第六話 決闘!VSランドイエロー!②
――第一勝負・めんこ
アゲハは勝負の前に、めんこのやり方をリリスに説明していた。リリスは殆どゲームをしないので、ルールを全く知らないのだ。
「リリス、めんこやったことあるのか?」
「……ない」
「えっと……地面に置いてあるめんこがあるだろ?それを、お前の持ってるめんこでひっくり返すんだ」
「……どうやって?」
「いや、普通にこうやって……」
アゲハはめんこを片手に持ち、思い切り地面に叩きつける。するとその風圧で全てのめんこがひっくり返り、地面に転がった。
「……凄い。一撃」
「だろ?こういうのは得意なんだよ」
「……なぁ、もうええか?」
「す、すまん。ほら、行って来いリリス」
「ん。頑張る」
いざ、勝負開始。めんこを並べ直し、先行はレモン、後攻はリリスということになった。互いに二回ずつめんこを投げ、最後に相手のめんこを裏返していた数が多い方の勝ちだ。
「行くで……はぁっ!」
レモンがめんこを投げると、アゲハが先ほど見せた光景と同じように全てのめんこがひっくり返る。レモンのめんこは自分を主張するかのように表を向いていた。それだけで、レモンが強敵ということがわかった。
「ハッハッハ!良いぞレモンよ!相変わらず凄い腕だ!」
「くっ……頑張れ、リリス!お前ならやれる!」
高笑いをするマオと、リリスを応援するアゲハ。二人の声を背に受けながら、リリスはめんこを構えた。先程アゲハが見せてくれたやり方を思い出し、それを真似しながらめんこを投げた。
「……えいっ!」
リリスのめんこが叩きつけられ、周りに置いてあるめんこが数個ひっくり返った。しかしレモンのめんこは動かず、得点は得られない。
「あー、惜しい!」
「やれ、レモン!もう一度耐えれば貴様の勝ちだ!」
「負けるなよ、リリス!」
アゲハとマオは互いに乗り気になり、気づけば持ってきた昼飯を食べながら観戦していた。レモンは主にひらひらと手を振り、リリスはアゲハの応援で胸がキュンとしていた。リリスの胸に「負けたくない」という思いが燃え上がり、気持ちが引き締まる。
「……次はひっくり返せるとええなぁ、青宮さん?」
「……負けない」
「ふっ、なら完膚なきまでに潰したるわ……はぁっ!」
レモンはもう一つのめんこを構え、先程と同じように全力で床に叩きつけた。リリスのめんこの隣に叩きつけられためんこは、そのままリリスのめんこのみをひっくり返した。対して、レモンのめんこはどちらも表。リリスの戦況は絶望的だ。窮地に追い込まれたリリスはめんこの置かれた地面を睨みながら、思考を繰り広げる。
(……どうする?さっきのやり方じゃ、絶対に負けちゃう……もっと力を入れて、位置を考えて……)
リリスはめんこの並ぶ床を眺め、思考を加速させていく。その頭脳で先程見ためんこの動きから、どのように投げればめんこがひっくり返るかを計算し、位置、向き、強さなどを手の向きで調節する。視界を何度も動かし、やがて……ある一つの場所に視線を合わせた。そこは……レモンの二つのめんこが隣り合わせになっている場所。
「……!ここっ……!」
リリスは正確に向きと位置を合わせ、全力を込めてめんこを投げる。リリスのめんこは先程よりも強い力で叩きつけられ――レモンのめんこ二つをすくい上げるかのようにひっくり返した。――リリスの勝利である。その信じられない光景に、レモンは驚愕の声を上げる。
「……はぁ!?なんや今の!?」
「おお!すげぇよ、リリス!よく頑張ったな!」
「ほう、中々の腕前であるな……素晴らしいぞ、青宮リリス」
アゲハとマオはリリスに称賛の言葉を贈る。真剣な表情で酷使した頭脳を休ませていたリリスはアゲハの言葉によってその表情を崩し、我に返る。
