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ワタシの中心でアイを叫んだケダモノ


 「何か昔話が続くわね」


 「何一つ面白いことが起きないですからねぇ」


 「しかも、最終回!」


 「ファッ……」


 「最後くらいはシリアスにしたいみたいよ」


 「身辺整理ですか……」


 「何かヤな言い方ね」


 「冗談ですよ! ジョーダン!」


 「この子にシリアスなんて無理だろうけど、黙って見てやろうか」


 「最後ですからね」




 つれづれダイアリーの突然の最終回です。


 私は高校1年から、文芸部に入った。


 文芸部は部員の三年生が受験のため、早々に引退したので、全部で5名。


 女の園で活動内容はほとんど読書。


 作家を目指す子は作品を執筆しては先輩や顧問に指導を仰ぎながら、文芸賞に応募する。


 斯く言う私も推理小説家を夢見る青二才だった。


 文芸部内は純文学一色であり、推理小説などは異端扱いであった。

 (ρω;)悲しい……。


 太宰ラヴな先輩たちには口が裂けても「横溝ラヴ」なんて言えなかった。


 それでも私は推理小説家になりたくて、暇を見つけては執筆に励んでいた。


 そんな夏休み中の合宿のことだった。


 下っ端の1年の私、違うクラスのミカちゃんとサキちゃんは先輩たちへの食事を作ることになった。


 女子カーストの最底辺の私たちには当たり前のことだった。


 ((((゜д゜;)))パイセンが怖かったのだ。


 家庭科室を借り、料理を開始する。


 メニューはカレーライスが伝統らしい。


 しかし、やさぐれ女子の私はそれを破棄し、革命を画策した。


 ρ(`∀´*)あたしゃヤルよ!


 与えられた予算からメニューを考え、スーパーで食材を調達。


 ミカちゃんは料理をあまりしたことがないと言うが知るか! ヤれ!


 学校へ戻り、いそいそと準備に入る。


 サキちゃんはお菓子が作れるというので、デザート担当。


 ミカちゃんはオロオロしているので、教育開始。


 メニューは私の得意料理を選択した。


 私はミカちゃんに玉ねぎとニンジンを刻むように指示する。


 みじん切りくらいなら、サルでも出来る。


 ミカちゃんは何を血迷ったか、いきなり包丁を構えてニンジンを一刀の下に両断した。


 ミカちゃん! 皮は?


 マジか?!( ̄□ ̄;)!!


 サキちゃんが素早くミカちゃんをフォローし、ミカちゃんに野菜の扱い方を手取り足取り指導した。


 スマぬ……任せた。


 私は深目のフライパンに油を入れ、ササミを一心不乱にミンチにし、牛豚の合挽き肉に混ぜる。


 ナツメグも忘れない!


 ミカちゃんが楽しげにみじん切りを始めたのを見届けたサキちゃんは、デザート作りを開始。


 私はミカちゃんのみじん切りをミンチに投入しながらタネを作る。


 燃えて来たぜー!

 ρ(`д´;)/


 私がこねたタネをミカちゃんに一口サイズに丸めてもらう。


 スプーンを使ってやることを教え、次々に片栗粉の上で転がす。


 その肉団子を熱くなった油で泳がせ、揚がった物の油を切る。


 その間に深い鍋に湯を沸かし、パスタをミカちゃんに一任する。


 カットトマトのホール缶をフライパンに入れて、塩コショウをしながらトマトソースを作る。


 コンソメも入れるの!


