↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/228

99話

 さて、問題があるということでしたが。

 これは、詳しい話を聞かねばなりません。

 というわけで、奴隷二人は別室に下がってもらって……。


「では、お話いたします。

 あの二人の共通の問題というのが、性奴隷になることに拒絶しているのです」


 へぇ、でも、それって普通じゃない?

 というオレの疑問に答えるように、


「女性の奴隷冒険者では珍しいことでして……。

 基本的に冒険者が奴隷になるのは、お金のトラブルです。借金してしまうものが多いのですよ。

 怪我してしまったり、装備品が破損してしまったり。

 まぁ、これは女性に限らず、冒険者全体につきまとう問題なのですが……それはともかく」


 それはそうだろうな。依頼に失敗した、魔物を倒しても素材を剥ぎ取る余裕がなかった、逃げるしかなかった、となったら、報酬はなく、それどころか赤字になる。


「借金して奴隷になった。ならば、借金を返しさえすれば、元の身分に戻れる。

 性奴隷なら、高く買い取ってもらえ、もしかしたら、主人に情が出てきて、奴隷から解放してもらえるかもしれない。

 であれば……おかしな話ではないでしょう?」


「ふむ」


「女性側としても、危険な冒険に出ると、気分が高まります。その場合、男娼を買うこともあります。

 ……女性にだって、欲はあるのですよ。ましてやそれが冒険者なら」


 まぁ、それは理解した。

 女性の奴隷冒険者だって、事情はあるのだ。

 性奴隷として買われていっても、それが本人の選んだ結果なのだろう。


「それをふまえて、彼女たちです。

 奴隷を買う側からすると、性奴隷になることを拒否する二人は、どうしても買いにくいのですよ。他にもいますからね」


「しかし、奴隷が欲しいのは、男性ばかりではないでしょう。

 女性の冒険者だったら……?」


「そうですね。でも、彼女たちの抱える問題はまだあります」


 おっと?


「ドワーフの彼女──レベッカといいますが、ドワーフ種族固有の能力が使えません。

 正確に言うなら、役に立たないのです」


 ドワーフ種族固有の能力……なにそれ、kwsk。


「【無魔法】の『修復』(リペア)といいますが。

 これは、金属製の武具をその場で簡易的に修復する魔法です。

 歯こぼれ程度なら、すぐに直してしまうそうで、この魔法によって、ドワーフの冒険者は人気なのです」


 おぉ! すごい。

 確かにその魔法は、便利だ。


「しかし、レベッカはその魔法が苦手なようでして、ドワーフの奴隷はすぐに売れるのですが……。

 彼女も、当然努力しています。砥石を使って剣を研げますし、それだけでなく、料理も裁縫も、なかなかの腕前なのです」


 ただ、魔法の便利さには敵わないのだろう。それに、砥石の分、荷物が増えるし、砥石がなければ剣を研げない。

 料理や裁縫だって、彼女でなくてもよい。

 なるほど。問題ですね。


「もう一人の女性は、どうなのです?」


 オレの問いに、奴隷商さんは苦渋の表情を浮かべた。


「彼女──エリーゼといいますが、能力的には問題ありません。

 性奴隷になれないのも、年齢と種族の掟がありますので……」


 聞くと年齢は十二歳だそうだ。それであの体型か……。

 それに掟で、同族じゃないと性行為はダメだそうです。


「それなら……?」


「エリーゼは以前のパーティーにいた際、ダンジョンアタックに挑戦したそうです。

 そこで罠にかかり、パーティーの男性冒険者と二人ではぐれてしまいました。

 周囲は魔物だらけだったそうで、僅かな空間に男性冒険者と二人で隠れていたようです」


 ふむ。

 まぁ、ここにいる以上、命は助かったけど……といったところか。


「男性冒険者は、エリーゼを囮にして自分だけ助かろうと考えたそうです。

 そのついでに、エリーゼに強姦しようとしたのです。どうせ死ぬのだから、と。

 結局、それは未遂に終わり、他の仲間が助けに来てくれたのですが、抵抗した際、相手に大怪我を負わせてしまい……。

 彼女は何重にもショックを受け、男性冒険者の怪我の治療費を払うために借金をして、今ここにいます」


 うわ。へヴィーだなぁ……。


「しかし、その男性の治療費を払う必要があったのですか?

 こういう場合、ギルドは?」


「もちろん、きちんと双方の話を聞いた結果、エリーゼにはなんら問題はありません。

 しかし、ショックを受けたエリーゼは、パーティーから離れるために、あえて借金をして奴隷になったのです。

 ギルドも間に入り、その男性冒険者は治療費を受け取る代わりに、エリーゼに近付かないという誓約書を書かせました。それは、パーティー全員も同様です。

 こうして、事態は終息したのです」


 言葉も出ない。

 事実は小説より奇なり、とはよくいったものだ。

 十二歳の女の子の身の上に起こることかね?


「あれ以来、エリーゼは冒険と戦闘が苦手になってしまいまして」


 ん?

 それって、冒険者として致命的では?


「そうなのですが……かといって、エリーゼもいつまでもここにはいられません。

 そんなときに、ちょうどよいお客様が……」


 うん、オレのことですね。

 しまった、今の話を聞いて、彼女たちを買わないと断るなんて、相当難易度が高いぞ。

 先日から、交渉事で良いところがないなぁ。

 この世界の女性が(したた)かなのか、オレが女性に弱いのか。

 ……きっと両方だよね。


 はぁ……お金の工面をしないとな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。