12話 誰が一座だ
「もういいって」
俺は、何度目かも分からないほど、謝罪を受け入れていた。
「うおおおおおお!!!」
柵は、咆哮をあげるように男泣きをしていた。
うるさい。夜の森に響いてるぞ。
「お前らが来てくれたから、助かったんだって。だから、もういい」
「殿ーーー!!!!」
「泣くな」
柵が、嗚咽をこらえながら、ぐっと顔を上げた。目が真っ赤だ。
そんな三体と俺のやりとりを、大樹は少し離れたところから眺めていた。
「……ふむ」
大樹が、独り言のように呟く。
「なかなか、賑やかな一座よな」
「誰が一座だ」
俺がツッコむと、大樹は「ブワっはっは!!」と笑った。声がでかい。
その笑い声に、鍬がぴくりと反応した。
「あの〜……大樹、でしたっけ」
「左様。我が名は大樹。主より賜りし、誉れある名よ!」
「へえ〜……」
「いや、お前自分から名乗ってなかったっけ??」
俺のツッコミは完全に無視される。
鍬は、大樹をぐるりと一周、観察するように回った。
「蔦、すごいっすね。木の魔物って、木に擬態するのが普通じゃないっすか。でも大樹さん、蔦で全部覆っちゃって……なんで隠してるんすか、本体」
場の空気が、一瞬だけ変わった。
大樹の蔦が、ぴたりと止まる。
「……それは」
傲慢な声が、珍しく小声になった。
「我の話すことではない」
それだけ言って、大樹は口を閉じた。
鍬は「へ〜、そうなんすね〜」とあっさり引いた。柵は筋肉のことしか考えていないのか、すでに大樹の蔦の太さを触って確かめていた。
「柵よ」
大樹が、柵に向き直る。
「その足の筋肉……見事よな」
「だろう! わかるか!!やはりお前とは気が合う気がするぞ!」
柵が、目を輝かせながら筋肉を膨らませた。
大樹も、蔦をぶわりと広げて応える。
蔦を集めてムキっとガッツポーズを取っている。器用だな。
……木同士、仲良くなるの早いな。
そんな賑やかなやりとりの中、御座だけが、静かに俺の隣に控えていた。
大樹は御座にだけ、一度も声をかけていない。近づきもしない。
俺が気づいていると分かったのか、御座が静かに言った。
「……大樹は、分かっているのでしょう」
「何を?」
俺の疑問に、御座は即答する。
「序列を」
それだけ言って、御座は黙った。
大樹がちらりと御座を見た。目が合った瞬間、大樹は何も言わず、すっと視線を逸らした。
傲慢な大樹が、ただ、黙って。
……なるほど、一応そういうのもあるんだな。
賑やかな夜が、少しずつ更けていく。
森の出口まで、あと半日。
これにて一章は終了です。
本日幕間を2つ挟んだ後、明日から二章に入ります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^^)




