第43話:布袋(の腹)に嵌まる
「そういう事になるかな。なかなか子供出来なくて、正直諦めかけてたからなぁ・・・。まぁ、名前の通り“ポテ”こと“布袋”は福の神だった訳だ」
「はぁ・・・」
「で、来週早々にカミさんは、カミさんの実家がある東京に報告をかねて戻る。当然、ポテの世話は出来ない。だから、当然、ポテの世話は結城クンがする事になる訳さ。大丈夫、大丈夫。ポテは福の神だかラ良い事アルヨ、お兄サン、トッテモ、ラッキーネ!」
喜屋武さんは台詞の後半を、昔テレビで見た海外で怪しげな土産物を売り付ける外人の真似をした。
《マジでかよ?無茶苦茶だ・・・。でも一応、反論してみるか?》
「だったら、喜屋武さんがポテの世話・・・」
「断る。俺は無理な事はしない主義でね」
《うっ》
喜屋武に台詞を遮られ、やっぱり断られた・・・。
その時だ。
結城は左の人差し指に痛みを感じる。
「痛っ!」
布袋が結城の指を噛んだのだ。
喜屋武はバックミラーで状況を確認し、クスクス笑いながら、
「ほらね。ポテも怒ってるじゃないか」
《いや、これはボクへの怒りというよりは、喜屋武さんへじゃないのか?》
痛みが増してきた結城は思わず、
「布袋、ゴメンだから指を離してくれないか?弁天、何か言ってやってくれ」
結城の懇願に呼応する様に弁天が吠え、布袋は噛むのを止めた。
《え?弁天、ボクの言う事理解してる?》
噛まれた左人差し指を確認する。
《ふー。少し内出血はしてるが、思ったよりたいした事は無い。甘噛みの強めみたいなモンか。本気だったら、血がダラダラだもんな。どんな顔して噛んだんだ、一体?》
結城はどうしても布袋の全体を見たくなって、布袋の入ったケージ横の留め金を外す。
パチンと勢いよく留め金が外れ、ケージの上部を取った。
《げっ!何だこりゃ・・・》
そこには巨大な白地に薄い茶虎の毛の固まりが・・・。
《うわっ、ぽてぽてで顔埋まりかけてる》
布袋は結城に顔を向け、低いダミ声でナ"ァ"ーと鳴いた。
結城は深くため息を吐き、
「はぁ・・・、布袋。お前、何食ったらそんな姿に成るんだ?」
「毎日、カミさんに高カロリーなご飯食わされて、余り運動しないからなぁ。ゴロゴロ言って寝てばかりだし」
喜屋武は何処か楽しそうだ。
布袋は箱座りの姿勢から立ち上がる。
垂れた腹をケージに擦りながら、ボクの膝の上に乗った。
《うわっ》
布袋の足が乗る毎に、結城の太股が沈む。
《布袋・・・、お前、どんだけ重たいんだ。絶対、12kg以上在るだろ》
またナ"ァ"ーと鳴き、布袋はボクの上で仰向けに転がった。
撫でろってか・・・。
「あっ!」
結城は思わず確信する。
確かに布袋は布袋、まさに名は体を表す。
そう、布袋は巨大になり過ぎた為に腹が擦れ、地肌がほとんど見えていたのだ。
腹を露出して描かれる七福神の布袋の様に。
結城は思わず布袋の腹を触ってみる。
少しチクチクするが、短くて太い硬質の産毛に腹の肉の触感が気持ち良かった。
《ヤバい、嵌まる・・・》
瞬間、布袋は気持ち良さ気に喉を鳴らした。
《はぁ・・・。ま、いっか。コレはコレで・・・》




