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97話

 午後0時10分。

 転移して、港町にやってきました。

 正確には町の外で、これから中に入る。


 精霊が町中に入る際に、魔法使いギルドによる登録が必要で、それはディーネしかしていない。

 なので、ジュリアとヴィヴィは一時送還して、中で改めて召喚することにする。

 まぁ、パッと見て精霊だとは気付かれないと思う。わかる人は今までに、魔法使いとか兵士とかで、一般人には何も言われなかったから。

 もしかしたら、気付いているけど、あえて声に出さないという、奥ゆかしい人々だった可能性はあるけども。

 ……何か問題になったら、すぐに逃げよう。




 生きるためには食わねばならず、食うためにはお金が必要だ。

 精霊ならば、霞を食べて生きていけそうだけど、オレはそうではない。

 いや、もしかしたら、【不死】のスキルは餓死もなんとかしそうだけど、だからといって、今後一切食べずに生きるのは嫌だ。

 というわけで、買い物などをしようと思います。


 冒険者ギルドに行って、いろいろ売却した。

 港町だからなのか、森の中の素材が比較的高く売れる。

 特に驚いたことに、巨大芋虫がかなりの高値で売れた。

 食べるんだって……。

 美味い上に、栄養価も高い、高級食材なんだとか。

 ……うん。まぁ、地球でも、芋虫食べてる人達って、いたよね。だから、おかしくないさ、ハハハ。

 どこかのお店で出される料理の食材は、必ずチェックしよう。

 オレは心の底から、そう誓った。




 ギルドから出て、ブラブラしていると、今朝のことを思い出す。

 お屋敷の家事についてだ。

 当初は、掃除や洗濯なんかは魔法でなんとかなるし、あとは料理くらいで、それならディーネかヴィヴィに覚えてもらえば良いかな、と思っていた。


 ちなみに、ジュリアは最初から選択肢に入れていない。

 何故なら、デュラハンである彼女は、自分の首を抱えていなければならず、片手が使えなくなるからだ。

 近くに置いておく、ということもできるが、いちいち持って移動しなければならないのだ。

 どうにも大変そうなので、ジュリアは家事は免除となる。

 まぁ、他のことで頑張ってもらおう。


 それはさておき、料理のことだ。

 ディーネかヴィヴィに覚えてもらう、と言うのは簡単だが、実際には難しいだろう。

 なにせ、精霊様だ。

 そんな存在に、誰が教えてくれるのだろう?

 萎縮しちゃうよね。

 オレは教えられる、というほどできないし。


 お金で解決できなくはないけど、だとしても、料理を覚えるのは時間がかかるし、それならいっそ、料理ができる誰か雇おう、となる。

 そう。

 執事かメイドである──ある意味、ファンタジーにおいてテンプレな存在だろう。


 ただ、場所が場所なので、そう簡単に来てくれないだろうな、と思う。

 なんせ、深い森の中のお屋敷だ。

 移動するのも、精霊による転移という方法である。

 この条件だけで、かなり難易度が高いのではないだろうか。

 あと、いろいろ秘密にしたいこともあるし、そういったことを考慮するとなると……。


 よって、奴隷という考えが出てくる。


 料理のできる執事かメイドが、奴隷として売られているのか、値段はどれくらいなのか、いろいろあるが、とりあえず探してみようと思う。




 奴隷商の店を探そう。

 この大陸の玄関口だけあって、そういった店はいくつかあった。

 一度、冒険者ギルドに戻って、評判の良い店を聞くことに。

 冒険者は諸々の事情から、奴隷を使うことが多い。

 そういった冒険者たちのために、ギルドも用途別に何人かの奴隷商と懇意にしているようだ。


 また、今回いろいろ調べたが、奴隷に関して、結構法律が厳しいようだ。

 特に、あまりにも手荒く扱うと、罪になるケースもあるという。

 だから、奴隷を魔物に対する肉盾に使うなどというのはあってはならないことなので、ギルドからは気を付けるように忠告された。


 うーん、奴隷という言葉が悪いんだよね、これって……。

 だから、勘違いする奴がいるんじゃないかな。

 ……まぁ、オレはそんなつもりはないので、良いけど。


 ギルドに冒険者御用達の奴隷商を紹介してもらい、早速行ってみることに。

 料理ができれば良いか、なんて考えていたが、森の中で何があるかわからない以上、自衛できる方が安全だ。

 結界はあるし、大丈夫だとは思うが、絶対ではない。

 今はともかく、いつもオレたちが居るわけではないのだから。

 なので、これから行く奴隷商は、戦闘ができる奴隷を多く扱っている。

 その中で料理ができる奴隷を探す、というわけだ。




「いらっしゃいませ」


 店に到着すると、店主が出迎えてくれた。

 驚いたことに、妙齢の女性だ。

 多分、オレと同じか、少し上の年齢かな。

 もちろん、美人さんである。


「突然、申し訳ありません。冒険者ギルドから、こちらのお店を紹介して頂いたのですが……」


「あら? それはありがたいことです。

 ということは、冒険に連れて行くための、戦闘用の奴隷をお求めでしょうか?」


 口に手を当てて、微笑みながら言う。

 美人のこういう所作は、絵になるよね。


「えと、ちょっと違います。

 自分の住んでいる家の家事などをお願いしたいのですが、絶対に安全だとは言い難い場所なので、最低限の自衛ができる方を……と思っておりまして」


「まぁ、そういうことですか……」


 やっぱり、難しいですかね?


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