「あ、アゲハに褒められた……!ふふ、ふふふふふ……」
「チッ……まだ勝負は一つ目や。喜ぶのは早いで……!」
リリスはいつも通り危ない笑みを浮かべ、レモンは静かに闘志を滾らせていた……
――第一勝負の結果……勝者・リリス。
――――
――第ニ勝負・ポーカー
「ルールは簡単だ。特定のカードを揃えて、強い組合せを作ったやつの勝ち。勝負は一回だ。手札交換は二回まで。カードはあたしが配るから、手札を交換したい時は言ってくれ」
「……公平に頼むで、赤羽さん」
「……次も勝つ。勝って、アゲハに褒めてもらう」
互いに机を囲んで座り、睨み合うレモンとリリス。アゲハは山札をシャッフルし、二人にカードを五枚ずつ配った。二人はそれぞれカードを確認し、真剣に組合せを考える。……リリスのカードは、フォーカード。比較的強い組だ。しかし、ここから手札を変えてより強い組を作るには、より数字の強い四枚を引くか、地続きになっている数字のカードを引いて、一つ上の組、ストレートフラッシュを作るか。どちらにせよ、カードを四枚交換しないといけない。確率的に考えれば、かなり無謀である。ここは手札をキープし、相手が自分より弱い組を引いている事を願うのが賢明な判断だろう。よって、リリスはキープを選択。後はレモンのキープを待つのみだ。リリスが緊張した面持ちでカードを眺めていると、ふと、それまで黙っていたレモンが口を開いた。
「なぁ。青宮さんって、なんで赤羽さんと一緒におるん?」
「え……?それは…………恋人、だから?」
「おい待て。いつからあたしはお前の恋人になった?」
「昔、結婚の約束をした、婚約者で……」
「そんな約束はしてねぇ!幼馴染だからって記憶を捏造すんな!」
リリスの答えにアゲハがツッコミを入れ、その様子を見たレモンはクスクスと笑う。はたから見れば穏やかに笑っているように見えるが、彼女の瞳は以前先程のまま、ギラギラとした光を宿していた。彼女は笑みを浮かべたまま、アゲハとリリスにこう言い放った。
「……ゴシキジャー、やろ?」
「「……え?」」
「聞けば赤羽さんは、最近まで青宮さんと疎遠だったみたいやな?そんな二人がいきなり一緒におるようになった……まぁはたから見れば、仲直りしただけの、お似合いのカップルに見えるやろねぇ」
レモンは皮肉っぽくそう言った。からかうような様子とは裏腹に、彼女の瞳は全く笑っていない。レモンがゴシキジャーの事を口にしたことで、アゲハとリリスは明らかに動揺していた。それを見ながら、レモンは自分の制服の袖をめくり、右腕を示した。――そこには、黄色く光る、見覚えのある腕輪がつけられていた。
「ほら、あんたらが持ってる腕輪。実はうちも持っとったんよ」
「それは……ゴシキジャーの……!」
「そうや。この腕輪をきっかけに、仲良うなったんやろ?だからこれ使って……うちとも仲良くしようや」
レモンは腕輪を回し、左手でカードを持ったまま右手を高く掲げた。そして笑みを浮かべたまま、ボソリと呟く。
「……≪聖鎧装着≫」
――ズバババーン!
高い声が響くと同時に、レモンの身体が黄色い光に包まれる。光は変身スーツを形作り、レモンの茶髪を黄色く染め上げた。
――イエロースター!ランドイエロー!
やがて光は収まり、変身したレモンがそこから現れた。……どこか忍者を連想する和風の装束に、口元を覆う黄色のスカーフ。彼女のトレードマークであったツインテールは、眩しい程の黄色に染まっていた。
「ランド、イエロー……!」
アゲハの脳裏に、サグルの言葉が蘇る。
――あの二人は癖が強いからね。お姉ちゃんならすぐに分かるよ。
アゲハが「何かある」と感じたレモンこそが、アゲハの探しているランドイエローだったのだ。なるほど、確かに癖が強い。
(……!もしかしたら、魔王も……!)
