↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/228

96話

 午前8時15分です。

 水をたくさん飲んで、身体を動かしたクライネ師匠は、だいぶ体調が戻ったようだ。

 お腹が空いたというので、〈アイテム〉(ストレージ)にあったサンドイッチなどを渡した。

 立ったまま食べているけど、まぁ、良いか。


 それにしても、本当に食事を含め、お屋敷のことを任せられる人がいて欲しい。

 執事とか、メイドとか。

 雇えないかな?

 でも、こんな森の中まで来てくれる人……いないか。

 憧れなんだよな、執事とメイド。


 うーん……。

 奴隷という手段もあるには、ある。

 オレは奴隷に関して、思うところがないわけではない。

 酷い扱いを受けている奴隷を、この世界に来てから街中で見たことはあった。

 ただ、だからといって、その奴隷のために何かしよう、とかは考えなかった。

 この世界の、少なくともこの国では、奴隷制度が成り立っているわけで、それをどうこうしようとかはない。

 日本のブラック企業とかだって、奴隷とたいして変わらないと思うし。

 それを変えるのは、政治の話になるよね。

 オレには、縁のないことです。


 だから、仮に奴隷を使うなら、せめて待遇をそれなりに良くして、お互いに気持ち良く働いてもらいたいと思う。

 それなら、ただの雇用だからね。

 ……偽善ではあるが。

 まぁ、それ以前に、先立つものがないんですけど……。


「ラムダ! ぼんやりするな! 続きじゃ!」


 おっと、今はそれどころではないな。

 気を引き締めて、取りかかろう!




 予定では、技の習得なのだが、まだまだ基礎を習う。

 いや、ある意味においては技か?


 剣の太刀筋というのは、九通りある。

 上から下。

 右上から左下。

 右から左。

 右下から左上。

 下から上。

 左下から右上。

 左から右。

 左上から右下。

 さらに、突きを加えた九つだ。


 基本的にこの九種があり、あとは各々の流派によって、変化させたりしている。

 が、とにかく、この九種ができなければ話にならない。

 基本にして奥義、とは良く聞く言葉だ。

 だから、素振りをして、さらに型として足さばきを交えて、身体に覚えさせていく。


 また、防御として、受け流し、パリングについて教わる。

 クライネ師匠の流派では、受け流しとパリングはちょっと違うらしい。

 乱暴な言い方だが、受け流しは、相手の攻撃を剣で受け、その勢いを刃で滑らせ流す、というもので。

 パリングは、相手の攻撃に対して、こちらの剣で撃ち弾く、というものらしい。


 ちなみに、オレと師匠が初めて戦ったとき、オレは師匠の攻撃を受け流していると思っていたが、師匠に言わせると、あれは力任せに弾いていたようだ。

 ……なんか、恥ずかしい。


 受け流しとパリングだが、状況によって使い分けるようだ。

 どっちが優れている、というものでもないらしい。

 ただ、パリングは剣を傷めて壊れやすくなってしまうので、気を付けないとならない。

 もっとも、相手の剣を破壊させることもあるので、使い方次第になる。


 また、防御に関して、そもそも、相手の攻撃を受けずに避けた方が良いのは、言うまでもない。

 受け流しにしろ、パリングにしろ、避けられなかった場合の対抗手段なのである。

 キチンと、相手の攻撃を見極め、見切りの技術を身に付ける必要がある。

 先はまだまだ長い。




 午前10時。

 クライネ師匠との模擬戦だ。

 模擬戦といっても、剣の実力は天と地ほどの差があるので、まずはオレが師匠にひたすら攻撃する。

 師匠はそれに反撃せずに、回避するだけだ。

 師匠が回避できずに防御したら、オレの勝ちとなる。

 そんなのいつになることやら……。


 続いて、今度は逆に、師匠の攻撃をオレがひたすら防御する、というものだ。

 全ての攻撃を防御できたら、オレの勝ちとなる。

 最初は余裕があるのだが、徐々に師匠の攻撃が鋭く、激しくなり、そして、最終的に受けきれず、ボッコボコにされた。

 防具を身に付けてはいるが、物凄く痛い。

 鎧を越えて、芯に響くような痛みだよ……。


 怪我はすぐに治る。

 しかし、この痛みはなかなか消えず、いつまでも残り、それによって身体が萎縮してしまい、また攻撃を受ける。

 その繰り返しです。

 これは……しんどい。


 2時間ほど、攻撃と防御を交互にしたが、全く歯が立たない。

 ちょっと落ち込みそうだ。


「ふん。あたしがもう何年、剣を振ってきたと思っている? そのあたし相手に、たった一日で、どうにかできるとは思わないことじゃ。

 お主が今するのは、落ち込むことではなく、どうすれば良いのか、ひたすら考えることじゃよ。

 そして、その考えをとにかく実践するんじゃ」


 厳しいのか、優しいのか、よくわからないアドバイスですね。

 考える……。

 難しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。