87話
オレは詳しい話を聞くため、お屋敷の中に入ることにした。
クライネさんには、武装を解除してもらった。
武器は預かっていたけど、鎧も脱いでもらう。
……なんか、怖いんだよ。
「あたしかい? 275になったばかりじゃよ」
失礼だとは思ったが、クライネさんに年齢を聞いてみた。
……驚いた。
まさか、桁違いとは。
この異世界では、寿命がかなり長いのだろうか?
と思ったが、クライネさんはクォーターエルフ──母親がハーフエルフ──だからで、平均寿命が300年くらいらしい。
それでも驚異の身体能力だが、魔法で補助しているので、あれだけのことができるらしい。
魔法がなかったら、年齢相応だと言うが、本当かな?
「まぁ、鍛えてもいるが。
あたしのことはどうでも良いよ」
そうでした。
もう少し現実逃避をしたかったけど。
「このお屋敷の地下に、魔物が封印されていた、とのことでしたが……」
「そうじゃ。
さて、どこから話したものか……」
クライネさんによると。
過去に、とある場所で暴れていた魔物を倒す依頼を、クライネさんと当時組んでいた仲間の数人で受けた。
早速戦ってみたが、その魔物はなかなか強く、また人里の近くだったので、被害のことを鑑みて、魔物を人のいない場所──メルガルド大森林に転移させることにした。
紆余曲折あったが、魔物を転移させることに成功する。
後は倒すだけ、となったのだが、そう簡単にはいかなかった。
仲間が一人倒れ、二人倒れていき、最終的に残ったのは、クライネさんと、魔法使いの二人だけになった。
明らかに、戦力が足りない。
そこで、苦肉の策として、魔物を封印することにした。
クライネさんが囮になり、なんとか時間を稼いで、封印することができた。
ただ、魔物の強さから、いつかこの封印が破られるのは間違いないので、いくつか仕掛けを施した。
それが、このお屋敷である。
封印が破られた際に、魔力が放射されて、魔法使いに知らせるのと同時に、魔物をお屋敷という結界内に閉じ込め、駆けつけるまでの時間を稼ぐことにしたのだ。
そして、今日──というか、もう昨日か。
封印が破られたのを知り、準備を整え、急いでやって来た、というわけだそうだ。
「……なるほど。事情はわかりました。
ところで、その、もう一人の魔法使いさんは……?」
オレの問いに、クライネさんは沈痛な顔をした。
あれ? もしかして……?
そうか。もうかなり時間が経ってて、それでもう亡──
「あやつは……先日転んでしまい、腰を痛めて、今は動けない。
寄る年波には勝てん、ということじゃな……。
なんとか、あたしだけを転移させたが……痛みのせいなのか、到着地点がかなりずれたようじゃ」
……。
こほん。
気をとりなおそう。
「えと、なんと言うか、その……。
いや、それよりも、クライネさん?」
「なんじゃ?」
ちょっと今の話に疑問が。
「そういうことなら、早くここに行きたかったわけですよね?
何故、私たちを襲撃したのです?」
「そんなことか。
それなら先程も言ったじゃろう?
真夜中の森の中に誰かいる。怪しい。だから、攻撃する。
どこもおかしくないのじゃ。
それに……」
「それに?」
「それに、異変のあった場所にいるヤツなんぞ、何か関係あるに決まっているのじゃ。
ならば捕らえておけば、後で役に立つ」
……。
なんか違う。違う気がするのに、実際には、確かにオレたちは当事者なんだから、正しい判断だ。
すごい釈然としない。なんだ、このモヤモヤ感。
「あっはっは。
そんな顔をするな。
それにこの地に着いたら、あの魔物が大暴れしていると思っておったが、そんな様子はない。
だったら、何か知っている者に聞くのが、手っ取り早いじゃろう?
だから、聞きやすくするために、攻撃したんじゃよ」
……もう、なんかヤダ。
なんで話を聞くのに、先に手が出るの?
もっと平穏な方法って、あるでしょ?
違うの? 間違っているのは、オレ?
「さあ、ここでなにがあったのか、あんたたちは何者なのか。
あたしに聞かせておくれ!」




