襲来
大変、お待たせいたしました。過去編スタートです。
嵐はいつでも突然やってくる―――
忙しいときのドアベルの音ってイラってするわよね。
自分勝手だとわかってるけど、ちょっと空気読んで来て思っちゃうの。
ドタバタとレオンが仕事に出かけ、一息ついた後さぁ掃除するわよ!って時に来られると・・・こうやる気がなくなっちゃう。親に「宿題やりなさい」といわれると、逆にやりたくなくなるように。
要するにタイミングの問題なんだけど・・・むぅ。
そんなことをブツブツ呟きながら、足早に玄関に向かう。
この家に来たことをちょっと後悔するようないたずらを割と真剣に考えている自分がいた。
「はーい。今、開けますー」
どこか間延びした声をかけつつ、ドアを開ければ―――
間違いなく肉食であろうワイルドな男性がいらっしゃいました。
「あ、イケメンなら間に合ってるんで」
とドアを閉めようとしたら―――
ワイルドな彼が、すばやく足をドアに挟ませてきました。
チッ。
「おい・・・」
地を這うような低い声で足しか見えないミスターワイルド(仮)が怒りを伝えてくる。
はぁ…今日は掃除できないかもしれないわね・・・。
ドアの向こうにいる相手からは面倒事の匂いしかしない。
憂鬱な気持ちでゆっくりドアを開け、無理やり笑顔を作った。
「あら、失礼。もしかしてお客様かしら?」
改めて、招かれざる客と向かい合う。
艶めく黒髪をすべて後ろに流し、整った彫りの深い顔には同じ色の瞳が輝く。
浅黒い体は、一目で高級品とわかるスーツで包まれていても鍛え上げられていることがわかる。
全身から男性的な魅力がこれでもかっていうくらいあふれ出てる。
そして―――
身体的にも精神的にも私を見下しながら、親の仇でも見るように私を睨んでる。
・・・視線で人が殺せるなら、私はすでに何度も死んでいるだろう。
あまりにひどい敵意に危険を感じて、さっきは思わずドアを閉めてしまった。
白昼堂々、暗殺されるんじゃないかと本気で思ったわよ。
私の言葉に、彼はペン挟めるんじゃないかってくらい眉間にシワをよせた。
ちょっと指突っ込んでみたいわ。
「ほかにどう見えるんだ」
「そうね。略奪者に見えるわ」とはさすがに言えずに
「ごめんなさい。知らない人を家にいれないように夫に言われてて・・・」
目を伏せ、手をモジモジさせながら、か弱い女性を演じてみる。が、目の前に男性は眉を一瞬ピクリと動かせただけだった。やっぱり通じないわね。
「レオンは留守なのか?」
レオンの知り合い・・・にしては全くタイプが違うわね。
「えぇ、仕事に行ってるわ」
これで帰ってくれるのかしら。
そんな小さな期待は、すぐに裏切られた。
「好都合だ。レオンが帰ってくるまでに君を見定めよう」
獲物を見つけたハンターのように、ミスターワイルド(仮)の目が光った。
遅くなり、申し訳ありませんでした。気長に待って下さっていた方、本当にありがとうございます。亀すらびっくりするほどの速度での更新になると思いますが(オイ)また、お付き合い下さると嬉しいです。