先程から椅子に座って不敵な笑みを浮かべているマオも、ゴシキジャーである可能性が高い。その証拠に、レモンが変身した所を見ても、全く驚いていない。つまりマオはゴシキジャーを知っている関係者か、もしくはその本人だろう。アゲハが一人思考を繰り広げている間、リリスは警戒色を強めてレモンに問う。
「……あなた、何を企んでるの?」
「すぐわかるで。――赤羽さん、手札交換や」
突然レモンに声を掛けられ、アゲハは思考を断ち切る。……そうだ、今は勝負の途中だ。しかも今の自分はディーラーである。アゲハはポーカーに思考を切り替え、レモンからカードを四枚もらい、山札をシャッフルする。そして上から四枚をめくり、レモンに手渡す。……しかし、レモンの視線はカードではなく、アゲハの持つ山札に向けられていた。
「……おい、カード取れよ」
「あ、ごめんな。……ふむ、なるほどな……」
レモンはカードを受け取ると、神妙な表情でカードを眺める。レモンは自分の手札を確認し終わると、今度は自分の手札を三枚、アゲハに差し出した。
「交換や。頼むで、赤羽さん」
「お、おう?ちょっと待ってろ……」
アゲハは再び受け取ったカードを山札に混ぜ、シャッフルする。そして上からカードを三枚めくり、レモンに手渡した。――その際もレモンは山札を眺めていた――レモンは受け取ったカードを眺め――スカーフの裏で、笑みを浮かべた。
「うちはもう出せるわ。青宮さんは、交換せんでええの?」
「……大丈夫。このままいく」
「決まりやな。じゃ、青宮さんから出そか」
「……わかった」
リリスは言われた通り、カードを机に置いた。……手札はもちろん、フォーカードである。配られた時から変えていないのだから当然だ。リリスは緊張したように息を吐き、レモンのカードを待つ。
「……フォーカードか。中々いい組合わせやな」
「三番目に強い組合わせ。あなたの勝ち目は……低い」
「そうやな。確かに強い組や。けどな……勝ち目が低いっていうことは、うちの勝ち目はゼロではないで?」
そう言って、レモンは机にカードを置いた。出した組合わせは――――ストレートフラッシュ。フォーカードよりも強い、二番目に強さを誇る組だ。つまり――レモンの勝利である。
「…………!?」
「なっ……!?ストレートフラッシュ!?嘘だろ!?」
「ハーッハッハッハ!見たか!我が従者レモンの力を!」
リリスとアゲハが目を見開いて驚き、マオはふんぞり返って高笑いを上げていた。レモンは変身を解き、先程の鋭い笑みではなく、朗らかな笑顔に戻っていた。
「ふふ……うちの勝ちやな〜」
「……おい!お前、どんな手を使いやがった!?」
「え〜、疑ってるん?うちは普通に、交換しただけやで~」
「あれだけでストレートフラッシュなんて、揃うわけがねぇだろ!さっきの≪聖鎧装着≫で何かしてたな!?」
アゲハは驚きの表情を浮かべながら、レモンに詰め寄る。――ストレートフラッシュ。一番強いロイヤルストレートフラッシュには劣るものの、それが揃う確率は極めて低い。それを二回の交換で揃えるなど、とんでもない強運の持ち主か、イカサマをしたかのどちらかである。……更に、レモンが先程≪聖鎧装着≫をしていた事が、アゲハの疑念をより強めた。レモンの肩を掴んで揺らしていると、観念したのか、レモンはため息を吐きながら答えた。
「はぁ〜……しゃーない、教えたるわ〜。うち、≪聖鎧装着≫したらちょっと目が良くなるんよ~」
「目……?それがどうしたんだ?」
「さっき赤羽さんがシャッフルしてる時……ちらっとカードが見える時があったんや〜。それでカードの位置を把握して、赤羽さんのシャッフルの癖を見たりして……どのカードが山札の上に来るか、予想してたんよ〜」
「……!?てめぇ、やっぱりイカサマしてたんじゃねぇか!」
怒ったアゲハが怒鳴っても、レモンは何処吹く風である。飄々とした様子で、とても人間業とは思えない手の内を明かし、アゲハの言葉に反論する。
「確かにうちは今手の内を明かしたけど……それを証明出来るのはうちだけやから〜。青宮さん達が分かってなかったら、うちがイカサマしたことにはならへんなぁ?」
「……っ」
「くっ……本性現したな、てめぇ……!」
「……ごめん、アゲハ。私があの人をよく見てれば……」
