第32話:不勉強と意地悪な質問
喜屋武はトンカツをゴクンと飲み込み、
「なんだい?結城クン」
「いや、ウチで預かってる弁天なんですが・・・。
「ああ、真っ白い雌猫ちゃんだったね。俺んトコはポテ・・・、いや、布袋だけど。それが何か?」
「変な事無かったですか?」
「変な事?何がだい?」
《喜屋武さんトコは、何もないんだ。そっか・・・》
「い、いや、何でもないです。忘れて下さい。それより、ポテって何なんです?」
結城は昨夜弁天から体験した話を、する気にはなれなかった。
上手く表現出来なかったし、結城本人がおかしいと思われるのも嫌だったからだ。
「ポテ?ああ、俺のカミさんがね、布袋っていうより太ってポテポテしてるから“ポテ”って。実際良く食うんだ、ポテ。一回の食事にでかい猫缶2つだぜ。しっかし、女のネーミングセンスってやつは、俺には理解らんね。あっ、おやっさん、ロースカツもう一枚追加で。結城クンも食べるだろ?」
「は、はぁ」
うわっ、まだ食うんだ。
美味しいけど・・・。
喜屋武さんは楽しげに、
「じゃあ、ロースカツ2枚で!」
結城達は昼飯を済ませると早々にレクサスに乗り込み、阪神高速を恵美須町入口から東大坂市の事件現場を目指した。
相変わらず喜屋武さんは、運転しながらお菓子を所望する。
「結城クン、後から、そうだな・・・、じゃがりこ取ってくれ」
「はいはい、じゃがりこですね」
ボクは後部席のコンビニ袋からじゃがりこを取り出し、蓋を開ける。
一本抜き、喜屋武に渡した。
「すまんね、結城クンも食べなよ。美味いぜ」
「はぁ、すんません。いただきます」
《正直、トンカツの後にじゃがりこってどうなんだ?個人的には甘味系なんだけどさ・・・。そーいや、何か忘れてる気が・・・。キャシー、朝、何か言ってたような・・・。あ”!》
結城は思い出した様で、
「き、喜屋武さん!ボク、言い忘れてた事が!」
ご機嫌にじゃがりこを食べながら運転していた喜屋武さんは、少し驚き、
「びっくりするじゃないか、どうしたんだい?結城クン」
「キャシーが今朝言ってたんです。現場にいた猫達を集めてくれって。気になる事があるからとも言ってました」
喜屋武さんはピクリと右眉を動かし、
「ほぉ、遂にFBI特別“猫”捜査官の本領発揮だね」
「本領発揮って?何なんですか?」
結城が首を傾げると、喜屋武さんは肩を軽く竦め、
「おいおい、まだFBIの資料に目を通してなかったのかい?」
「すいません・・・」
結城は素直に謝る。
《でも、そんな時間無いし・・・。ここは反論せずに、喜屋武さんに教えてもらった方がいいよな》
結城は観念した面持ちで、
「不勉強でした。教えてもらえませんか?」
喜屋武はニヤリと笑い、
「ほぉ、今日はやけに素直だねぇ。資料読んでないのは致命的だから、意地悪な質問も出来無いし」
《意地悪って・・・、ははは》
この人、絶対、俺を弄って楽しんでる。
結城は思った。




