第35話:警ら課にて
喜屋武はそれじゃぁといって鞄を開け、キャシー達の資料を見せた。
直ぐさま重大さに気付いた武部課長が、署長室隣の応接室が空きなのを確認し、
「こちらへ・・・」
橋本課長と喜屋武さんを伴い中に入っていく。
扉が閉まる直前に喜屋武さんは首だけを出し、車で待っててくれとボクに言った。
残された布施巡査に結城は尋ねる。
「布施巡査、アユちゃん達どうです?」
「ええ、立ち話もなんですし、ちょっと今時間大丈夫です?」
結城は喜屋武さんに携帯からメールを入れ、
「少しなら大丈夫です」
「では課でご説明します。ついて来て下さい」
布施巡査に連れられ、警ら課に入ったのだった。
《牧丘署の警ら課は、何だか少し懐かしい匂いがする。あの頃は、永友のおやっさんによく怒られたよな・・・。ずっと名前すら呼んでもらえなくって、ボウズだったもんな。元気してんだろうか・・・》
「結城刑事、大丈夫ですか?」
布施巡査に声を掛けられ、現実に戻される。
「あっ、はい」
椅子に座るよう勧められ、ボクが腰を下ろすと布施巡査は語り出した。
「昨夜は世話になりました。アユちゃんはまだマシだったのですが・・・。クミちゃんはあのまま放っておくと、かなり危険な状態だったみたいです。とりあえず、しばらくは二人共入院する事になりました。今は署の婦警が交代で二人に着いてくれています。夕方には市の児童相談所の方も来る事に」
結城は胸を撫で下ろし、
「安心しました。母親は?」
結城が尋ねると、布施巡査は少し困った表情をして、
「母親の蔵元真紀は、今朝から署内で取り調べをしてるんですが、彼女まだ未成年でして・・・、少年課が担当しています」
「そうなんですか・・・」
「はい・・・。判明った事は、どうやら高校在学中にアユちゃんの妊娠が発覚して、そのまま家出同然でアユちゃんの父親に当たる人物と田舎から大阪に出てきたみたいです」
「駆け落ち、ですか?」
布施巡査は肩を竦め、
「みたいなもんですね。で、アユちゃんを産み、一年が過ぎた頃ににクミちゃんの妊娠が発覚。丁度この頃、アユちゃんの父親と別れてます」
「結婚はしてなかったんですか?」
「みたいですね・・・。」
「伝え聞いた話だと、彼女臨月直前まで水商売や、時に風俗などで金を稼いでいたみたいです」
「で、現在に至る訳ですか。複雑ですね。じゃあ、あの男は父親では?」
「違います。あの男は元々母親の客だったみたいで・・・。彼女、寂しかったんでしょうね。深い仲になるのに、時間はかからなかった様です。ただ・・・」
「ただ、何ですか?」
「あの男、身なりはホストですが、実際は暴力団・姫路不動組の準構成員でして」
「あぁ、それで・・・」
なんとなく話が繋がった。
その時だ、ボクの携帯にメールが入る。
喜屋武からで、用事終わったとの事だった。
《ボクも行かなきゃ・・・》
「アユちゃん達の事気になるんで、また話を聞きます。教えてもらっていいですか?」
布施巡査は快諾してくれた。
結城は改めて布施巡査に頭を下げ、警ら課を離れたのである。




