次期王妃の真意はどこに
「どうも、気になるんだ」
黒髪に深い藍色の瞳の少年が、銀髪に蒼い瞳の少女と向かい合っている。
そのどちらも整った顔立ちをしており、絵画のモデルになりそうな調和のとれた美しさを醸し出していたが、二人の様子を見るものはいない。
「メディウムの姫君の動きがですか?」
「……それもある。彼女は聡明だ。確かにアベルに実害はないようにしているけど、というか、逆にそれが理性的過ぎて、彼女の行動が、アベルへの恋慕だとは思えない」
「それも、ということは、他にもあるのですね?」
クロエの落ち着いた声が、レンに響く。彼女は自分より一つ年下であるというのに、いくつも年上であるかのような錯覚に陥ることが、よくある。
「アベルのことも、だ。確かに行動力がある人だから、一度断っただけで引き下がりはしなかったかもしれない。ただ、どうしてあの場ですぐに引き受けたのか、ひっかかるものがある」
「それは……家事情なのでは?」
「そうだな。ただ、その家事情っていうのがひっかかるんだ。メディウム家は表向きという条件はつくが、中立だ。味方につけて、大きな利益が家にあるのかどうかは微妙な線だろう」
「……中立は、裏を返せば内通者にもなりえる?」
蒼い瞳がじっとこちらを見る。
彼女の頭の回転の速さには、驚かされる。
レンが頭の回転の速さを認めるのは、彼女で二人目だ。
「ああ。だからこそ、メディウム家とっていうのはリスクがあるように思う」
「それで、彼女の身辺を洗ってほしいと?」
「そういうことだ。本当は、学生のクロエに頼むのは間違ってるけど。一年生の方が、貴族意識が強いから、情報収集もしやすいと思って。必要ならヴェントス家の名は使ってくれていい」
「わかりました」
「ありがとう」
美しい銀髪をなびかせて颯爽とその場を立ち去る少女。
その後ろ姿を見送りながら、ふと、どこか黒髪の少女に通じるものを感じて、レンはためいきをついたのだった。
親愛なるアベル・オブスキィト様へ
お変わりなくお過ごしでしょうか。
最近は手紙のやり取りをしているので、会っていないという気分にはならないものの、体調は一日でも崩すものですから、どうかご自愛くださいね。
今日は何についてお話いたしましょうか。
波打つ金髪を、一つに軽く結って、太陽のような美しさをもつ美女は、描きかけの手紙を見ながら、ペンを置いた。
「……悪いことをしたかもしれませんね」
独り言に返事をするものはいない。
使用人たちは、何も言わずに、ただヴェラの紅茶を淹れなおした。
それは、ヴェラの性格を承知しているからでもある。
「あの様子では、まとまっていると思っていましたけれど……、これは私は邪魔ものかもしれません」
ぶつぶつとつぶやき続ける美女は、ペンの先とは反対側の方で、コツコツと頭をつつく。
考え事をしているときのそんな仕草でさえ、洗練されて美しい。
「アレクシオス殿下が悪いのですよ」
ヴェラがそうつぶやけば、さすがに使用人たちがぴくりと動く。
声には出さないものの、反応はしている。
「それでも、私のわがままなのでしょうね、これは……」
憂鬱げに頬杖をつき、そうして、ヴェラは再び、手紙を書き始めた。
二章スタートです!
今回は前ふりのため、かなり短め。




