第30話:彼女の流儀
翌日の昼過ぎの事。
結城とキャシー、そして、イヴが大阪府警本部に出勤する。
本部内は忙しく、キャシーの姿を見掛けた相原が難事件の意見を聞きたいと捜査一課へ引っ張って行ってしまった。
《あー、行っちゃった》
相原は、かなり強引な性格のようだ。
結城一人でトボトボと捜査十一課の扉を開けると、喜屋武さんがニヤけた笑顔で近付いて来て、
「昨日はお疲れ様。大捕物だったらしいじゃないか。いつか結城クンはヤってくれると思っていただけに、俺としては凄く嬉しいよ」
「えっ?何の事です?」
当然、結城は白を切ってみせる。
「いや、言わなくていい。東大坂の現場近くであった少女暴行事件と麻薬密造事件、ありゃキャサリン捜査官とイヴ捜査官が見付けてきたモンだろ?違うかい?」
《ギクッ、鋭い・・・》
「何を根拠に・・・」
喜屋武はニヤニヤしながら、
「いやぁ、簡単さ。今までキャサリン捜査官が解決した事件の前に、必ずといっていい程幾つかの事件が解決されている。これは彼女の報告書には書かれていないがね。コレを見てみたまえ。添付資料に纏めて書いてある。アメリカの警察は日本と違って自治体レベルで独立性が強い。連邦捜査局の人間が来るとなれば反発もひとしおさ。ましてや、彼女達はFBIの中でも更に稀な特別“猫”捜査官なんだから。だから、本来の事件の前に幾つかの事件を解決・・・。しかも、手柄を現地の捜査官に差し出して、信用を得るのが彼女の流儀みたいだね」
結城は思わず漏らす。
「だから、あんな真似を・・・」
《はっ、しまった。言っちゃった》
「やっぱり、そうか!でも、結城クン。キミの取った行動も今回ばかりは見事だよ」
「何がですか?」
結城は不思議そうに尋ねる。
「キミの手柄にせずに、所轄に逮捕させた事さ。どうして、所轄に?キミが逮捕した方がボーナス査定上がるのに」
《あ、しまった。ボーナス・・・。いやいや、そんな事いってる場合では・・・》
「だって、ボク達の目的は、あくまでも簀巻き殺人事件の解決であって、担当する事件を増やすのが目的ではありませんから。下手すりゃ、所轄からも反発を喰らう恐れもありますし」
結城が説明すると、喜屋武さんは嬉しそうに、
「そう、それが正解だ。いやぁ、本当に嬉しい。時に結城クン、昼飯は食ったかい?」
「いや、まだですが・・・」
《確かにギリギリまで寝てたので、朝ご飯すら食べてないもんな・・・。キャシー達は何か食べてたみたいだけど》
結城が思いあぐねていると、喜屋武が思う処があったのか、
「今日は気分が良いので、特別に俺がご馳走してやろう。なぁに構わんさ、課長には許可取ってある。食ったら、そのまま現場行くぞ」
「え?マジでゴチってくれるんですか?喜屋武さん」
喜屋武さんはチラリとボクの目を見て、
「嫌なら奢らんが・・・」
「い、嫌、そんな事は無いです。是非。お願いしますよ~、喜屋武さ~ん」
やっぱり、この人には敵わない。




