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おはようございます⭐︎

朝イチで恐縮ですが、この話は血が出てくるのでちょっとグロいかもしれません。しかも一話で終わらせるはずが、二話分になってしまいました。

本当は一つの話なので、まとめて投稿します。でも出血したとかの描写が苦手な方は、次話の後書きへ進んでください。内容を簡単に書いておきます!

 国境沿いの谷に到着した初日。罠を仕掛けて魔鳥達を迎え撃ち、その一群を討伐することに成功した。これでしばらくは姿を現さないだろうと考えたが、そんなに甘くはなかった。

 最初に討伐した魔鳥たちは谷に潜む魔鳥の一部に過ぎず、翌日になると別の仲間を引き連れ、兵士たちを警戒しながら畑の作物を狙うようになっていた。再度罠を張り迎え撃つも、数匹しかかからず、残りの魔鳥は谷奥へ帰ってはまた新たな仲間を連れて戻ってくるのだった。


 ハロルドは畑に舞い降りる魔物を観察しながら、左目の下に傷のある魔鳥が、毎度畑を荒らしに来ていることに注目した。おそらく、あの魔物が群れの統率をとっているに違いないと見当をつけたのだ。仮にあれが群れのリーダーだとすれば、その一匹を仕留めれば、しばらくの間は畑に悪さをすることはなくなるだろう。

 彼は自分の隣に立つ、中肉中背の茶髪の騎士ーー部隊の副隊長を務めるノートンに指示を出した。


「左目の下に傷のある魔鳥を優先して倒せ。あの魔物が群れを率いて人里へ来ている可能性がある」

「承知しました!」


 ノートンが兵士たちに指示を伝えた。一気に場の空気が張り詰める。

 彼は手にしていた剣を振り上げた。すると、畑のすぐ脇にある茂みに身を潜めていた弓兵たちが一斉に矢を放った。魔鳥の不意を打ち、作物をついばんでいた巨大なオレンジ色の鳥たちが何匹かくずおれる。が、既に予期していた魔鳥たちはクルリと上空へ浮上し、畑の上空をくるくると旋回していた。彼らは矢の嵐が収まるのを待っているのだった。ついに最後の矢を打ち終えてしまうと、再び地上に舞い戻り畑を襲いに来た。彼らは騎士団の予想よりも、ずっと賢い動きを見せていた。

 兵士たちの一部は腰に差していた剣を抜き、作物を狙い降りてくる魔鳥たちに接近戦を挑んだ。その一方で、ノートンは畑に降りてきたリーダー目掛けて、剣を抜き首を狙いに走った。が、リーダーの手下たちがすかさず彼の邪魔に入ると、簡単には首を討ち取ることができなかった。

 戦いは長期戦になりそうだった。その間にも、作物は被害を受け、畑は荒らされてしまう。

 ハロルドはその状況を静観しながら、畑から少し離れた茂みにも目配せをしていた。



 茂みの中には、兵士と魔鳥の攻防を窺う人影が複数人いた。彼らはこの畑の作物を懸命に育ててきた農民たちだ。

 自分たちが汗水流して育てあげた作物をみすみす食い荒らされてしまうことが、気が気でならなかったのだ。ヘルベリーから来た討伐隊からは手を出すなと忠告されていた。みな、彼らのことを信頼し、首を縦にふった。けれどやはり、黙って作物が荒らされる様子を、指をくわえて見ているのは我慢がならなかったのだ。 

 そこで魔鳥の襲撃の様子を見るために、農民たちは密かに離れた茂みに隠れ、武器を手に様子を窺っていた。彼らは緊急時に備え、日頃から弓の訓練を受けていた。

 一進一退の状況に痺れを切らした農民のひとりが、音を立てずに矢をつがえ狙いを定めると・・・矢が放たれた!


