうございました。


ここまで石版探しの情報整理が続いたので、今回は神々との宴を描いてみました。神様といっても、初めて食べる地球の料理に驚く姿はどこか人間らしく、書いていて楽しい回でした。


次回はいよいよ神々の国を後にし、ゼッタ地区のグラード・マーケットへ向かいます。悠真はゼラモードへ工場の運営を託し、残る石版を求める新たな旅へ出発します。


次回もよろしくお願いいたします。

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