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おはようございます! 

今日から5月、そして3日からはゴールデンウィークの連休始まりです。

本日は五話投稿予定なので、長休みの空いた時間、お仕事のある方は休憩や通勤の合間など、少しずつ手軽に読んでもらえたら嬉しいです。

今日もみなさんにとって良い日になりますように⭐︎

 玄関を出ると外は静かだった。左右を確認すると、横に広がる庭園には人影はないように思える。私は息を潜めて歩くと、庭の木に体を隠した。

 このまま庭を通って門の外へ出ることを考えたら、なんだかワクワクしてきた。さながらスパイの気分だ。

 屋敷から出たあとの計画は既に頭の中で完成していた。門を出て真っ直ぐには進まず、左右に広がる畑へ忍び込み横断するのだ。すると、屋敷の裏手に出る。そこはクローバーの庭に繋がっている。ここまで来れば計画は成功!

 ミッション完了のご褒美はここからだ。草原で身を潜め、ダンスのレッスンが終わるまで、大自然の絨毯に寝転がり、大の字になって昼寝する。

 うん、完璧な時間の使い方だわ!


 再びあたりを確認して人がいないことを確かめると、少し離れた場所にある隣の木の影に移ろうとしたーー瞬間、我が家の門の前の景色が一瞬歪んだ。次いで、いきなり人影が現れた!

 あれは・・・ハロルド様だ!!


 しまった! もう討伐が終わってしまったんだわ!!


 急いで木の裏に戻り、半分だけ顔を出して彼の様子を窺った。銀髪の貴公子様は優秀な騎士なのだろう。隠れている私の存在に既に気づいているのか、歩いているにも関わらず、ものすごいスピードでこちらに近づいてくる。

 私は目を逸らせないでいた。だって距離があるにも関わらず、彼がキラキラしたオーラを背負って近づいてくるのだから。


 イケメンって遠くからでも輝いて見えるのね。凄いわ! 近づいてくると、更にカッコいいお顔がよく見える。あぁ、うっとり。


 魔法にかかったように見惚れていると、いつの間にか目の前まで迫っていたハロルド様に声をかけられてしまった。たちまち正気に戻って激しく後悔した。


 しまった!! すぐに逃げないといけなかったのに!!


「リーネ、会いたーー」

「ごきげんよう。そしてさようなら」


 風のように返事をし去ろうとしたーー瞬間、逃げる前に腕を掴まれてしまった!

 思わず彼の顔を見上げると、眉をひそめたハロルド様の、氷のような鋭い視線が私を突き刺した。途端に背筋が冷たくなる。


 そうだった。イケメンだけど、睨むと虎より怖い視線なんだった!


 彼は低い声音で問いかけてきた。


「リーネ、何を急いでいるんだ。君に会えなくて寂しい思いをしたのは、私だけだったのか?」

「お、お、お会いしたいと思っておりましたわ。寂しかったです。でも私、急いで行かなければならない所がありますの。だからこの手をお放しください」

「嫌だ。君の手を放したくない」

「ちょっと、そんな場合じゃないんですの! 放してください!!」


 振り払おうとしたが、全く動かない。

 クソっ!! さすが軍人!! 鍛え方が違うわ。いくら腕を振ろうにも、びくともしないじゃない!! 

 こうしてる間にも・・・


「リーネ様!!! お戻り下さい!!!」


 玄関ドアが開くとメイド達が出てきて、こちらに向かってくるのが見えた。

 ぎゃあ! ダンスの先生も一緒だわ!


 捕まったらまたレッスン地獄。目が潤むのを感じ、呼吸が乱れそうになるのを堪えた。けれどこのままでは、アンドレアス先生に捕まってしまう。あぁ、どうしよう。

 堪えきれず、呼吸が激しく乱れ、涙腺が緩んでしまう。


 うまいこと逃げて、レッスンをサボりたかったのに、サボりたかったのに・・・


「うわぁぁぁん! ハロルド様のせいで見つかってしまいましたわ!」

「? ど、どういうことだ? 泣かないでくれ、リーネ」


 号泣する私に戸惑って隙を見せたハロルド様。私の腕を掴む手の力が緩んだ瞬間、力任せに彼を突き飛ばし門の外に向かって逃げだした!


 後ろからメイド達が私に止まるよう叫んでいるのが聞こえたが、構わず無視した。


 だってダンスは大っ嫌いなの! 疲れるの! 同じ動きばっかりさせられて嫌なの! 面白くもないし、昔から大っ嫌い! 

 それだけじゃない!

 すぐ触ってくる婚約者も大っ嫌いよ!! 私の婚約者は冷血漢のはずなのに、どうして何度も会いに来るのよ〜〜〜!?


 全速力で畑を横断し、広い草原に着いた。ここは以前エヴァンジェリーナと遊びに来たクローバーの庭。

 あの日は友だちとのんびり過ごせて楽しかったなぁと思い返す。けれど今の私は逃亡者。

 いい加減に走り疲れて、日陰を見つけると大の字で倒れ込み、草原に体を委ねた。こうすれば、遠くからじゃ見つかりにくいのよね。


 目を閉じて自分の呼吸と胸の鼓動を感じる。

 照りつける太陽は空気と地面を熱くしていて、私は汗をかいていた。そこへ、一陣の風が吹き抜けた。風はその透明な手で草花をざああっと揺らし、私の頬を撫でて通り過ぎていった。

 少しひんやりとする。

 自然の中って、気持ちがいい。

 大きく上下する胸の動きを感じながら、早くなった呼吸を落ち着かせようと努めた。


 あぁ〜・・・このまま風になりたい。


 レッスンを抜け出しボ〜っと過ごすのは、最高の気分だった。

 うっすらと目を開けてみた。

 空は真っ青で、遠くに浮かんでいる薄く長い帯のような雲がゆるやかに流れていく。時おり、ちらちらと緑の葉が舞い落ちる。


 言葉を交わすわけじゃないのに、自然って心を動かす力があるのだもの。不思議ね。


 私が寝転んでいる、この草原。クローバーが広がるだけの何気ない風景なのに、絵画にしたら名画になるに違いない。


 きれい・・・


 このまま空を眺めながら、もう一度目を閉じて、ひと寝入りしましょう。


 ーーーーと、いきなり黒い影が落ち、私の心臓は大きく飛び跳ねた。

◾️今日の更新

 21話→11時10分

 22話→14時40分

 23話→16時40分

 24話→21時

 よろしくお願いします!


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