2-11話 かみさまは、かしこいでち!
みんなの元に戻って、護符を掲げた。
「これを持って移動すれば、見つかりにくくなる。傭兵団に気づかれずに北東の森まで行けるはずだ」
「おお!!さすが殿でち!!」
「かみさまはかしこいでち!!」
小鬼族たちが、わあわあ盛り上がった。
「さすが主よ!!用意周到よな!!はっはっはっは!!」
「流石殿っす!!」
「……よくできました」
御座だけが、どこか含みのある言い方をした気がしたが、気のせいだろう。
「よし、出発だ!!北東の森へ!!」
「「「でちーーー!!!!」」」
大行列が、動き出した。
四百体を超える小鬼族が、どたどたと森を進む。
俺は、護符を握りしめながら先頭で、例の如く大樹に持ち上げられている。
大樹を生みだしてから、移動の際はこのようにしている。あの日から、三体合体の魔車には乗っていない。向こうのほうが乗り心地は良かったし、見た目にも慣れてきていたんだがな。小鬼族に見えるようにと、この方法になった。
「殿を乗せるお役目は、果たし終えました」と御座は言い、あの日から4分の1サイズに縮小している。そんなこともできたんだな、御座。
それは、そうと。改めて少し黄ばんだ護符を見る。
これで大丈夫のはずだ。隠蔽されているはずだ。絶対に大丈夫なはずだ。
……三十分後。
「あ」
森の木陰に、人影が見えた。
こちらを、じっと見ている。
「……人、だよな?」
人影は、明らかに固まっていた。俺と目が合った瞬間、顔が青ざめていくのが分かった。
若い男だ。一瞬、傭兵かな?とも思ったが、一人でこんな辺境の地にいるはずもない。
俺も固まった。
若者も固まった。
……護符、全然効いてねーー!!!!!!
「い、隠蔽できてないんだが……!!」
「殿!!」
その時、後ろからどたどたという音が近づいてきた。
「かみさまをまもるでち〜!!!!」
「てきがいるでち!!!」
「やっつけるでち!!!!」
小鬼族の大群が、わあっと前に出てきた。
四百体が、一斉に若者の方へ向かって——。
「待て待て待て!!! 暴れるな!!!」
俺の制止も虚しく、小鬼族は「かみさまをまもるでち!!」と大騒ぎになった。
若者は、目の前に迫る四百体の小鬼族を見て、顔から血の気が引いた。
「ま、魔雪崩だ!!!!!!」
絶叫しながら、木の上によじ登った。
四百体の小鬼族が、その木の周りを取り囲む。
「降りてくるでち!!」
「かみさまのてきでち!!」
「……降りられるかああああ!!!!!!」
収拾がつかない。完全に収拾がつかない。
「ギコ!!!」
「でち!!」
ギコが、人垣をかき分けて前に出てきた。
「笛で、みんなを落ち着かせてくれ!!」
「まかせるでち!!」
ギコが、指を口に当てた。
その時、近くにいた小鬼が三体、ギコの周りに集まった。
「ますでち!!」
「ますますでち!!」
「もっとますでち!!」
増幅魔法の使い手だ。三体が、順番にギコの魔法に重ねがけをしていく。
倍、倍、倍——。
「え…、それって大丈夫か…??」
君たちにはお願いしてなくない???
大丈夫か、大丈夫じゃないかなんて、そんなの考えなくったって分かる。大丈夫じゃない。
俺の声は、間に合わなかった。
ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ——————————————。
最後まで読んでいただきありがとうございます(^^)