「リリスのせいじゃねぇ。――おいレモン、最後はあたしと勝負だ。そこの魔王の前に、卑怯な真似をするてめぇをぶっ飛ばしてやる!」
アゲハは鬼気迫る表情でそう言った。……昔、ゲームや喧嘩ばかりしていたアゲハは、卑怯な手を使う相手を心の底から嫌っていた。特撮の影響か、「正々堂々」をモットーにしていた彼女にとって、レモンのやり方は完全に地雷だった。そんな彼女を見て、高笑いを止めていたマオは、アゲハの述べた内容に首を傾げた。
「……あれ?我、後回し?」
「そうみたいやねぇ。お嬢様、赤羽さんの相手するんで、報酬弾んでもらってもええですか?」
「あ、ああ、別に構わぬが……なんだ、この複雑な気持ちは……?」
アゲハとレモンがバチバチと視線を交わす中、マオの小さな呟きは誰にも聞き取られぬのだった……
――――
――最終勝負・けん玉
先程の二つの勝負で昼休みが終わってしまったので、アゲハとレモンの戦いは放課後となった。そのため、四人は空き教室ではなくアゲハの家の近くの公園に集まっていた。何故か人気の少ないこの公園なら、周りを気にする必要もない。
「まさか赤羽さんと戦えるなんてな〜。楽しめそうやわ〜」
「……ふん、そうやって笑ってられるのも今のうちだ」
「あらあら、随分と自信があるんやね?」
「はっ、あたしを誰だと思ってる?小さい頃、近所のけん玉得意な子ども達を総ナメにした「けん玉の赤羽」と呼ばれた女だぞ?」
――ダッサ、とレモンは内心思った。が、他の二人の反応は違ったものだった。
「アゲハ……!かっこいい!」
「二つ名持ちか……!良いぞ、それでこそ我が好敵手だ!」
リリスは顔を赤くしてアゲハを見つめており、マオは厨二病心に触れたのか、目を輝かせていた。アゲハはそれを聞いて、腕を組んで得意げに笑みを浮かべている。――マジかこいつら、とレモンは思った。それをぐっと飲み込みながら、レモンはアゲハに笑みを浮かべる。
「……うちも、けん玉は久しぶりやからな〜。ちょっと手が滑ってまうかもしれんわ〜」
「悪いが、手加減はなしだ。どんな手段を使ってきても全部叩き落としてやるから、覚悟しておけよ?」
「おー怖い怖い。お手柔らかに頼むわ~……」
「猫被っといてよく言うぜ。あたしの前で卑怯な真似したこと、後悔させてやる」
二人は右手にけん玉を構え、正面から向き合った。マオはその間に立ち、二人に聞こえるように、大きな声で叫んだ。
「勝負の内容は、「もしかめ」だ!互いにもしかめを続け、先に止まった方を負けとする!他にルールはない!妨害してもよし、殴りかかってもよし!何でもありだ!……それでは双方――構え!」
「「…………っ!」」
「……レディ――ファイト!」
マオの呼びかけと同時に、アゲハとレモンは腕輪に手を掛けた。腕輪のパーツを回し、全く同じタイミングで叫ぶ。
「「≪聖鎧装着≫!」」
――ズバババーン!
――レッド・フレイム!フレアレッド!
――イエロースター!ランドイエロー!
高い声と共に二人が光に包まれ、互いに姿を変える。
――燃えるような炎を纏った、魔法少女のような装束を纏った赤き戦士――フレアレッド。
――忍者を連想する和風の装束を纏った、黄色に輝く戦士――ランドイエロー。
二人の戦士が今、けん玉片手に相まみえる。先に仕掛けたのは……レモンの方である。レモンは懐からクナイを取り出し、アゲハに投げつけた。
「はぁっ!」
「……っ!来ると、思ったぜ!行くぞ、≪赤い剣≫!」
アゲハは片手でもしかめを続けたまま、赤い剣でクナイを弾き落とす。しかし追撃することはせず、警戒の構えを取りながら距離を取った。
「随分と生温いなぁ……!≪黄色い弓≫、追撃や!」
レモンがそう叫ぶと、彼女の背後から黄色く輝く弓が現れる。それはひとりでに弦を引き絞り、アゲハに向かって光の矢を放ってきた。アゲハは顔をしかめ、飛んでくる矢を素早く移動して避ける。そしてもしかめを維持しながら、黄色い弓に向かって……剣を投げた。
「失せろ、弓野郎!」
アゲハの投げた剣は正確に弓に当たり、飛んでいた弓を地面に落とした。アゲハはすかさず剣を回収し――その間も凄まじい速さでもしかめは続いていた――レモンから距離を取る。
「逃げてばっかりやないの。うちに妨害なしで勝てると思ってるんか?」
「言ったろ?あたしは卑怯な真似が嫌いなんだよ。正々堂々と、てめぇと戦って勝つ」
