11話 誰だ、てめーは!
「謝罪など要らないわ!主は我が守っていたからな!ブワっはっはっはー!!!」
俺が口を開くよりも先に、大樹が応えた。
声でけーよ。あとなんか、つば飛んだ気がするぞ、今。
「「誰だ、てめーは!!!!!!」」
柵と鍬が、目をズンッと見開き、声を揃えた。
「十中八九、先ほどの御柱の者だろうな」
御座が、静かに分析する。
柵と鍬は納得したのかしていないのか、大樹をじろじろと見回している。
「さて、それよりも、だ」
御座の視線が、すっとこちらへ向いた。
「殿……そのお怪我は?」
「振り子の少年にやられたんだが……まあ、いいんだ。お前らは気にしなくていい」
「なりません!殿ぉぉぉおお!!」
柵が、号泣しながら顔を近づけてくる。近い近い近い。
「それなら、我が治せるぞ」
大樹が、当然のように言った。
こいつも優秀なんかい。
心の中でツッコんでいると、大樹は無数にある蔦を俺の足に巻きつけ――そのまま、頭上へと持ち上げ始めた。
「ちょ、待って待って待っ――」
気づいたら、大樹の頭上まで持ち上げられていた。
蔦が、黄金に輝く。
瞬く間に傷口が塞がり、痛みが、すうっと消えた。
……持ち上げる意味、あった??
高いところから、傭兵団の三人を見下ろす形になってしまった。なんか、偉そうに見えてる気がする。違う、そういうつもりじゃないんだが。
「……あの蔦の魔物、治癒の力を使えるのか」
ベルトルトが、低い声で言った。
「これ、ますます厄介な案件になってませんか?」
ガラナが、珍しく真面目な顔のまま続ける。
「三等級の傭兵で対処できる相手じゃない、ってのは、三体の時点で分かってたっすけど……四体目まで増えるとは。しかも治癒持ち」
ガラナはそう言いながら、ウンザリするように言った。
ダルズは、二人の後ろで、黙ってアゲルを見上げていた。
高いところから、こちらを見下ろす少年。
怖い、はずだ。怖いのに――なぜか、あの声が頭から離れない。
名前、聞いてもいいか。
「……引くぞ」
ベルトルトが、短く言った。
「ですね」
ガラナは、一度だけ大きく息を吐いた。
「俺の負担がデカ過ぎる、なんて言ってる場合じゃないですからね……。ベルさん、帰ったら報酬、上乗せしてくださいよ?」
「考えておく」
ベルトルトは、踵を返す前に、もう一度だけアゲルを見上げた。
大樹の頭上に持ち上げられた少年が、困ったような顔で、こちらを見ていた。
……厄災。
その言葉が、今この瞬間だけ、少しだけ似合わない気がした。
ベルトルトは、何も言わず、踵を返した。
「ダルズ、行くぞ」
「……はい」
ダルズは、最後にもう一度だけアゲルを見た。
そして、二人の後を追った。
三人が森の闇に消えていく。
俺は、大樹の頭の上から、その背中を見送った。
「……降ろしてくれ、大樹」
「御意!!!」
また声がでかい。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^^)
キリが良いので、明日は3話分投稿する予定です。




