第28話:Suspect
布施巡査は溜め息を吐くと、
「アユちゃんのお母さん。貴女ね、育児放棄ですよ、完全に。それから、アユちゃんの腕見せてもらいましたが、暴行の痕跡が見られます。申し訳ないですが、署までご同行頂きご説明してもらえますか?」
アユちゃんの母親はガタガタと震えだし、
「違う、ウチやない・・・。ウチは止めようとしたんや。でも、あのヒ・・・」
言葉を遮り若い男の声が、
「マキ、何面倒臭い事やってんや。ガキにエサ渡したらミナミ行くぞ。早よせー、トロ臭いんやから!」
ヌッと現れたのは、いかにも暴力的なホスト紛いの男だった。
布施巡査の姿を見るやいなや、挙動がおかしくなり、
「何や、ややこしそうやから、俺、帰るわ」
そう言って、男は後ずさる。
刹那、キャシーが叫んだ。
「Mina, He is suspect at case1. Catch up him, quickly! (ミナ、彼は事件1の容疑者よ。早く捕まえて!)」
《え?今、サスペクトって言った?サスペクトって、容疑者だよな・・・。ケース1とも・・・。じゃあ何?あの若いのが大麻栽培の犯人なの?》
結城は若い男を睨み、
「警察だ!そこのお前、ちょっと待て!」
若い男に飛び掛かった。
同時にキャシーもイヴに指令を出す。
「Eve, Support him. (イヴ、彼をサポートして)」
唸り声と共にイヴも若い男に牙を剥く。
イヴのサポートは見事な物で的確に若い男の手に噛み付き、顔を引っ掻いた。
結城も顔を二発ほど殴られはしたが、痛いなんて言ってられなかった。
結城は後ろ手に若い男を押さえ付けると、男のジャケットの袖をめくり上げる。
《やっぱり注射痕が・・・》
「布施巡査、手錠。身柄確保して下さい!」
布施巡査は子供達をキャシーに預けると、緊張した体ていで若い男に手錠を掛けた。
そうしている間に救急車が到着し、直ぐにパトカーのサイレンが。
結城は布施巡査に告げる。
「全部、布施巡査の手柄にして下さい。若い男の部屋こそが、大麻栽培の部屋ですから。ボクとキャサリン捜査官は、元の現場で捜査に戻りますので。後の処理はお任せします」
結城とキャシーはマンションを離れ、近くから様子を伺う。
勿論、イヴも。
救急車にはアユちゃんとクミちゃんが、パトカーには若い男、そして・・・。
「ママはいっしょじゃないの?」
救急車に乗り込みながら、アユちゃんが布施巡査に尋ねる。
布施巡査は少し困った顔様子だが、それでも作り笑顔で、
「お母さんはね、少しお巡りさんとお話をしてから、病院に行くってさ。だから早く良くならないと。おじさんも直ぐに病院行くから、待っててくれっかな」
布施巡査はアユちゃんの頭を撫でてやる。
救急車の扉が閉まり、サイレンを鳴らしゆっくりと病院へ向け走りだした。




