85話
やれ、ヴィヴィ!
鎧騎士に向かって、上空から強襲するヴィヴィ。
2mある身体が音もなく飛ぶ姿は、この森の中では、恐怖だろう?
ヴィヴィが攻撃を仕掛けている隙に、体勢を整えよう。
って!?
ヴィヴィの蹴爪が、鎧騎士に当たる直前に何かに防がれた!?
結界か?
いつの間に?
鎧騎士は、一瞬動きの止まったヴィヴィに右の大剣で斬りかかり、返す刀でオレに左の大剣で薙ぎ払う。
ヴィヴィはすぐに高く飛んでその攻撃から逃れたが、オレはダメだ。
避けられない!
剣で受けるのが、精一杯だ。
くそ!
吹き飛ばされるけど、仕方ない。
離されても、魔法を連発して、足止めしてやる!
あれ?
吹き飛ばないぞ?
何でだ?
……って、考えている暇はない!
鎧騎士の攻撃は、止まってないぞ!
回避する。
二振りの大剣が、回転するように襲ってくる。
片方だけなら、避けられる。だが、それは罠だ。追撃が待ち構えている。
オレは、それを剣で受けざるをえない。
しかし、重量のある大剣を受けるためには、全力で対処しなければならない。
すると、次撃の対応に遅れてしまい、攻撃を不完全な体勢で避けるか、受けるかしないとならなくなり。
オレは、徐々に追い詰められていく。
たまに、魔法で反撃するか、ディーネかヴィヴィが攻撃を仕掛け、その間に、オレが体勢を整え、仕切り直しになる。
その繰り返しだ。
心配なのは、ジュリアだ。
起き上がってこない。
もう少し余裕があれば、ディーネに様子を見てもらうのだが……。
少し距離が離れたので、剣を捨てて、『アイテム』から杖を出す。
防御に専念するなら、こっちの方が良い。
今の状況は、完全にオレが足を引っ張っている。
オレ一人で、鎧騎士の相手ができれば……。
鎧騎士の大剣が、迫ってくる。
オレは杖で受けるのではなく、滑らすように受け流す。
もちろん、回避できる限りはそうする。
どうしてもムリなときは、ヴィヴィに助けてもらった。
その間に、立て直す。
やっとディーネの手が空いた。
急いで、ジュリアを回復してもらおう。
ただ、ジュリアを吹き飛ばした原因がわからない。
下手に前に出させると、先ほどの二の舞になる。
どうしたら良いのか……?
鎧騎士の攻撃を、回避して受け流す。
合間に、牽制の魔法を放つ。
だんだんわかってきたが、右の大剣でのみ魔法を斬れるようだ。左側に魔法を放つと、回避するか、防御結界で受ける。
その防御結界は、範囲はそれほど広くない。ちょっと大きめの盾くらいだ。
自動で攻撃を受けるが、一度でもダメージを受けると消えてしまう。
そして、また発動するようだ。
消えてから再度発動するまで、タイムラグがありそうだが、計っている隙はない。
左の大剣は、精霊が当たると、爆発して吹き飛ばすようだ。
オレはなんともないが、ジュリアとヴィヴィは、何度か飛ばされた。
そうなるとわかって受けたので、ダメージはそれほどでもなく、わざとディーネのいる方に飛ばされ、すぐに回復した。
そうとわかれば、ジュリアとヴィヴィには、右側から攻撃を仕掛けてもらう。それでも、有効打は与えられないが、牽制にはなる。
オレは少しずつ魔法の準備をする。
最大の一撃を喰らわしてやる!
魔法を斬るというなら、斬られない魔法をブッ放せば良いのだ!
鎧騎士の攻撃を回避しながら、オレはタイミングを見計らう。
そして──ここだっ!
『ショートジャンプ!』
……かーらーの!
『ストーンバレット!』
このために『ショートジャンプ』は、温存しておいたのだ。
一回見せてしまえば、次から対応されるはず。
逆に言えば、初見は対応できないだろう、きっと!
そして、背後に出現直後に、最大威力の『ストーンバレット』だ。
魔法を斬る?
残念。『ストーンバレット』は、高速で石の弾丸を射出する魔法だ。
射出した後は、魔法は関係なくなる。
ただ単純に、背後から、石の弾丸が高速で飛んでくるのだ。
それも、オレのバカみたいな魔力で、ガッチガチに硬くした石を、高速回転させ、全力で射出した。
さあ、どうする、鎧騎士さん?
ドバァン、と聞いたことのない音がした。
テレビで見る銃声とかとは、なんか違う気がする。
あー、こうなるんだ……。
オレが『ストーンバレット』を放った瞬間、鎧騎士はすぐにオレを捕捉した。
が、もう目の前には、石の弾丸が迫っている。
終わりだ。
ここから、オレは目の前の出来事が、スロー再生のように遅く見えた。
──鎧騎士は二振りの大剣を身体の前に交差させ、石の弾丸を防御する。
──石の弾丸が大剣に接触し、高速回転して穿とうとする。
──ビリビリと震える大剣を、無理矢理抑えようとする鎧騎士。
──両者が拮抗して。
──バランスを崩してしまう。
──石の弾丸の耐えきれなかった大剣を弾いて。
──途中にある木々を粉砕し、石の弾丸は夜空を駆け昇る。
──空手になった両手を伸ばした鎧騎士は、後方に吹き飛んだのだった。