 ソースにミートボールを入れて絡めていると、パスタが茹で上がる。


 ミカちゃんにパスタを湯切りさせて、オリーブオイルを絡めてもらい、その間にレタスを千切らせる。


 サキちゃんのデザートが完成したので、キュウリの輪切りを頼み、私はソースに生クリームを混ぜ、パスタに絡めて盛り付け開始。


 サキちゃんにキュウリの輪切りとレタスを混ぜ、カリカリベーコンと和えたサラダを盛り付けてもらっている隙に、ミカちゃんには伝令を頼む。


 私は仕上げに乾燥パセリをふりかけて終了。


 サキちゃんはサラダを盛り付け、プチトマトを添えて完成させた。


 ミートボールスパゲッティとサラダ、デザートにはフルーツヨーグルト(バニラホイップ乗せ)だ。


 (´∀`A)ふぅ……。


 スープを忘れたが、サキちゃんと相談し、カレーライスにスープは付かないから良しとすることにした。


 各席に料理を並べているところに先輩たちが到着。


 私たちに緊張が走る。

 (((;゜д゜)(゜д゜;)))


 無言で席に着く先輩たちが食べ始めるのを見届けてから、私たちもようやく食事にありつく。


 (^∀^;)割りと旨いな!


 私もサキちゃんも安堵のため息を吐いた。


 ミカちゃんは自分があまり役に立てなかったみたいな(´;ω;`)な顔をしていた。


 私とサキちゃんで、三人で作ったから美味しく出来て良かったと言うと、



 (*^∀^*)~♪


 になったので、三人で仲睦まじくキャッキャウフフしていると、部長から三人が呼び出される。


 何か粗相を?


 ((((゜д゜;)))戦慄!


 ガクブルしながら部長の元へ行く。


 「私共に何か不手際がございましたでしょうか?」


 サキちゃんが恐る恐る問い掛けると、部長はニコリと笑って、


 「スズキ(サキちゃん)は何か書いてるの?」


 「いいえ、何も書いてません」


 「じゃあ、書きなさい。マツオ(ミカちゃん)は?」


 「私も書いてません」


 「アンタも書きなさい。コヒナタ……」


 「ふぁい!」


 緊張のあまり、変な声で「はいっ」を噛む。


 「アンタのは読ませてもらった。よく書けてた! 他のもあったら出しなさいよ? 読みたいから」


 (@゜∀゜@)エ゛ッ?!


 何で知ってらっしゃるんですか?


 部長は私の問いに笑顔で答えた。


 「アンタの席に置いてあったのよ。推理小説なんてあまり読まなかったけど、面白いじゃない」


 (//∀//)カァ~!


 読まれちまった!


 オラお嫁さ行けねぇ!

 (*/ω\*)


 顔から火が出そうなほど真っ赤になった私に、部長がノートを返しながら、


 「純文学ばかりが文学じゃないんだよ? こそこそしないで堂々と書きな!」


 (*゜∀゜*)姐さんっ!




 それから文芸部に新しい風が吹いた。


 私は部活動で堂々と推理小説を執筆出来るようになり、部員も推理小説を読むようになった。


 この部長の改革はそれに留まらず、顧問以外の先生に掛け合い、私たち部員に短歌を学ばせた。


 心情や場景を端的に表現することで、冗長になりがちな文章を改善させるための秘策だ。


 今までダラダラと読書に耽っていた我々部員に喝を入れたのだ。


 瞬く間に、文芸部に短歌ブームが到来した。


 すると、何と言うことでしょう!(ナレーションはサザ〇さんで)


 葬儀場のようにジメジメしていた部室は、キラキラと活気溢れる部室に!


 陰気なヤツらと蔑まれた文芸部は、笑顔溢れるパラダイスになったのです!


 もはや、匠の所業!


 サキちゃんやミカちゃんも作品を執筆するようになり、文芸部は一目置かれるようになった。


 部長は女神と崇められ、写真を飾ろうとまで話が盛り上がった。

 (部長が全力で拒否)


 これが世に言う『キョウコ(部長)の改革』である。


 ρ(`∀´)/テストに出るぞ!(ウソ)


 それからというもの……コミュ障と烙印を捺されていた部員たちにもチラホラと春がやって来た。


 私のことは訊くな!

