第5話:学園祭と恋の予感
英雄学園は学園祭の真っ最中だった。
校内には出店が並び、生徒たちの賑やかな声があちこちから聞こえてくる。
ユーマたちの学年では、夜にダンスパーティが開かれることになっていた。
「ユーマ! ドレス選び行くよ!」
昼休み。
リリアが勢いよく教室へ飛び込んできた。
「え?」
「え? じゃないよ!」
そのまま腕を掴まれる。
さらにミアまで現れた。
「私も行きます!」
「ちょっ、二人とも引っ張らないで!」
結局、ユーマは半ば強引に連行された。
学園近くの衣装店には様々なドレスが並んでいる。
何着も試着させられた結果、最終的に選ばれたのは淡い青色のドレスだった。
鏡の前に立つ。
見慣れたはずの自分の姿なのに、どこか落ち着かない。
「似合ってる!」
「うんうん!」
リリアとミアが満足そうに頷く。
ユーマはため息を吐いた。
「なんか恥ずかしいな……」
そう言いながらも悪い気はしなかった。
夜になると、ダンスパーティが始まった。
会場には魔法の灯りが浮かび、音楽が流れている。
ユーマが会場へ入ると、何人かの生徒が振り返った。
少し居心地が悪い。
そんな時だった。
「ユーマ」
聞き慣れた声がする。
振り向くと、礼服姿のアイが立っていた。
「似合ってるな」
「アイも」
少しだけ照れながら言い返す。
するとアイが手を差し出した。
「踊るか?」
ユーマは一瞬だけ迷い、その手を取った。
二人はゆっくりと音楽に合わせて踊り始める。
慣れているわけではない。
何度か足がぶつかりそうにもなった。
それでも不思議と嫌な感じはしなかった。
少し離れた場所ではミアがその様子を見ている。
「いいなぁ」
ぽつりと呟く。
すると隣にいたリリアが笑った。
「ミアも誘えばいいじゃない」
「む、無理です!」
耳を真っ赤にして首を振る。
そんな様子にリリアは楽しそうだった。
パーティの後。
三人は学園の広場へ向かった。
ちょうど花火大会が始まるところだった。
夜空に大きな花が咲く。
「おおー!」
ミアが真っ先に歓声を上げた。
次々に打ち上がる花火を見ながら、三人は並んで座る。
「こういうの久しぶりだな」
アイが呟く。
「元の世界でも見たことある?」
ユーマが聞く。
「あるけど、こんな近くじゃなかったかな」
「私もです!」
ミアが元気よく手を挙げた。
その後も他愛ない話が続いた。
花火のこと。
学園のこと。
次の休みの日のこと。
気付けば最後の花火が夜空に咲いていた。
帰り道。
ユーマはふと空を見上げる。
この世界に来たばかりの頃は不安しかなかった。
でも今は違う。
隣にはアイがいて、ミアもいる。
学園には友達もできた。
少しずつ、この世界が居場所になり始めている。
そんな気がした。
学園祭の夜は、あっという間に終わった。




