2-4話 ………。
騒ぎを収めるのに、数時間かかった。
魔物が暴れたわけじゃない。四体は、むしろ終始ご機嫌だった。それでも、町の人々が悲鳴を上げて逃げ回るのを止めることはできなかった。
結局、町長らしき人物に呼ばれて、事情を説明する羽目になった。
「……つまり」
町長は、疲れた目で俺を見た。
「その魔物たちは、あなたの……連れ?」
「……まあ、そう、です」
「危害を加えるつもりは、ない?」
「ないです。絶対ないです。誓います」
町長は、しばらく黙っていた。町長の目が、四体に向いた。腕を組み、四体と俺を交互に見る。
「……使役魔法、か」
独り言のように、呟いた。
魔物を屈伏させ、操る使役魔法。一般に知られてはいるが、使い手は多くない。そして、魔物との邂逅が死を意味するこの世界では、使役魔法の使い手であっても、町に魔物を連れ込むなど、普通はあり得ない話だ。だからこそ、今回の騒ぎになった。
町長は、そう判断したらしかった。
俺は、何も言わなかった。
訂正する理由も、今はない。
「……今回は見逃します。ただ」
町長の目が、四体に向いた。
「その魔物たちを連れての入町は、ご遠慮いただきたい」
事実上の、出禁だった。
町の外に出て、草原に腰を下ろした。
夕日が、地平線を赤く染めている。
四体が、俺の周りに、しれっと座っている。
「……お前ら」
「はい」
「はいっす」
「なんだ、主よ」
「……」
怒る気力も、もう残っていない。
「町や村には、近づくな。いいか。絶対に」
「「「「はい」」」」
四体が、神妙な顔で頷いた。
大樹だけが、蔦をもじもじさせながら言った。
「……主よ。その手の丸い石、何だ?」
俺は、ポケットから、きらきら光るビー玉を取り出した。
「幸運をもたらす宝石、らしい」
沈黙。
「……殿」
御座が、静かに言った。
「それは、ただの硝子玉です」
「……」
「樹海の外では、よく売られています。旅人向けの、定番の土産物です」
夕日の中で、ビー玉がきらきらと輝いている。
「…………」
俺は、ビー玉を握りしめた。
「……誰にも言うな」
「「「「……はい」」」」
草原に、硝子玉のように輝く夕暮れが落ちていった。




