84話
30分ほどで、ヴィヴィが戻ってきた。
お疲れ様、と言って、頭を撫でる。
それにヴィヴィは目を見開いて、顔を伏せてしまった。
ディーネとジュリアも、顔を強張らせる。
──っと、いけない。
つい、小さい子にするようにしてしまった。
なんとなく手が出たけど、中学生、高校生くらいの見た目の女の子にするようなことではなかったな。
反省。
オレは、手をヴィヴィの頭から離そうとするが、それを彼女は制止させ、続けるように言った。
あれ? イヤじゃなかったの?
……構わないらしい。
最初の態度は、ビックリしただけ、とのこと。
そういうことなら、と、オレも気兼ねなく頭を撫で続けた。
ヴィヴィの細い髪はサラサラで、とても気持ちが良い。
しばらくそうしていると、ジュリアが自分の頭をオレに差し出した。
デュラハンであるジュリアだから、頭を差し出すというのは、文字通り、両手で自分の生首を持って、オレの方に突き付けてきた。
……。
撫でろ、と?
首を振るジュリア。
……シュールだよ、ジュリアさん。
真夜中の真っ暗な森の中で、それはシュール過ぎる。
ホラーとか越えてなくね?
ただ、とても真剣な顔を──両手で差し出されたまま──していたので、頭を撫でた。
まぁ、別に減るもんでもないし。
うん。
ジュリアも髪が綺麗だね。
頭も小さいし──生首だから、余計にそう思えるんだけど。
ジュリアは目を閉じて、頭を撫でられる感触に堪能している。
少しして、一歩下がって一礼した。
──いや、そこまでのモノじゃないと思うよ。
そして、ディーネが静静とオレの前に立つ。
……ディーネ、オマエモカ。
はふう。
オレはディーネの頭を撫でた。
ジュリアとも、ヴィヴィとも、また違う感触だな。
しっとりとしていて、それでいて滑らかで。
ふむ。
これはクセになりそうだな。
ずっとこうしていたいが、オレは心を鬼にして、ディーネの頭から手を離す。
──うむ、また撫でさせてもらおう。
……っと、それはさておき。
忘れていた。
ヴィヴィ、偵察の報告を。
「人がいた?」
思わず、声が出た。
周囲の静けさに比して、自分の声がとても大きく聴こえた。
ビックリして、口を押さえてしまう。
簡易マップを見ると、まだ離れた場所に反応がある。
聴こえるわけないよね?
ヴィヴィによると、白い鎧を纏い、マントを羽織った女性の姿を確認したという。
魔物だと思っていたので、勝手に攻撃するわけにもいかず、とりあえず戻って来たようだ。
良い判断です。
返り討ちに遭っていた可能性もある。
なるべくなら、危険は避けるべきだ。
今、何時だ? 午前3時。
人が森の中にいて良い時間じゃないぞ。
非常識な。
──人のことは言えないけども。
……どうする?
会いに行くか?
逃げるか?
どっちも、一長一短だな。
むう……。
迷っている暇はないんだが……あっ!?
簡易マップの反応が動いた!
こっちに向かってくる……速い!?
逃げるのは、ムリっぽいか。
話し合えるか?
いや、問答無用で先制攻撃してくるかも。
なら、そのつもりで対応した方が……って、さらに速くなった!?
総員、迎撃準備!
ジュリア、盾を!
ヴィヴィは上から遊撃だ!
ディーネは下がって、魔法で牽制して!
ザザザ、と立ち並ぶ木々を避けて、スゴい速度で駆けてくる鎧騎士。
兜で顔はわからないけど、ヴィヴィの言う通り、確かにシルエットは女性らしい。
両手持ちらしき大剣を二振り、片手でそれぞれ持ち、疾走してきた。
ウソだろ!?
あんな重そうな大剣を軽々と持って、その上、全身鎧を纏って走るって!?
しかも、真夜中の森の中だぞ!
鎧騎士はその勢いのまま、左の大剣を振りかぶり、ジュリアの盾に叩きつけた!
ガキィン、と硬質な音が響き渡り。
バァン、と爆発音とともに、ジュリアが吹き飛ばされ、背後の樹にぶつかった。
なんだ、今のは!?
明らかに衝突以外の原因で、ジュリアが吹き飛ばされたぞ!
魔法か?
くそ!
考えている暇はなさそうだ。
ディーネの方にロックオンしやがった!
そうはさせるか!
鎧騎士の前に立つ。
オレと鎧騎士との距離は、10mもない。
ジュリアと同じように吹き飛ばされたら、ディーネまで一直線だ。
やらせるか!
失敗した。
今いる場所は、少し開けている。
もっと狭い空間だったら、あの大剣を振り回すのに、制限させられたのに。
もう、遅いけど!
結界を展開。
一枚じゃダメだ。五枚重ねた。今はこれが限界だ。
もっとレベル上げとけば!
鎧騎士は右の大剣で突き刺すような構えをとり、結界に突撃した。
──あ、これ、ダメだ。
カーテンを斬り裂くように、結界が破られる。
クソッタレ!
こうなったら!
『ライトニングブラスト!』
雷撃の魔法だぞ!
大剣から感電しやがれ!
ついでだ!
『ソーラーレイ!』
雷撃に紛れるように、光の魔法だ。
このコンボを避けられるわけが──
「ハッ!」
鎧騎士は右の大剣を振り回し、雷撃と光の魔法を斬り裂く!
マジか……。
魔法を斬るってなんだよ。
しかも、雷と光だぞ。
一瞬、呆然としてしまった。
鎧騎士はその隙に、オレの目の前に立ち、左の大剣を振りかぶる。
マズイ!
咄嗟にオレは受け流そうとして、剣を構えた。
って、ダメだ!
オレが吹き飛ばされてしまったら、ディーネが!