「随分とかっこいい言葉やなぁ!――≪黄色い弓≫!」
レモンの呼びかけと同時に、再び黄色い弓が虚空に浮かぶ。弓はアゲハに照準を合わせ、光の矢を放つ。アゲハは左右に動き回り、攻撃を避ける。
「チッ、またそいつか!」
「それだけじゃないで?……はぁっ!」
レモンは先程のクナイを投げ、アゲハの足元を狙う。避けに転じているアゲハのバランスを崩させ、アゲハを転ばせる気だ。
「させるかよ!うりゃあ!」
――アゲハは剣でクナイを弾く。
「まだまだ、玉は残っとるで!」
レモンは何度もクナイを投げ、弓と息を合わせて二方向から妨害をしてくる。アゲハは舌打ちをし、弓を回避しながら剣一本でクナイをはたき落としていく。だが、このままではジリ貧だ。
「……アゲハ、押されてる……?」
「ハッハッハ!良いぞレモン!このまま押し切って……おや?」
戦況を見守っていたリリスの隣で激励の言葉をかけようとしたマオは、アゲハ達の近くに何かがいるのを見つけ、言葉を止める。……それは、牛の頭と強靭な肉体を持った、人型の怪物――突然変異種であった。
「――ブモオオオオオ!」
「……っ、突然変異種……!」
「ふむ、勝負の妨げになってしまうな。ここは我が相手を――」
いきなり現れた突然変異種を見て、マオは自身の右腕に手を掛けたが……突然変異種は、マオの方ではなく、アゲハ達の方に目を向け、走っていった。
「――ブモオオオオオ!」
「駄目っ、アゲハ……!」
「まずいな、早く変身をせねば……!」
リリスは右腕に着けている腕輪に手を掛け、マオはその隣で制服の袖をめくる。――そこには、緑色の腕輪がつけられていた。それを目にしたリリスは一瞬動きを止めた。
「それ、ゴシキジャーの……」
「説明は後だ、青宮リリスよ。今は赤羽アゲハ達に代わり、我らが奴の相手を――」
「――ブモオオオオオ!」
マオ達がそうして話していると、突然変異種の咆哮が聞こえてきた。二人が目を向けると、けん玉に熱中しているアゲハ達に、突然変異種が襲いかかろうとしていた。マオは顔をしかめ、腕輪に手を掛けようと……
「くっ、≪聖鎧――」
「「邪魔だ(や)!どけ!」」
「――ブモオオオオオ!?」
する前に、突然変異種が悲鳴を上げた。マオが突然変異種の方を見ると、右半身をアゲハの炎を纏った剣で切り裂かれ、左半身にレモンの弓から放たれた無数の矢が突き刺さっていた。突然変異種は倒れ、その場で爆発する。
「「……え?」」
「はぁ、はぁ……しぶといな、赤羽さん!そろそろ降参してもええんやで!?」
「はぁ、はぁ……誰がするかよ!レモンこそ、そろそろ諦めたらどうだ!?」
リリスとマオが間の抜けた声を上げ、アゲハとレモンは変わらずもしかめを続けている。疲れが出てきたのか、二人は既に肩で息をしていた。
「……くっ……!あかん。もう、腕が……!」
――そこから勝負は一瞬だった。ついに腕の限界を迎えたレモンが、けん玉を取り落としたのだ。レモンの≪聖鎧装着≫が解け、レモンは地面に仰向けに倒れ込む。――アゲハの勝利である。
「――勝った……勝ったぞー!」
「うああああ……負けて、しもうた……」
「はっ、あたしの勝ちだな……?……やべ、あたしも腕が……ていうか身体が……」
勝ち誇った笑みを浮かべたアゲハは、レモンと同じように限界を迎えていたのか、地面に倒れ込んだ。≪聖鎧装着≫も解け、女子高生二人が公園の地面に倒れ込んでいた。
「ぜぇ、はぁ……ははっ、卑怯者の癖にやるじゃねえか、レモン。いい勝負、だったぞ……!」
「ぜぇ、ぜぇ……一言余計や、この体力お化けが……!……まぁ、いい勝負やったのは、認めたるわ……」
二人は肩で息をしながら、互いにグーサインをした。そして呼吸を整えるために、目を閉じて仰向けの体勢に戻った。リリスは激闘を終えた二人を眺め、ボソリと呟いた。
「……なんか、あの二人……仲良くなった……?」
「なっ、ななななな……!」
リリスが声の聞こえた方を向くと、そこには身体をプルプルと震わせているマオがいた。誰がどう見ても挙動不審であったが、根が優しいリリスは少し引きながらも声をかけた。
「……あの、大丈夫――」
「ず、ずるいぞレモン!そういうのは、我がやりたかったのにー!」
放課後の公園に、マオの悔しさを秘めた叫びが響き渡った。




