第108話 約束の石版
いつもお読みいただきありがとうございます!
今回は、カンジンとベンジンとの約束が果たされる回です。
石版の新たな手掛かり、そして神々の国がさらに賑やかになる展開をお楽しみください!
天使の泉。
白い雲の上に湧き出る澄み切った泉は、今日も静かな輝きを放っていた。
「ゼラモード様!」
「ゼラモード様!」
カンジンとベンジンは満面の笑みを浮かべ、一目散に駆け寄ってくる。
ゼラモードも嬉しそうに二人を迎えた。
「元気にしとったか。」
「元気!」
「毎日!」
二人は声を揃えて答える。
その様子を見て、悠真も自然と笑みがこぼれた。
ゼラモードは抱えていた袋を二人へ差し出す。
「今日は土産も持ってきたぞ。」
「土産!」
「やった!」
二人は目を輝かせながら袋を受け取る。
中にはゼラモード食品のお菓子や飲み物がぎっしり詰まっていた。
「いっぱい!」
「新しい!」
二人は次々と袋の中を覗き込み、子どものようにはしゃいでいる。
ゼラモードは苦笑した。
「相変わらずじゃの。」
「食べ過ぎるでないぞ。」
「大丈夫!」
「少し!」
二人の返事に、その場の全員が思わず笑った。
しばらく賑やかな時間が流れたあと、カンジンがふと思い出したように悠真を見る。
「約束!」
ベンジンも大きく頷く。
「石版!」
悠真も笑顔で答えた。
「約束通り。ちゃんとゼラモードを連れてきたよ。」
二人は嬉しそうに何度も頷くと、泉のそばに置かれた小さな祠へ駆けていく。
ほどなくして、大切そうに二枚の石版を抱えて戻ってきた。
「これ!」
「約束!」
二人はゼラモードの前まで来ると、石版を差し出した。
ゼラモードは懐かしそうに石版へ触れる。
「ちゃんと持っておったのか。」
「大事!」
「約束!」
その返事にゼラモードは満足そうに頷いた。
「律儀じゃの。」
悠真も石版を受け取る。
表面には見慣れた建造物が彫られていた。
一枚は海に浮かぶ大鳥居。
もう一枚は壮大な社殿。
悠真は目を見開く。
「厳島神社……。」
「それに、出雲大社。」
どちらも日本を代表する神社だった。
「ありがとうございます。」
悠真は二人へ頭を下げる。
カンジンとベンジンは照れくさそうに笑った。
「約束!」
「守った!」
悠真も笑顔で頷く。
「うん。」
「ありがとう。」
石版を眺めながら、悠真は静かに口を開いた。
「おじいちゃん。」
「この石版って、やっぱり何か意味があるんだよね。」
ゼラモードは石版へ視線を落とす。
「もちろんある。」
その一言に悠真の表情が引き締まる。
「教えてくれるの?」
ゼラモードは少しだけ笑った。
「いや。」
「それは自分たちで調べるとよい。」
悠真は苦笑する。
「やっぱりそうなるよね。」
「答えを聞いてしまっては面白くあるまい。」
ゼラモードは石版を軽く撫でた。
「これは、わしが最初に地球を巡った時に作ったものじゃ。」
「世界各地を歩き、自分の目で見て、記念として石版に残した。」
悠真は静かに聞き入る。
「その後、十二柱の神に一枚ずつ渡した。」
「土産代わりじゃな。」
「じゃあ……。」
悠真は手元の石版を見つめる。
「残りは他の神が持ってるの?」
ゼラモードは腕を組み、少し考えるように空を見上げた。
「さての。」
「カンジンとベンジンは真面目じゃから、大事に保管しておった。」
「じゃが……。」
思わず苦笑が漏れる。
「あやつらは曲者揃いじゃ。」
「今でも持っておるとは到底思えんな。」
悠真は少し驚く。
「そんなに?」
「地上へ置いてきた者もおるじゃろう。」
「誰かへ譲った者もおるかもしれん。」
「どこへやったか忘れておる者も、おそらくおる。」
ゼラモードは肩をすくめた。
「長く生きておると、そういうこともある。」
悠真は思わず笑ってしまう。
「それじゃ、探すのも一苦労だな。」
ゼラモードはどこか楽しそうに笑った。
「それも旅というものじゃ。」
その言葉を聞いたカンジンとベンジンは顔を見合わせる。
そして、何かを思いついたように同時に声を上げた。
「ゼラモード様!」
「みんな呼ぶ?」
ゼラモードは二人の言葉に目を細めた。
「みんなを呼ぶか。」
カンジンとベンジンは勢いよく頷く。
「呼ぶ!」
「すぐ!」
悠真は首を傾げた。
「みんなって……。」
モーガントが穏やかに答える。
「他の神々だな。」
「皆、それぞれ神々の国の各地でそれぞれの役割を果たしている。」
悠真は少し驚いた表情を見せる。
「一人ずつ探しに行く必要はないってことか。」
ゼラモードは笑った。
「その必要はない。」
「呼べばおそらく来るじゃろう。」
そう言うと、カンジンとベンジンを見る。
「頼めるか。」
「もちろん!」
「任せて!」
二人は懐から共有カードを取り出した。
神々の国で長く使われてきた連絡用のスキルカード。
カンジンはカードへ向かって元気よく話しかける。
「ゼラモード様!」
続いてベンジン。
「土産!」
それだけだった。
悠真は思わず笑ってしまう。
「それだけ?」
ゼラモードも苦笑する。
「十分じゃ。」
「あやつらには、それで伝わる。」
カンジンとベンジンは顔を見合わせる。
「すぐ来る!」
「絶対!」
その言葉から間もなく。
遠くの空で光が瞬いた。
一筋の光が雲の上へ降り立つ。
続いて、また別の方向でも光が輝く。
一つ。
二つ。
三つ。
神々の国のあちこちで、転移の光が次々と現れ始めた。
悠真は思わず空を見上げる。
「もう来たのか。」
モーガントは苦笑した。
「皆、行動だけは早いからな。」
ゼラモードも笑い声を漏らす。
「相変わらずじゃの。」
「土産という言葉には弱い。」
さらに一つ、また一つと光が増えていく。
雲の向こうから、こちらへ向かってくる気配が次々と近付いてきた。
カンジンは嬉しそうに飛び跳ねる。
「来た!」
ベンジンも笑顔で頷く。
「いっぱい!」
悠真は思わず周囲を見渡した。
これから会うのは、この世界を支える十二柱の神々。
ゼラモードが土産として石版を託した者たち。
そして、残る石版の手掛かりを知っているかもしれない存在だった。
ゼラモードはどこか懐かしそうに空を見上げる。
「さて。」
「どんな顔を見せてくれるかの。」
その言葉と同時に、目の前へ新たな転移の光が降り立つ。
眩い光が静かに晴れ始めた。
十二柱の神々が、次々と姿を現そうとしていた。
第108話をお読みいただき、ありがとうございました!
約束どおり石版を受け取り、残る石版の行方も少しずつ見えてきました。
そして最後は、ゼラモードの一言で神々が大集合することに。
次回はいよいよ個性豊かな神々が勢ぞろいします。それぞれが石版をどう扱っていたのか、そして思わぬ情報も飛び出すかもしれません。
引き続き『異世界は金で強くなる』をよろしくお願いいたします!




