80話
港町の宿屋に戻った。
時刻は、午後3時過ぎ。
ここに泊まったのはオレとディーネだけなので、ジュリアとヴィヴィはお屋敷で留守番だ。
えと、確認しよう。
この宿屋に入って、夜中にこっそり森の中に転移したんだよな。
それで、森の周囲をフラフラして。
夜が明けてから、なんやかんやあって、お屋敷に突入。
その中では、時間が止まっていたりして。
お屋敷から出て、宿屋に戻る、と。
実質、一日経っていない。
なんか二週間くらい過ぎているような……。
そんなわけないんだけどな。
お屋敷の中だって、体感は二、三日くらいだし。
いろいろあったけど。
……まぁ、良い。
それより問題は、こんな時間まで部屋に籠っていた、と宿屋の人に思われていることだ。
絶対、「昨夜は、お楽しみでしたね」ってニヤニヤされてる!
本当にそうなら良いけど、実際は違うからね!
くっ。
ここで悶々としてても、仕方がない。
下に降りよう。
……特に何も言われませんでした。
むしろ、体調を心配されました。良い人!
一度も食堂に来なかったから、朝食も昼食も食べていないと思われていて、軽食を用意してくれました。良い人!
夕食も、特別に消化に良いものにするか聞いてくれました。良い人!
なんて、良い宿屋でしょう!
次にこの町に来る機会があったら、またここに泊まりたいものだ。
時間的に、チェックアウトできないのでもう一泊するが、問題ない。
夕食を期待しています。
とりあえず軽食を頂いてから、買い物に行く。
買いだめしておいた食糧が、少なくなったからだ。
生の魚介類ならそこそこあるが、調理しないといけないから、お屋敷の探索中はあまり食べられなかったんだ。
あらかじめ、調理しておけば良かったんだけど。
甘いものが食べたくなったので探していたら、干した果物があった。
もちろん、購入する。
何種類かあったから、味見をさせてもらって、何を買うか決めた。
……気に入ったのは、果物じゃなくて、干し芋だったけど。
調味料も手に入れた。
港町だけあって、種類が豊富だ。
ただ、もう夕方近いので、品切れのものも多い。
また、明日の午前中に来たいと思う。
そういえば、防具がボロくなったんだっけ。
補修するか、買い替えるか。
……金属製の防具も、検討した方が良いのかな?
武具屋に行ってみたが、試着してみると、やっぱり金属製の防具は重い。
ステータスの数値はかなり高いと思うのだが、関係ないのか?
店の御主人に訊いてみたら、魔法使いはダメなんだそうだ。
……よくわからない。
詳しく訊くと。
魔法使いは普段から、身体から魔力を僅かながらも放出しているとか。
それが、金属に干渉して重量が増すということらしい。
少しの量なら問題ないようだが、金属部分が増えれば、それだけ重くなるのは、当然のことだ。
一部の金属は、魔力との相性が良いものもあり、魔法使いが金属製の防具を身に付けるなら、そういったものになる、とのこと。
有名なのは、銀製品だそうだ。
ちなみに、ファンタジー御用達のミスリルがあるか訊いたら、それはかなり高級品なので、滅多に入荷しないらしい。残念。
諦めて店を出た。
補修は【錬金術】を使えば自分でできるので、夜にやろう。
そういえば、ヴィヴィに服とか買わないと。
……っていうか、ジュリアにもだ、忘れてたよ。
ジュリアは基本的に鎧姿だし、服なんて意識してなかった。
これはいかん。
あれ? でも、鎧を脱いでいるときもあったな。
そのときは……服着てたよね?
ん?
ヴィヴィも、人型態のときは……服を着てる。
でも、変化すると、鱗に覆われているが、裸っぽい。
どうなっている?
ディーネ先生、ご教授を!
……ふむ。
魔力を使えば、服のようにして身に付けられる、と。
そういえば、ディーネも水を服みたくしていたな。
ジュリアの鎧や服も魔力だし、ヴィヴィの場合は、おそらく鱗を服のように見せていたのだろう。
なるほど。
ということは、普通の服を着ていれば、魔力の消費を抑えられる?
……というわけでもないのか。
漏れてしまう余剰魔力を使っているので、それほど気にすることはないようだ。
ジュリアの鎧にしても、鎧が込みでデュラハンという精霊なので、鎧を脱ぐ方が魔力を消費しているらしい。
つまり、あの服や鎧は、精霊の一部ともいえる。
おかしな生態である。
ちなみに、オレと契約することで、オレのバカみたいな魔力が影響して余剰魔力となっているのであって、自然にいる精霊はそんなことはない。
だから、デュラハンのような一部の精霊は除いて、基本的に精霊は裸だ。
いずれにせよ、服があると嬉しいのは確かなようなので、今度、二人を連れて服を買おう。
今は、ディーネの服を買いに行って、デート気分でも味わうことにしましょうかね。




