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狼の時代  作者: 閃紅
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二人だけの旅路5

この話は戦国時代のお風呂についての話です。

それと同時に玲が珠洲以外の女性を意識する話です。

お風呂のシーン難しかったです。

玲は冴に連れられて小部屋を出ると広間の奥から外へ出た。

屋根つきに回廊が続いており、所々に蝋燭が置かれている。

冴は回廊の途中で立ち止まり、カチカチと火花を散らして蝋燭に火を移した。

蝋燭を持って進んで行く。

回廊を進んで行くと建物が並んでいた。

その一つに2人は入った。

熱気が充満し、直ぐに汗が流れてくる。

入口の閂を下ろす。

冴が壁際に蝋燭を置くと、室内の様子がわかった。

部屋の真ん中に釜があり、湯気が出ている。

冴は部屋の端の籠のところまで行くと紺色の小袖を脱いだ。

蝋燭の淡い灯りが冴の白い身体を照らす。

何も隠さずに白い薄生地の小袖を羽織った。

「何を見てるの、玲も早く脱ぎなさいよ」

冴が釜の近くに腰を下ろす。

玲が冴と同じように籠に着ているものを脱いでゆく。

重い音を立てて革の羽織が床に落ちる。

股引を脱ぐと白いスラッとした足が現れる。

黒い小袖を脱ぐと、白いサラシを巻いた身体が現れる。

サラシを取ると、冴と同じような白い薄生地小袖を羽織ると、冴の斜め前に座った。

ただでさえ薄い生地なのに、汗で更に透けて、ほんのり紅くなっている冴の姿が玲の視界に入る。

背は高く、手足は長い。

鍛えられた身体であることは玲にも分かる。

無駄な肉など一つもない。

それなのに――柔らかい。

強さだけではない。

美しい、と思った。

珠洲とは違う。

母様のように包み込む優しさではなく、人の目を自然と惹きつける美しさ。

自分にはない、大人の女の姿だった。

「……ずるいです」

「え?」

突然の玲の言葉に冴が驚いた。

「どうしたの急に」

「胸大きいし、身体柔らかそうだし、綺麗だし」

「ずるいです」

「そんなところを見ていたの?」

冴は楽しそうに笑った。

「玲は変わってるわね。普通はそんなにはっきり言わないものよ」

「わたしも髪分けは終わってます」

「胸が大きい方が赤子を育てられます」

「あらあら。玲は誰の子を育てたいの?」

「え…誰?」

「そう、誰の子よ。景狼様?」

「若君の子…」

玲は恥ずかしくなって、俯いた。

「景狼様、カッコいいものね。わたしが惹かれるんだから無理もないわ」

「わたしは若君の付き人ですから」

「そんなこと言ってると、誰かに若君取られちゃうわよ」

「よく覚えておきなさい」

「人は弱いものなの。だから裏切ってしまうこともあるわ」

「人はね、裏切らない人を求めるの」

「景狼様は裏切らないでしょ」

「はい。若君は裏切りません」

「景狼様は強いでしょ?」

「はい。お強い方です」

「裏切らなくて強い人を人は求めるの」

「だって安心でしょ」

「そのうち景狼様と縁を結びたい人がたくさん出てくるわ」

「妻になりたいと思う子もね」

「今の景狼様を見る限り誰も相手になれないでしょうけど」

「玲、わたしはあなたが好きよ。頑張ってね」

玲が頷くと、冴は立ち上がった。

釜の湯で「ぬか袋」をひたし、白く豊かな胸元を始め全身に当てて優しく肌を擦った。

立ち上る湯気の中、手桶ですくったわずかなお湯を肩からさらりと流すと、汗とともに旅の砂埃が滑り落ちていく。

玲はそれをじっと見ていた。

冴は慣れた手つきで身体の隅々まで清めると、自分を見つめる玲に微笑んだ。

「玲、身体洗ってあげるわね」

玲が返事をする前に、冴はぬか袋で玲の背中を優しく擦っていく。

「玲だって綺麗じゃない」

「え?」

「自分では分からないものよ」

「綺麗ね」

冴が玲の細くて白い脚を撫でたあと,ぬか袋で擦っていく。

「玲、綺麗な脚。ずるいわ」

「え」

冴が可笑しそうに笑った。

つられて玲から笑みが零れた。

「あとは自分でね」

玲はぬか袋を受け取ると、他の部分を洗い、釜のお湯で流してゆく。

「そろそろ、行きましょう」

冴は立ち上がると濡れた小袖を脱ぎ、一糸纏わぬ姿で棚に置いた袋を取りに行く。

袋から薄い緑色の小袖を纏い、紐を縛る。

袋を持ったまま、玲のところに戻る。

「玲、これを着なさい」

袋から薄い青の小袖を取り出し、玲に差し出す。

「こんな綺麗なの…着れません」

玲は嬉しそうな表情をするが、直ぐに首を横に振った。

「玲、あなた、また汚れた格好をするの?」

「それとも…何も身に付けないで景狼様の元に行くのかしら」

「お借りします」

冴から受け取ると小袖を着替える。

真新しい小袖は薄い青色の生地に鮮やかな桜が描かっれている。

今まで着たことのない美しいものだった。

冴の小そでにも同じ桜が描かれている。

「行くわよ」

冴が閂を上げて出て行く。

手には籠を持っていた。

玲も慌てて籠を持って追って行く。

外は日も暮れて、吹きかける風が火照った身体を冷ましてゆく。

玲には夢のような時間だった。


玲がいない頃、景狼も広間から出て井戸で身体を洗っていた。

井戸は土塁の側にあった。

井戸の横に建物があり、煙が上がっている。

建物から声がする。

土塁の方を見ると、高く、先が見えない。

景狼が元の小部屋に戻って暫くすると、2人が戻ってきた。

2人とも真新しい似たような小袖を身に着けて頬をほんのり染めている。

姉妹のようだった。

景狼が見たことのない玲だった。

「ご飯食べに行きましょう」

冴に従って玲と景狼が食堂へ向う。

玲が慌てて手に持つ籠を部屋の隅に置きに行った。

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