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みなさん、おはようございます! 

⭐︎前回のお話・・・いよいよ婚約者との顔合わせが始まる!けれど相手はひと月前に街でぶつかった怪しいオーラを醸し出してる男で、リーネは驚いてしまう。

顔合わせの雲行きは、果たして・・・?

 ヘルベリー侯爵夫妻のうしろを歩くのは、イケメンで有名な銀髪の貴公子、ハロルド・グレイ。

 彼は一見、王子様を彷彿とさせる美形だ。けれど、ちょっとぶつかってしまった私を目で殺そうとした失礼な男だった。加えて、さっきから顔を背け続け、私をちっとも見ようともしない。


 なんてふてぶてしい態度なの!


 彼が私との縁談をどう思っているのか、言葉にしなくてもすぐに分かってしまった。思わず俯いてしまう。そして直感した。


 私たち白い結婚になるに違いないわ。きっと、夫婦の会話も一切無い、仮面夫婦のような生活を送るに違いありませんわ。


 ・・・あら? 

 でもそれって、なかなかいいじゃない! 

 だって私は結婚に向いていないのだから、お互いに忌み嫌うのは、かえって良縁かもしれませんわ!


 不謹慎なことを考えていると、侯爵夫人の柔らかな声が部屋に響いた。


「お待ちしていました。ヘルベリーへようこそ。さぁ、こちらへいらしてください」


 侯爵夫人に促されるがまま右手の部屋に通されると、大広間になっていた。そこには長いテーブルにずらりと椅子が並んでおり、私たちは侯爵夫人に案内された席に腰を下ろした。

 私の向かいにはハロルド様が座った。が、やはり視線を合わせてはくれない。


 気まずい。すごく気まずいわ・・・

 やっぱり全く歓迎されてないのね。でもそれなら、これから先、仮面夫婦でいられるわね! ウェルカム、愛のないリッチな生活!


 再び不謹慎な妄想をして内心ニヤリと笑っていると、太くて低い大きな声音が大広間に響いた。ハロルド様のお父様、ヘルベリー侯爵の声だ。私は顔を上げた。


「改めて紹介しよう。これが息子のハロルドだ。俺の近衛騎士団で分隊長を務めている。武芸に秀でた自慢の息子だ」


 みんなの視線がハロルド様に集中し、彼は席を立った。けれどテーブルの上に視線を落としたまま、仏頂面で会釈をしただけだった。

 私の両親は顔を見合わせた。

 だって彼ったら、一言も喋らずに座ってしまったのだから。呆れるくらい態度が悪すぎますわ。みなに平等に冷たいという噂は、本当らしいわね。

 でもそんなことを気にしてはいられない。今度はこちらの自己紹介の番なのだから。


 お父様が立ち上がり、聞き慣れた声が食堂に響いた。その声音は普段よりも、ずーーーっとうわずっていた。お父様は極度のあがり症なのだ。大丈夫かしら?


「わ、私にはふふたりの子どもがおります! 長女がこの子で、おっ、弟の方は学校に寄宿していて、あいにくテスト期間中で外出禁止でして、来れませんで・・・でっ、でも成績が良くて自慢の息子でしてね」


 どもっているし噛んでいるわで、ひどく緊張しているのが伝わってきた。っていうか、私の紹介じゃなくて弟の話ばかり。これじゃあ侯爵様に息子自慢のマウントをとっていると思われないかしら・・・

 でもまぁ、いいですわ。お父様、ナイスファイッ! さぁ、今度は私の番ね。


 恭しく立ち上がり、口角を上げて穏やかな微笑みを浮かべた。


「リーネ・カルヴァンです。これからよろしくお願いいたします」


 会釈をし、席についた。

 たった一言自己紹介するだけなのに、すごく緊張してしまった。気づかないうちに、胸がドクドクと強く鼓動している。小さく息を吐いて緊張を和らげると、侯爵夫人の話し声が耳に入ってきた。

 話を聞くため、私は顔を上げた。瞬間ーー正面の青い瞳と目が合った。


 初めて真正面から婚約者の顔を見た。ハロルド様は、氷を思わせる透き通った青い瞳の持ち主だった。その美しさに、思わず息を呑んでしまう。

 しかし彼の目は見開かれ、目元が微かに引きつっている。なぜ? 


 ・・・まさか! 

 私、不細工だと思われてる!? 