「キェェ!!」


 見事に命中。背中に矢の刺さった巨大なオレンジ色の体を揺らし、大きく広げられた翼。だが致命傷には至らず、ぶるぶると身震いすると、矢はあっけなく地面に落ちて転がった。怒りで震える魔鳥の眼は、矢の飛んできた茂みを捉えるや否や、雄叫びをあげ再び翼を広げた。威嚇しているのだ。

 農民達は蜘蛛の子を散らすように逃げたが、ひとりの男性が転んでしまった。その背に向かって、鋭い鉤爪が迫る。


「ギエェェェェ!!!!」


 鼓膜を貫くような悲鳴が響き渡った。だがその悲鳴は男のものではなく、魔鳥のものだった。

 男が襲われる数秒前に、白銀の甲冑を着た討伐隊員が、魔法を詠唱しながら剣を抜いていた。その剣身からは青い炎が噴き出し、炎を纏った剣が農民を襲う魔鳥の背を目掛けて、弧を描いたのだった。


 鮮やかなオレンジ色の体は、青い炎に包まれて落下した。地面にドサリと落ちたあとも、全身の羽根と皮膚を焦がす青炎に、もがき暴れる魔鳥。この世のものとは思えない断末魔の叫びは大気を震わせ、谷中の仲間に自分の最期を報せたのだった。

 魔鳥の絶命は想像を絶するもので、聞く者の肝を冷やした。あまりの光景に、襲われた農民は腰を抜かして動けずにいた。が、間に入り助けてくれた隊員に感謝の意を表するため、どうにか声を絞り出し、話しかけた。


「あ、ありがとうございます。おかげさまで助かりました」


 しかし彼は振り返ることなく剣を構えた。聞こえなかったのかと首を傾げていると、自分に駆け寄ってくる仲間の声が聞こえた。


「何やってんだ! 早く逃げろ!」


 農民仲間が血相を変えて助けに来たのだった。男は仲間に支えられながら、びっこをひいて逃げ始める。その途中、自分を助けてくれた隊員のことが気になり後ろを振り返った。


 討伐隊員の前には二、三匹の魔鳥たちが飛びかかろうとしており、さっと血の気が引いた。しかし男が恐怖したのは、鳥たちに対してではなかった。

 農民を助けた隊員は正面から襲いかかってくる鋭い鉤爪の一撃を避けたーー瞬間には次の動きを見切り、鮮やかな羽毛に守られた体を切り捨てていた。すかさず彼の背後にまわり命を狙う、もう一匹の魔鳥。振り向きざまにその首を刎ね飛ばし、左側から突っ込んでくる別の魔鳥の鋭い嘴を、体を逸らして避けた。刹那、すれ違いざまに腹をひと突きで貫いた。引き抜いた瞬間に血飛沫が飛び散り、全身に血を被ってしまった。


 農民の男は、次々と魔鳥の命を奪う隊員に対し、ある種の恐怖を感じ取り、体が凍りついてしまうのだった。

 気がつくと、仲間に体を引きずられていた。そこでようやく異臭に気づき、鼻と口をパッと覆った。死骸から距離があるにも関わらず、鼻の曲がるような獣臭と鉄の混じった血生臭い匂いを嗅いでしまったのだった。


 魔鳥に狙われる前は、あんなにたくさんの野菜が育っていたのに・・・


 彼の脳裏には青々と茂る葉と、その葉を食べてしまう幼虫を駆除する仲間の姿が浮かんでいた。男たちの耕す畑は、命を育む土壌であり、生活に直結する大切なものだった。そこには、いつだって緑が青々と茂っていた。だが今は、死体が転がり血と悲鳴が響き渡っている。農民たちの大切な畑は、瞬きする間に地獄と化してしまったのだった。

 変わり果ててしまった畑には、地獄の底から這い上がってきたような血まみれの男の姿があった。返り血を頭から浴びても微動だにせず、敵の息の根を完全に止めることに全神経を集中し、修羅の如く剣を振り下ろし続けている。もし声を掛ければ、自分まで斬り殺されかねない気迫が充満していた。


 おっかない。これが近衛騎士団の討伐隊なのか。泣く子も黙る矛の騎士団という噂は、やはり本当だった。


 男は腹の底から恐怖を覚えながら、仲間の支えのおかげで、どうにかその場を逃げ切ることができた。


◾️今日の更新予定

 16話→7時20分

 17話→10時10分

 18話→12時20分

 19話→17時50分

 今日はハロルド様づくしの日になります。よろしくお願いします⭐︎

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