第38話:マグロの刺身
結城は自宅のマンションで、ソファーに寝っ転がる。
時間は夜の9時を回っており、帰宅途中でスーパーで食材を買い込んではきたものの作る気持ちになかなかなれなかった。
片やキャシーとイヴは捜査一課の相原先輩に、何故かボクのマンションに送ってもらい、おそらく疲れているのかボクの寝室で早々に寝入っていた。
《まさか、今日もボクん所に泊まるとは・・・。もしかして、日本滞在中ずっと?んなコトは無いよなぁ・・・。鍵渡して無かったけど、またヘアピンで開けたのかな?困ったもんだ》
気配を感じ横を見ると、弁天がやって来る。
ひょいと結城の上に乗り覗き込むと、結城の顔を舐めた。
《おい、くすぐったいって。ゴメンな、まだお前の御飯もまだだったね》
結城は弁天を見詰め、
「今日はまた、お前の家に行ってきたよ」
弁天はにゃあと鳴き、ボクの顔を舐める。
《おい、くすぐったいよ》
「明日は一緒に行くからな。久しぶりに家族に会えるぞ」
弁天はまたにゃあと鳴いた。
ちゃんと理解ってるのかな。
「ほら、弁天もお食べ。」
普段はあまりしない事だけど、弁天にマグロの赤身を小皿に取り分けた。
今日の晩御飯は、マグロの刺身、小松菜の胡麻あえ、シジミの味噌汁、御飯といったシンプルなモノ。
ほぼ出来合いなんだけどね。
弁天は小皿のマグロをモシャモシャと食べ、物足りないのかボクを見詰める。
《足りないって?》
「しょうがないな、これで最後だよ」
もう一切れマグロを弁天に取り分けてやる。
弁天は声高ににゃーんと鳴き、嬉しそうにまたマグロをパクつく。
《お前は平和でいいな》
そんな時だ、寝室のドアが開く。
《あれ?キャシー起きたのかな?》
結城が目をやるとやって来たのは、キャシーではくイヴだった。
《そういや弁天とイヴって喧嘩しないのかな?》
結城の心配は杞憂に終わり、弁天とイヴは鼻を近付け一通りの挨拶をするとお互いの距離を置く。
《着かず離れずといったトコか。喧嘩するよかマシだな》
結城はイヴを気遣い、
「イヴ、お腹空いてないか?」
イヴは首を傾げ、不思議そうな表情をする。
《もしかして・・・》
「イヴ、ハングリー? (イヴ、お腹空いてる?)」
今度は理解したのか、
「Meow. (ミャウ)」
そう鳴くと舌舐め擦りをした。
やっぱり腹減ってんだな。
「ちょっ・・・、あ、英語じゃなきゃ理解んないかゴメン。プリーズ、ウェイト。OK? (どうか、待つ。OK?)」
結城は立ち上がると、流しに向かう。
結城はイヴの晩御飯の支度をしながら、背中越しの弁天に、
「弁天、お前の猫缶とカリカリ分けてやってくれな」
にゃうと返事が聞こえた。
《皿は・・・、この大きめの汁椀でいいか》
汁椀の中に猫缶を開け、ザザっとカリカリを脇に流し込む。
《そーいや、アメリカの猫ってマグロ食うかな?まっ、食うだろ》
冷蔵庫からマグロの赤身を取り出し、二切れ切り出した。
トッピングして完成だ。




