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2-10話 お兄さんは良い顔してるから、特別に


「ちょっと行ってくる」


「殿、お一人では」


「大丈夫。集落に人がいたら、大行列連れてったら騒ぎになるだろ」


 御座(みくら)は、一瞬だけ間を置いて、


「……お気をつけて」


 と言った。


 俺は、四百体超を森に残して、近くの小さな集落へ向かった。


 目的は一つ。最北東の森に、廃村や廃墟の情報がないか、聞き込みだ。


 集落は、こぢんまりとした農村だった。門番もおらず、住人が数人、畑仕事をしている。


 俺は、できるだけ自然な顔で通りを歩きながら、住人に声をかけた。


「すみません、ちょっと聞いてもいいですか。この先の北東の森って、何かあります?」


「北東の森?」


 農夫の老人が、首をかしげた。


「さあ……あの辺は、深い森が続いてるだけじゃないかな。あまり人が近づかない場所だよ」


「廃村とか、廃墟とか……聞いたことないですか」


「廃村ねえ……」


 老人は、しばらく考えてから、首を振った。


「聞いたことないねえ。昔から何もない場所だって言われてるよ、あの辺は」


 そうか。情報なし、か。


 礼を言って、通りを歩き出した時だった。


「おや、旅のお兄さん。ちょっとちょっと」


 路地の角から、()()()()()()がした。


 振り返ると、小さな台を置いた老人が、にこにこしながらこちらを見ている。


 ……見覚えのある、笑い方だ。


 でも、顔は違う。背格好も、少し違う。


 ……まあ、いいか。


「なんですか」


「旅のお方が、北東の森のことを調べているとか。ちょうどいいものがありましてね」


 老人は、箱の中から、古びた紙片を取り出した。


 黄ばんだ紙に、奇妙な紋様が描かれている。


()()()()()ですよ。持っている者の一行を、見つかりにくくする効果がある」


「……一行、というのは?」


「持ち主と、その仲間。まあ、どれだけ大人数でもね」


 俺は、護符を見つめた。


 ……大人数でも、隠蔽できる?


 三百体の大行列を、誰にも気づかれずに移動できるなら——。


「いくらですか」


「そうですねえ。お兄さんは良い顔してるから、特別に」


 告げられた値段は、なかなかの金額だった。


 高い。絶対高い。


 …


 …


「ください!」


 俺は、財布を開いた。


 今回は少し怪しんだ。でも、大集団を隠蔽できるなら、それだけの価値はあるかもしれない。老人のセールストークも、妙に説得力があった。


 まあ、きっと大丈夫だろう。

察したかと思いますが、あの露店の爺さんです

今後も登場します。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

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