 だってそうよ! ようやく目が合ったというのに、目をピクピクさせて、あからさまに嫌そうな表情をされているもの。

 どうやら銀髪の貴公子様は、私の顔がお気に召さないようですわね。


 いま侯爵夫人が何かの話をして笑っているのだけれど、全然頭に入ってこない。だってそうでしょう? 顔をひと目見ただけで嫌な顔をされたのよ。その屈辱的な事実に、腑が煮えくり返るほどの怒りを覚えた。そして自分の立場を盾に、私はハロルド様を一瞥することにした。

 お互いに睨み合い、緊張を孕んだピリつく空気が漂いはじめる。とても顔合わせの席には似つかわしくないことは、自分でも分かっていた。

 その一方で、両親たちが朗らかに何かを話している。その会話を聞いているフリをするため、チラリとそちらに目を向け、含み笑顔で頷いてみせた。そして再び、正面に目を戻した。

 すると!

 今まで視線を逸らし続け、牽制し合っていたハロルド様が・・・なぜか笑いかけきた! って、いきなりなんで??

 でも・・・問題なのは、笑いかけてきたことじゃない。


 彼の顔の造りは、作り物かと疑ってしまいそうなほど美しく整っている。それだけでも見惚れてしまいそうになるのに、口角を上げ、切れ長の目尻が優しげに下がると、不覚にも息が詰まりそうになってしまうのだった!


(この殿方の笑顔、マジでかっこいいですわぁぁぁ!!!!?)


 胸の鼓動がトゥクントゥクンと高鳴るのを感じる。恋のキューピットがウィンクして、私のハートを射抜いてしまったみたい。思わず悲鳴をあげそうになるのを、ぐっと堪えた。


 あ、今私のことを単純だと思ったでしょう? でも違うのよ。いつもはこんなことないの! これはハロルド様の美しさが並大抵のものじゃないってことなのよぉっ!!


 一気に舞いあがると共に、冷静な自分が顔をのぞかせた。


 ちょっと待って! よく考えなさい、リーネ。

 最初は心底機嫌が悪そうだったのに、なぜ急に笑いかけてきたのかしら? なんだか怪しいわよ・・・


 頭の中に疑問符が巡り回る。整理して考えようと思ったら、いきなり両親たちが立ち上がった。大事な話をするからと、ハロルド様と私を残し、別の部屋へと移ってしまった。

 つまり、私たちは自由に話せる時間を与えてもらったということになる。ということは、私とハロルド様は二人きりになってしまったわけで。


 えぇ〜〜・・・どうしましょう。

 何を話せば良いのかしら?


 あれこれ思案していると、低い声が耳に響いた。聞き心地の良い、穏やかな声音だった。


「温室へ行きましょう」


 刹那、矢尻にピンクのハートがついた弓矢が、再び私の胸を貫いてしまった!


 ひぃぃぃぃぃ! イケボ過ぎるっっっ!!


 思わず胸に手を当てて大きく深呼吸をしてしまう。射られた胸が痛い。空の上では恋のキューピッドが私を見てキャッキャっと無邪気に笑っている。


 くぅぅぅ。ただのつまらないセリフなのに、ドキドキしてしまうなんて・・・こんなの反則ですわ!


 こうして、先ほど心に渦巻いていた疑念は、きれいさっぱり吹き飛んでしまった。気がつけば私は、庭園に行こうというお誘いに、素直に首を縦に振っていたのだった。





 ガラスドームに囲われた温室は、予想通り日が差しているような温かさだった。周囲には色とりどりの薔薇が咲き誇り、花壇には季節にちなんだ満開の花々。まるで妖精の住む花園のようだと思った。

 幼い頃に読んでもらった絵本の中に、妖精たちが住む秘密の花園の童話があった。本のページには赤青黄色、様々な花が咲き乱れる絵が描かれていて、その花ひとつひとつに、妖精が住んでいたのだった。

 子供心に、とても素敵な絵本だと思った。何度も「読んで」と、お母様にせがんだ覚えがある。

 この庭園はその絵本に似た、見事な温室だった。きっとハロルド様のお母様の趣味に違いないわね。素敵。

 ロマンチックな気分に浸っていると、前を歩くハロルド様が立ち止まって振り返った。

 

「正直に言うと、この婚約に興味はなかった」


 ぐさり。


 鋭いつららのような言葉が胸に突き刺さる。ロマンチックな気分は霧のように消え去ってしまい、たちまち現実に引き戻されてしまうのだった。


 でもそりゃそうよね。

 親が勝手に取り決めた結婚だもの。

 それに私は彼と違って飛び抜けて美しいわけでもないし、田舎男爵の娘だし。


 そんな戸惑いを他所に、ハロルド様は言葉を続けた。


「だが君が妻になるなんて・・・」

「え? ・・・いま、何ておっしゃったのですか?」


 彼は返事をしなかった。代わりに私の横に立ち、左手を取った。そして驚いたことに、私の手の甲に口付けをしてきたのだった。


⭐︎今日の更新

7話→10時20分

8話→12時10分

9話→16時20分

もともと1話の話が10話まで膨らんでしまいました涙 長編小説を読み過ぎたせいかもしれない・・・

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