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3話 いや、キモすぎるだろ

お読みいただき、ありがとうございます。


最初のうちだけ1日3話投稿とかの方が、伸びは良いんですかね…?



毎日投稿です(^^)

現在四章の終盤までストックがあります、

「……このまま、村に戻るか」


 俺は、地面に座り込んだまま、ぼそりと呟いた。


 肩の傷はまだ痛む。けれど、止まっているわけにはいかない。


「殿、提案があります」


 御座(みくら)が、低い声で言った。


「我ら三体のうち、誰かの上に乗っていただきたい」


「……は?」


「殿を歩かせるわけにはいきません。それに――」


 柵が、ちらりと森の奥に視線を向け、御座に頷く。


「夜になれば、夜行性の魔物が動き出すでしょう。今のうちに、森を抜けた方がよろしいかと」


 ……正直、めちゃくちゃ嫌だ。魔物の上に乗るって、どういう状況だよ。


 でも、確かに辺りはもう暗くなりかけている。さっきの熊型魔物のことを思えば、悠長にしている時間はない。


「……わかった。じゃあ、ちょっとだけ」


 俺は、恐る恐る、御座(みくら)の上に座った。


 次の瞬間。


「うわっ!?」


 ふわり、ドサッ。ふわり、ドサッ。


 御座が跳ねるたびに、俺の体は容赦なく上下に揺さぶられる。最悪の乗り心地だ。内臓が全部ひっくり返りそうになる。


「ちょ、ストップ、ストップ!!」


 御座が止まる。三体が、近くで何やら相談を始めた。



「……殿は、揺れに弱いようだ」

「足が速いのは俺っす!でも、乗せるのは向いてないっすね」

「俺が殿を背負って、走れば問題ない!!万事!解!決!!」

「アンタのどこに座るんすか…」





 しばらくの相談の後、三体は何かを決めたらしい。


「じゃあ、いくっす〜♪」


 鍬が言うと、三体が動き出した。


 太い「足」を持つ柵が、地面に四肢をつけて、まず体勢を整える。


 その上に、御座が――まるでクッションのように、ふわりと乗る。


 そして、鍬の腕のような胴体が、柵と御座、両方の体に巻きつき――二体を、しっかりと固定した。


「……これは」


 俺は、出来上がった()()()を見て、言葉を失った。


 足の速い柵が歩き、その上に乗った御座が俺を背負い、鍬が全体を縛って繋いでいる。三体が一体になった、奇妙な生物としか言いようのない形だ。


「いや、キモすぎるだろ」


 思わずツッコミが漏れる。


 けれど、いざ乗ってみると――揺れはほとんどない。柵の足が地面を捉える振動を、御座の体がふわりと吸収してくれる。


「……乗り心地はいいな」


見た目と乗り心地のギャップに納得がいかない俺は、胡座をかき、腕を組みながらつぶやく。


「光栄っす!」


 鍬が、嬉しそうに声を上げた。


 俺たちは、その奇妙な三体のまま、夜の森を進んでいった。






 村が見えてくる頃には、辺りは完全に夜になっていた。


 村の入り口には、松明を持った、村の男たちが、ずらりと並んでいた。


 張り詰めた空気の中、手には、鍬や鎌、猟銃のようなものまで持っている者もいる。



「……あれ?」


 俺は、三体の上から、その光景を見下ろす。


「待って、待って。これ、説明すれば大丈夫だよな?熊型の魔物を倒したこと、俺の力のこと、ちゃんと話せば――」


 俺は、三体に乗ったまま、村の入り口へと近づいていく。


「みんな、聞いてくれ!俺は――」


 その声に応えるように、男たちが、一斉に身構えた。


 松明の明かりに照らされて、俺の足元――三体が組み合わさった、奇妙な巨体が、はっきりと浮かび上がる。


 誰かが、息を呑む音が聞こえた。


「……ひっ」


 神官と、村の長老が、人垣の前に出てくる。


 二人とも、震える手を、俺に向かって突き出した。


「奴は……」


 神官の声が、震えている。


「奴は……この世に災厄をもたらす者だ……!」


 長老が、同じように指を突き出しながら、後ずさる。


「魔物を従え、乗りこなす者など……人ではない……!」


「いや、違う、聞いて――」


 俺は、御座から降りようとした。


 その時、人垣の中に――弟の顔が見えた。


 今朝、祝福の儀に出かける俺を、羨ましそうな目で見送ってくれた弟。


「兄さん、行ってらっしゃい!絶対すごい魔法もらってきてよ!」


 あの時の、笑顔。


 今、その顔は――恐怖と、失望で、ぐにゃりと歪んでいた。


 (まもの)を、見ている。


 あの目は――もう、兄を見る目じゃない。


 その瞬間、俺は、理解した。


 もう、戻れない。


 村にも、家族にも――俺の居場所は、ない。


「……そっ、か」


 俺は、それだけ呟いた。


 声を出すと、不思議なくらい、すんなりと言葉が出てきた。


「わかった。もう…いい」


 俺達は、ゆっくりと踵を返す。

指示を出さなくても汲み取ってくれるなんて、全く、優秀な魔物達だな…。


 背後で、誰かが何かを叫んでいる気がしたが、もう、聞こえなかった。


 三体は、何も言わず、俺を乗せたまま、森の闇の中へ――静かに、戻っていった。

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