94話
──はっ!?
意識を失っていたようだ。
何が起きた?
そうだ。
コシュタ・バワーに全力で走ってもらっていたんだ。
オレは御者席へ座り、ディーネとヴィヴィには馬車に乗ってもらって。
それであまりの速度に……。
御者席に一緒に腰掛けているジュリアの様子は?
兜で表情がわかりません。
でも、特に問題はなさそうだ。
ディーネとヴィヴィはどうだ?
ちょっとディーネの顔色が悪いかな。
ヴィヴィは……笑っている。楽しかったようだ。
っていうか、ジェットコースターなんて目じゃなかったな。
以前に、時速60km出る魔改造されたゴーカートに乗ったことがあった。
普通自動車だと全く気にしない速度だが、剥き出しの運転席で、地面にスレスレで走ると、体感速度はとても速く感じたものだ。
通ったところを振り返ってみると、轍の部分がパチパチ放電している。昔のタイムスリップする映画に出てくる車みたいだ──ボヘミアンとか、デロなんとか……そんな感じの名前だったっけ、違うか? まぁ、良いか。
それにしても、コシュタ・バワー……恐るべし。
さて、全力疾走するコシュタ・バワーを確認できたところで、そろそろ帰ろう。
午前3時40分。
ちょうどよい時間です。
見渡す限り丘陵地帯だけど、所々に岩場があり、その影なら転移できるかな。
買ってあったテントを設置して、その中に水を溜めた桶を置いた。
そして、24時間しか保たないけど、テントを【結界術】で補強し、さらにその周囲を結界で隠匿、侵入不可にした。
強引に破ることも可能だけど、相応に苦労するだろう。
他人のテントに押し入る強盗が、そんな苦労をしたがるとは思えないので、これで良いだろう。
では、戻るか。
お屋敷です。
まだ暗いなぁ。
少し休憩してから、筋トレするか。
あ、ディーネたちは好きにしてて良いよ……じゃ、解散。
柔軟体操から。
驚いたことに、日本にいた頃より、身体が柔らかい。
理由はわからないけど、嬉しく思う。
でも、まだまだなので、もっと身体が地面にビッタリくっつくまで頑張ってみよう。
……あれをできる人は、憧れでした。
さて。
ステータスっと。
名前 :ラムダ
レベル:10
SP :580
生命力:2406(50+2356)
精神力:4713(0+4713)
筋力 :307 (74+233)
耐久 :305 (72+233)
敏捷 :308 (75+233)
器用 :314 (81+233)
魔力 :2591(0+2591)
幸運 :20
うん、あいかわらず魔力が高い。
この世界の人の平均ステータス値は、100前後だと神様の手紙に書いてあった。
オレのレベルが上がったこともあり、その三倍はある。
でも、日常生活では、その恩恵があるようには思えない──戦闘中は夢中で意識していないけど──のだが。
多分だけど、レベルアップで上昇した分は、補正値とかそういうことではないだろうか?
例えとして正しいかわからないが、パワーアシストスーツみたいなものを、オレは想像している。
どうなっているのか、理屈はさておいて。
もしそうであるならば、筋トレをすることで、素の身体のステータス値も増えるかもしれない。
それが、この筋トレの目的である。
仮に、ステータス値が増えなくても、筋トレをやり続けるという行為は、何らかの役に立つだろう。
うん、ムダになることなんてないさ、きっと、おそらく、多分……。
腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットetc.etc.
最初のうちは、20回くらいでしんどくなったけど、【超回復】のおかげですぐに回復した。
また何回か続けると、辛くなるがすぐに回復する。
その繰り返しで、いくらでも続けられそうだ。
効果があるのか少し疑問だけど、信じて頑張ろう。
テレビで見た、インナーマッスルを鍛えるというのも、思い出しながらやってみた。
これこそ効果があるのか全くわからないけど、怪我とかを気にしなくて良いので、いろいろ試してみるのもアリだろう。
実際、逆立ちで歩けるようになった。次は、片手で逆立ちできるかな?
バク転、バク宙をしてみたいが、さすがに首の骨が折れるとどうなるかわからないので、固い地面でやるのは控えよう。マットとか探してみるか?
あー、でも、手をつけば大丈夫か? 側転とかから順番に試してみようかな。
いや、待てよ? 【空歩】があればバク宙くらい簡単じゃね? 失敗しても、空中で足場を作って蹴れば良い。
ふむ、やってみよう。
とか、いろいろやっているうちに、午前5時30分か。
夢中になりすぎてしまった。
日本にいた頃は知らなかったけど、身体を動かすのも楽しいな。
目論見通り、バク宙ができた。
何回か失敗したが、致命傷になりやすそうな頭部付近を気を付ければ良い。他の箇所の怪我は、すぐに治る。
次第に慣れていき、ぐるんぐるん回った。
あー、面白かった!
クライネ師匠の本格的な稽古が始まる前に、少し休憩しておこう。
ん?
そういえば、食事はいつすれば良いんだろう?




