第29話:ごめんなさい、忘れてた
布施巡査はアユちゃんの母親に近付き、
「なぁ、どうしてあんな可愛い子供を・・・」
「可愛いから余計に憎かった・・・。だんだん、ウチを捨てたヒトの顔に似てきて、それが嫌やった・・・」
母親がポツリと呟いた。
「阿呆やな。それでもアンタが、腹痛めて産んだ子供達やろ?アンタにも似てるんだから・・・。とりあえず、署で詳しく聞かせてもらうわ。パトカー乗ってくれるか?今、ここでアンタに手錠はしたくない・・・」
布施巡査はアユちゃんの母親と一緒に、男の乗ったパトカーとは別のパトカーに乗り込みマンションを離れた。
結城達は一通り見送った後、
「キャシー、バック・ゼア (キャシー、向こうに戻ろう)」
最初の事件現場に向かい歩き出す。
キャシーはボクの腕を突き、
「Do you trust us? (私達の事、信用してくれたかしら?)」
ボクは大きく頷き、
「イエス・アイ・ドゥ。キャット・イズ・グレイト・トゥー(はい、とっても。猫が凄い事も)」
《気付けばあれだけ話すのが苦手だった英語が、少しだけだけど近くに感じるように思えた。あっ、そう言えば・・・》
「キャシー、アイ・ハブ・ア・クエスチョン。ホワイ・ディド・ノット・ユース・ユア・ヘアピン・アゲイン?オープン・ザ・ドア (キャシー、一つ質問が。どうして、ドアを開ける時に、またヘアピンを使わなかったんですか?)」
キャシーは暫く考え、プッと吹き出し、
「I'm sorry. Just forgot it. Don't be angry. (ごめんなさい。ただ忘れてただけなの。怒らないでね)」
《今、フォゴットって言った?忘れる?違う、忘れてた、だ。嘘だろー。
忘れてただけで、あんな高層階から雨樋づたいに降りる危険なスタントしたの?ははははは》
結城は引き攣り、呆れるしかなかった。
キャシーは結城に顔を向け、
「Anyway, Mina. I'm so tired. And sleepy. Why don't we back to home, tonight. (ところで、ミナ。とっても疲れたし、眠いわ。今夜は家に帰りましょう)」
そう告げると、事件現場ではなくボクの車が停めてある駐車場に向かって歩きだす。
《やっぱり、猫だ。やる事やって、寝るってどうなんだ。まぁそれでも、幼い命は救われたし、大麻密造犯も捕まったからヨシとするか・・・。
ボクも眠くなってきし。とりあえず、帰ったらすぐに課長のアドレス宛てにメールして、昼からの出勤にしてもらおう。あっ、後、現場の猫漫画の取り寄せと、被害者・春日さんのPCを科学捜査研究所(科捜研)に解析依頼も・・・。はぁ・・・、ヤる事多すぎだよ》
結城達は駐車場のRX-8に乗り込むと、自宅のある梅田へ向けて来た道を戻る。
唯一来る時と違ったのが、
《イヴがキャシーじゃなくボクの膝の上で寝てた事なんだけどね。ちょっとは、イヴに認めてもらえたのかな》




