第42話:ケージいっぱいのポテ、幸せいっぱいの喜屋武
「そう言われれば、ありません。いや、どっちかってゆーと意識していないとゆーか・・・」
「そう、それだよ。結城クン。つまり、人間は無意識のうちに、約5kgもある頭を支えているのさ。しかも、絶妙なバランスでね。考えてもごらん。もし、5kgの鉄アレイを載せて生活をしなきゃならないとしたら?」
結城は首を横に振り、
「考えたくないですね・・・」
「そこなんだよ。キャサリン捜査官曰く、『“同調率”が上がっているので、全くイヴの重さは感じない』そうだ。つまり、イヴ捜査官自体が、キャサリン捜査官の一部になってる様なモノらしい。彼女の説明ではね」
「そーなんだ・・・」
一つの謎が解けた結城がキャシーに目をやる。
キャシーはミルクを飲み終え、チラリと腕時計を確認して、
「Shall we go? (行きましょう?)」
喜屋武は頷き、立ち上がると、
「そうだね。そろそろ出掛けて、現場で検証しなくちゃね」
結局、昨夜話込んだ内容は、キャシー忘れちゃったんだろうか?
疑問を残しつつ、結城も喜屋武さんの後を追った。
東大坂の現場に向かうレクサスの中は、非常に穏やかな雰囲気に包まれる。
運転は勿論喜屋武さんが、助手席にはキャシーがイヴを抱えて。
結城はといえば、後部席でプラスチックケージに入った弁天・布袋・戎達に、
「久しぶりの家だね。真相を答えておくれよ」
結城は弁天のケージだけを少し開け、頭を撫でていた。
弁天は兄弟達に逢えたのが嬉しいのか、ずっと喉を鳴らし目を伏せている。
布袋や戎も喉を鳴らしていた。
《そーいや、弁天以外の二匹って、余りマジマジと見た事無かったよな・・・》
結城は弁天のケージを閉め、横のケージから布袋を取り出そうと手を突っ込む。
《・・・・・?あれ?この冷たいの鼻だよな?これが顎、そして・・・》
プニッ。
《???ぷにっ?あれ?空間・・・、ってゆーか隙間が無い?》
結城は覗き込んで見た。
《・・・・・。ぷっ。なんだこりゃ、ぷっぷっぷっ》
結城の目に写ったのは、ケージいっぱいに詰まったデブ猫だった。
《こんなにデカかったっけ?》
結城は思わず喜屋武に尋ねる。
「喜屋武さん。この布袋、なんかかなりデカくなってないですか?」
喜屋武は苦笑いして、
「あー、ポテね・・・。ウチのカミさんが、餌をやり過ぎちゃったみたいでね。ウチに来た時は10kgくらいだったんだけど、今は12kgはあるんじゃないかな。カミさん、刺身やら焼き魚やらやたら食べさせてたから。実際よく食べるし、あっ、それから今日からポテも戎も、結城クン所で預かってもらうから」
《へ?何で?どーゆー事?》
「ちょ、ちょっと、喜屋武さん。何でですか?いきなり」
暗闇でいきなり後頭部を殴られた様な衝撃に、ボクは唖然とした。
喜屋武は照れながら、
「いやね、今朝、朝飯食ってたらさ、カミさんが言うんだよ。『赤ちゃん、出来たかもしれないって』俺さー、びっくりしちゃって」
《へ?赤ちゃん?マジで?》
思わず、反復でお祝いの言葉が出た。
「は、はぁ・・・、そうなんですか。それはおめでとうございます。・・・って、赤ちゃん?喜屋武さんがパパ!?」




