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【3:楽園の条件】

 



 こんなにも。こんなにも空虚だと言うのに。







【3:楽園の条件】







 それだと言うのにきみたちは、滑稽にも求めてしまうのだね。







『箱庭』と呼ぶべきかもしれない。




 棲まうモノは《外》を気にしない。なぜなら、この《保護区域》たる館には彼のモノたちのもっとも大切なモノが在るからだ。大事なことは、《外》では[異物]と化してしまったから。




“壊れ掛け”。それは何を指すのだろう。







 モノか。




 時間か。




 それとも、




 関係?




 もしくは




 記憶?




 でなければ




 ココロ




 とか─────?







「ムクイ」



 

 呼ばれた先には玉響が立っていた。僕は黙って、口を引き結んだまま待った。

 僕を呼び止めた玉響は、通常と違い、どこを見ているのか疑いたくなるような焦点のぶれた瞳ではなく、はっきりと意志を示す眼。


 まったく同じ容姿の別人みたいに立つ彼はまるで気品と威厳を併せ持つ聡明な青年で。


「……」


 彼本来の姿を思い出す────が。




「……『薬』が切れ掛けてる?」


 僕は呟く。これは彼に投げた問いで在り自分だけにとどめる独り言だった。




 彼の正気は、刹那が望まない。


 あの強く、だからこそ儚い少女は望まない。




「玉響」



 

 

 ゆえに。




「カラさんのところへ行かなくてはね」


 僕は彼に手を差し伸べる。知ってる。




 玉響も、彼も、知ってる。刹那が望まないこと、何より。




「……ああ」




 彼自身が望まない。




 彼が、刹那が望むこと。この館は叶えてくれるけど。







 そのためには正気をかなぐり捨てる。


 歪んでも、『壊れない』ために。




 それがここ、この《保護区域》の、この館に棲まうモノの、




 唯一にして最大の条件なんだから。







 壊れ掛けているのは、







 結局、『何』?






 

 【→It continues to  傷痕と亀裂 .】

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