第27話:助けられた子供、動揺する母親
キャシーはガラス戸を開き、カーテンをめくるとガラスの割れた音に驚いているアユちゃんを抱きしめた。
「It's O.K. You don't cry anymore. (もう大丈夫。もう泣かなくていいから)」
アユちゃんはキャシーの顔を見て暫し呆然としていたが、安心したのかエーンと泣き出した。
結城はアユちゃんの頭をなで、
「アユちゃん、クミちゃんは何処?」
アユちゃんは隣の部屋を指差した。
「向こうだね」
結城は隣の部屋を開ける。
ゴミ袋の散らかる中、ベビーベッドにクミちゃんは居た。
「クミちゃん」
結城がベビーベッドを覗き込む。
クミちゃんの吐息は荒く、グッタリとしている。
彼女の額に結城は手を当ててみた。
《凄い熱・・・》
結城はクミちゃんを抱え上げ・・・。
《軽い・・・。嘘だろ、何でこんなに軽いんだよ》
泣きそうになりながら、結城はそのまま玄関の鍵を開ける。
「大丈夫ですか?結城刑事」
布施巡査が心配そうに待っていた。
「いや、かなり状況は深刻です。救急車は?」
結城は尋ねる。
「もうそろそろ下に到着するはずです」
布施巡査は深いため息を吐き答えた。
刹那、キャシーがアユちゃんを連れて来る。
かわいそうに、こんなに痩せ細って・・・。
布施巡査も同じ様で、唇を噛み締め怒りに顔を真っ赤にしていた。
結城とキャシーは布施巡査にアユちゃん達を預け、靴を取りに屋上に戻る。
マンション入口で落ち合う約束をして。
結城達がマンションの入口に降りてくると、遅い時間にも関わらず騒ぎを聞き付けたギャラリーがかなり居た。
遠くで救急車のサイレンが聞こえる。
もう間もなく到着するだろう。
布施巡査は右腕でクミちゃんを抱えたまま、左手でアユちゃんと手を繋いでいる。
結城が布施巡査に声を掛けようとした時だ。
「アユ!どうしたの!」
ギャラリーを割って一人の若い女が、アユちゃんの元に駆け寄る。
見た目は20代前半、いやもしかするともっと若いかも。
キャバ嬢くさいメイクに、派手なギャル風の服装が何故か違和感を覚えた。
結城は思わず、
「失礼ですが、アユちゃんのお母さんですか?」
若い女は結城を睨みつけ、
「アンタ、誰?アンタがポリ呼んだんか?勝手な事すんな!」
いきなり喧嘩を売られた。
これに布施巡査がキれ、しかしあくまでも口調は冷静に、
「私、牧丘警察署警ら課の布施と申しますが、貴女は今までどちらへ行ってましたか?アユちゃん達の様子からして、数日家を空けておられた様ですが。クミちゃんが発熱して、大変な事になっているの知っておられましたか?」
「そ、そんな・・・、アユには携帯渡していたし・・・」
若い母親は動揺を隠せない。
キャシーはいつの間に見付けたんだろ、アユちゃんの携帯を差し出し、
「Battery was over. (バッテリーは無いわ)」