 (´;ω;`)察してよ。



 時が過ぎ、皆が進級して私たちにも後輩が出来た。


 部員全体の士気も上がりまくり、各々は作品を執筆していた。


 サキちゃんは純文学、ミカちゃんは恋愛小説、私は推理小説だった。


 そんな中、顧問が文学賞の応募を募った。


 私は辞退するつもりでいたが、部長が部員全員応募の命令を出した。


 (゜∀゜;)何ですって?


 私はやんわりと部長に辞退したいと申し上げだが、


 「ダメ! 絶対!」


 (´д`;)鬼や…鬼がおる……。


 「ヒナ! 宮部先生も推理小説だけ書いてる訳じゃないんだよ? 良い経験になるから書いてみな」


 デモデモダッテ……。

 (´;ω;`)


 「私に逆らう気? 良い度胸してんじゃない」


 整った部長の顔が劇画調に変わる。


 書きます……。

 (´;ω;`)


 部長の殺気立った目に、すっかりビビった私は執筆することにした。


 だってアノ目はスナイパーの目だったんだもん。


 それからは血を吐く思いで執筆した。


 書いていた推理小説を休筆し、初めての純文学に。


 しかし、私に書けるはずも無く、締切は音もなく近づいて来た。


 先輩に添削指導を一度も受け無かったのは私だけ。


 無情にも締切まで1週間を切った。


 ヤバい!(゜д゜;)


 この時、私の中の悪魔が囁いた。


 どうせ推理小説しか書けないんだから、推理小説を出しちゃえよ!Ψ(`∀´#)


 (@゜∀゜@)それイーね!


 あの時の私はどうかしてたんだ……。


 書きかけの推理小説を再開し、締切ギリギリで完成させた。


 すぐにコンビニでコピーを取り、封筒に入れて顧問に渡した。


 私が最後だった。


 (´∀`A)間に合った。


 部長がめちゃんこ褒めてくれた。


 その時は舞い上がってたんだよな。


 数ヶ月後、私は顧問に呼び出しを喰らう。


 何でも私の作品は選考外だったため、連絡が入ったらしいのだ。


 めちゃんこ怒られた。


 ……泣いた。


 部室に戻ると、噂はもう皆に知られていた。


 サキちゃんもミカちゃんも慰めてくれたけど、心の何処かで笑われてる気がしてた。


 先輩も笑ってた。


 後輩もジャンルテロだと陰で言ってたらしい。


 でも、部長だけは決して笑わなかった。


 寧ろ……。


 「皆、笑ってるけどさ。普通はジャンルが違うからなんて連絡なんて来ないんだよ?」


 部長が部員全員に静かに語りかけた。


 「確かに純文学作品が対象だった。ヒナも悪い! でも、これは対象外だってわざわざ連絡くれるほど、ヒナの作品は良かったんだと私は思う。

 アンタたちにそれだけの作品が書ける?」


 部長の言葉で、部員皆が黙った。


 私は嬉しかった。


 部長だけは私を認めてくれてたんだ……。


 それだけで良かった。


 私は部長に呼び出されて謝られた。


 無理強いしたことや作品のチェックを怠ったことを頭を下げてくれた。


 (´;ω;`)部長……。


 その後、私は執筆を止めて、校正の鬼になった。


 執筆が怖かったんだ。


 尊敬する部長に頭を下げさせてしまったことが、私にはショックだったから。


 部長たちが引退してからは、後輩たちの校正の傍らで短歌に没頭した。


 皆が執筆している中で、私は孤高の歌人になった。


 この頃にサイトに入ったんだっけ。


 ずっと読み専してたな。




 部長が卒業する時に、私は呼び出されて、部長と熱い抱擁を交わした。


 部長! ありがどうございまじだ……。

 (/  \);`)ひしっ!


 部長の腕の中で嗚咽する私の頭を、部長は優しく撫でてくれた。


 「ヒナ、作品を書くのを止めちゃダメだよ……」


 部長が私だけにくれた私にだけの答辞。


 この言葉は、今も私の宝物になっている。




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