第102話 静岡へ
いつも読んでいただきありがとうございます。
神々の国で得た手がかりをもとに、悠真たちはついに地球でゼラモードを探し始めます。
今回の舞台は静岡。物語が大きく動き始める一話となりますので、ぜひ最後までお楽しみください。
悠真は、手紙に書かれた住所をもう一度見つめた。
静岡県。
ここに、おじいちゃんがいるかもしれない。
ゼラモード。
神々が口にしたその名前。
そして母から聞いた、祖父の呼び名。
まだ確信はない。
それでも、行かなければ何も始まらない。
「母さん」
リビングで洗い物をしていた母が振り返る。
「どうしたの?」
「ちょっと静岡まで行ってくる」
母は驚くこともなく、穏やかに微笑んだ。
「おじいちゃんを探しに行くのね」
「うん」
悠真は真っすぐ頷いた。
「交通費、少し貸してくれないかな」
「もちろんよ」
母は財布を取り出すと、必要そうな金額を悠真へ渡した。
「ありがとう。帰ったらちゃんと返すから」
「返さなくてもいいわよ」
そう言って笑う母に、悠真も少しだけ笑みを浮かべた。
「でも約束だから」
「ふふっ、分かった」
そのやり取りを、レオンたちは静かに見守っていた。
「少し待ってて」
母はそう言うと台所へ向かった。
しばらくして、大きめの保冷バッグを持って戻ってくる。
「お弁当作ったから、みんなで食べてね」
「えっ」
悠真は思わず目を丸くした。
ふたを開けると、おにぎりに唐揚げ、卵焼き、ウインナー。
彩りよく詰められた手作り弁当が四人分入っていた。
「わぁ……」
ララが目を輝かせる。
「ありがとうございます!」
リズも深々と頭を下げる。
「お気遣い、感謝します」
レオンも静かに頭を下げた。
「ありがとうございます」
「大したものじゃないけど、気を付けて行ってきてね」
その一言に、四人は同時に頷いた。
異世界で着ていた服から地球の服へ着替える。
ララもリズも以前こちらへ来た時に用意した服を身につけていた。
改めて見ると、二人ともよく似合っている。
「どうですか?」
ララがくるりと一回転する。
「変じゃない?」
「いや、似合ってるよ」
悠真が素直に答えると、ララは嬉しそうに笑った。
隣ではリズも少し照れくさそうに裾を整えている。
レオンも地球の服を着ることにすっかり慣れた様子だった。
「なんだか旅行みたいだな」
その言葉に、四人とも自然と笑顔になる。
東京駅は朝から多くの人で賑わっていた。
ホームへ入り、新幹線へ乗り込む。
静かに発車した車内で、母の作ってくれた弁当を広げた。
「美味しい!」
ララが頬を緩める。
「やっぱり悠真のお母さんの料理は最高ですね」
「ほんとだな」
レオンも満足そうに頷いた。
リズも小さく微笑む。
「どこか懐かしい味がします」
そんな穏やかな時間を過ごしているうちに、新幹線は静岡へ近づいていく。
窓の外を見ていたララが、不意に声を上げた。
「あっ!」
三人も窓の外を見る。
そこには、雄大な富士山が姿を現していた。
「すごい……」
ララは思わず立ち上がる。
「石版の絵でみた印象より、こんなに近かくで見ると迫力がすごいわね!」
「本当だな」
レオンも目を細めた。
「こんなに大きく見えるとは思わなかった」
リズも静かに見つめる。
「やはり実物は違うね」
悠真も窓の外へ目を向けた。
東京から見る富士山とは迫力が違う。
まるで目の前にそびえ立っているようだった。
「ここまで来たんだな……」
小さく呟いた。
静岡駅へ到着すると、四人はそのままタクシーへ乗り込んだ。
「この住所までお願いします」
運転手は住所を見ると少し驚いたような表情を浮かべる。
「ああ、あそこですね」
車は市街地を抜け、山道へ入っていく。
窓の外には深い緑が広がり、建物は少しずつ少なくなっていった。
「本当にこんな場所なのか?」
レオンが小さく呟く。
さらに十分ほど走る。
山道を抜けたその先で、ララが思わず息を呑んだ。
「すごい……」
広大な敷地。
いくつもの巨大な工場。
大型トラックが何台も出入りし、煙突からは白い蒸気がゆっくりと空へ伸びている。
「こんな所に工場が……」
悠真も思わず見上げる。
その時だった。
工場の正面に立つ巨大な看板が目に入る。
白地に大きな文字。
『ゼラモード食品』
一瞬、四人の時間が止まった。
そして。
「「「「そのままじゃん!」」」」
四人の声が見事に重なった。
第102話を読んでいただきありがとうございました。
ついに「ゼラモード食品」が登場しました(笑)。
ここまで積み重ねてきた石版やゼラモードの伏線が、少しずつ一本につながり始めます。
次回はいよいよ工場の中へ。ゼラモードとの再会はあるのか、ぜひ楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。
ブックマークや評価、感想も励みになります。今後ともよろしくお願いいたします。




