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戦後処理

リグルーの最後の言葉は

「なあ、村に行ったら助けてもらいたい奴いるんだ。あんたなら言わなくても分かるだろうよ。それと、俺のクビは、化粧してくれよ。女だからあるだろう?」

 であった。


「・・持って来てないね。さよなら・・だね」


 パンと銃声が響く。そして、魔法袋から、刀を取り出し・・



 ☆☆☆




「な、何だ。何だ。首だ。あの女、リグルーの首を掲げてこっちくるぞーーー」


「「「負けたのか?」」」


 村に残った10名ほどの傭兵と、10人の見習いは驚愕する!


 首を取る。残酷な行為だが、この場合「ハウンドドッグ」団の残留組に負けを決定的に印象づけることに成功した。これ以上の不用意な戦闘は双方にとって無意味だ。


 痛めつけられていた男達や隠れていた村人達は、クワや鋤を持って、傭兵達を取り囲んだ。


 今までの仕返しと言わんばかりに、石を投げる。


 その時、一人の老人と少年が割って入る。


「おい、石を投げるな!」

 この老人は傭兵団の金庫番で、片足が、木の粗末な義足で戦傷者だ。もう一人の少年は身なりがいい。

 少年は小さな商店の息子で、冒険がしたくて、傭兵団に入った変わり種。計算が出来るので、金庫番の老人と一緒に、村の「ハウンドドッグ」団の本部にいた。


「今までの恨みー」投石が始まったが、銃声が響いた。パパパパン!

アリサが銃を上に向けて空砲を撃った。


「あ、救世主様、有難うございます!」

「お手を煩わせるまでもなく、こいつらは、私たちに任せて下さい!」


 村の女神教の神父と、シスターマインと一緒に現れたアリサは


「石を投げてはだめ・・貴方たち、私に依頼料払えるの?奴隷に売るから・・・傷つけちゃだめだよ」


「「「・・・・・そうだった」」」


 老人はアリサに対面する。

「ワシはワシムという者だ。そうか、リグルーが死んだか。なら、仕方ない。団の金はここにある。残った者は、この坊や以外は、身の代金は取れない。この坊やの親が金を払うまでこの村においてくれ下働きをさせてもいいが、飯は食わせてくれよ・・その他は賠償奴隷だな」


 傭兵達は下をむく・・今まで自分たちがしようとしたことだから先が分かる。


「そう・・合法な奴隷商人に売ると約束するわ・・」


「あの~、私、奴隷商でして~」


 ハゲた中年の男性が奴隷商の鑑札を見せた。彼は奴隷商人で、村人達を引き取りに来ていた。

 リグルーは魔族との大戦が終わったので、ここの村人を追い出し、この村に定住しようとしていた。


 ワシムと商店の息子以外は、皆、奴隷商に引き取られて行った。


「それで、ワシは殺してくれないか?ワシは、足を負傷してから金庫番として、リグルーの世話になっていた。ワシは奴隷として売れん・・」


「ダメね・・・貴方は、まだ、用がある。転生者の荷物を見せなさい・・」




 ・・・・

「・・・これは・・」

 バックの中には、生活用具などしか入っていなかった。

(何故、教本(マニュアル本)や、銃の手入れ具はないのだろう・・)


(それに・・このタイプの銃は、風魔法「えあーすぷれー」が必要なものね。照準器は、動かした様子がない・・手入れ具と教本は・・召喚出来ない・・謎ね)




「名前は、ヤマダダイキさん、ダイキ・ヤマダね・・あちらの世界では学園に行っていたみたい・・・・」

「読めるのですか?」

「ええ、少し、神父様、銃も含めて、埋葬お願いします」「ええ、墓碑に刻ませます」


「ワシムさん・・貴方、鐘つきを・・しなさい・・神父様、この村以外に手配・・お願いね」

「はい、アリサさん」

「ワシは・・生きていていいのか?」「奴隷として売れない・・でしょう?」


「討伐証明は神父様に書いてもらうから・・首を埋葬してあげなさい・・ね」

 アリサはリグルーの首をワシムに返した。


「おおおーー有難い。感謝する」


 ワシムは片足を失って傭兵を出来なくなってから、リグルーの世話になっていた。いわば恩人。

 泣きながら膝を付いた。


(助けたい人って、この人だったのね・・降伏の作法を知っているわ)




 ☆☆☆


「ふん。使えない転生者のダイキのせいで、大変なことになったけど、最後に勝ったのは私よ。そこの新しい転生者、私に仕官しなさい!いい、この場は私、スペンサー家のルイーザが仕切るわ!」


 後から、出てきたルイーザは、奴隷商人に、乙女の令嬢価格で売られる寸前だった。

 助けられてから、息を吹き返した。


 その時、騎馬が一騎来た。騎士だ。


「鉄ツブテ使いのアリサ殿は、こちらか?」


 馬から下りると、騎士は、ルイーザではなく、アリサの前に膝を付き礼した。


「貴方、主人は私よ!」


「アリサ殿、まずはこれを」

 騎士が袋に入っている何かを見せる。ルイーザの義兄の首だ。


「・・え、誰?・・私・・いらないのだけども」


「領主より、この村の件は、この者が勝手にやったこと。当方は、村奪還の軍を起こすべく動いていたとの伝言でございます。決して、アリサ殿と敵対する意思はなし!とのこと」


「あ、そう・・」

(対応早いわね)


 いくら、平民に「じんけん」が無いとは言え。簡単に見捨てたりすると、家名に傷が付く。最悪、一揆を誘発し、国王から統治不十分として爵位を取り上げられる微妙なバランスがある。アリサが来たことによって、風が民に向いているとして、領主は動いた。


 本当の思惑は、領主本人に聞くしかないが、アリサは一冒険者なので、領主討伐など、元々する気もない。

 それほど、アリサが恐れられていたとも言える


「ルイーザ様は、この村の女神教会で御預かり。迎えを寄越すので、北部の修道院にて修行せよとのことです!」


「何でよーー」


「不用意に・・戦場に出て・・使用人を危険にさらせた罪・・・ってことね」


「それと、アリサ殿、歓待をしたいので、館に来られたしとのことです」


「・・・絶対に嫌・・じゃなくて・・用があるから無理・・と伝えて下さらない」


「畏まりました」

 騎士は、アリサに教えられた通り、ワナのある草原を避けて、本領へ戻っていった。




 ・・・・

 その後、草原のワナの除去や死体の埋葬、鎧や武器の接収を、村長の指示の元行い。


 転生者の埋葬が、アリサと神父、シスターマインと伴に行われた。


「村を・・救おうとした行為に・・嘘はないはずね・・どこの神が転生者を・・この残酷な世界に・・呼び寄せるの・・魂はあちらの世界へお行き・・ね」


 3人だけの寂しい葬式であった。


最後までお読み頂き有難うございます。

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