81話
ディーネとの買い物は、すっかり日が落ちたので、終えることにした。
精霊とはいえ、ディーネも女性なので、自身の買い物となると、とても時間がかかった。
まぁ、自分の着る服なので、吟味するのは当然だろう。
世の男性はどうしているのか知らないが、オレはこういう場合、店内や品物を見ていない。同行者の顔を見るようにしている。
理由としては、自分のわからない女性用のアイテムを眺めるよりは、それを見て楽しそうにしている同行者の顔を見ていた方が、楽しいからだ。
同行者も夢中になっているため、オレの視線には気付かない。
もし気付いたとしたら、その品物にさほど興味ない、と判断できるわけだ。
この方法を友人に教えてもらってから、ちょくちょく実践しているが、かなり有効だと思われる。
良いものを見付けて喜んだり、値札を見て暗い表情になったり、一喜一憂している様は、見ていて飽きない。
あっという間に時間が過ぎていくのだ。
ディーネも例に漏れず、気になった服をとっかえひっかえ身体に当てていて、とても楽しそうだ。
精霊だけあって、値段に頓着しないので、正に端から端まで、品物を確認していた。
そして、店じまいの時間になった瞬間の、ディーネのあの表情を、オレは一生忘れないと思う。
また来ることをディーネと約束して、それまでに選んだ服を何着か購入したのだった。
──古着屋なので、次に来たときにまた同じ服があるか、わからないけど。
それは言わないでおこう……。
宿屋に戻って、夕食を食べ、風呂に入った。
デートして、美味しい料理に、気持ち良い風呂。
最高です。
さて、いろいろとやりたいことがあるが、一人になりたいので、まずはディーネに先に森のお屋敷に行ってもらう。
桶に水を溜めて、転移。
オレはそれを見送る。
いずれは、この方法ではなく、【空間魔法】を使って、長距離転移できるようになりたいのだが、未だにできそうにない。
レベルが上がれば、どうにかなるのだろうか?
まぁ良い。
今はできることをしよう。
まずは……と。
宿を出る。
てくてく歩いて、歓楽街の方に向かった。
港町だからか、繁盛している。人が多い。
評判の良い娼館の情報は、既に聞いてある。
ディーネの隙をついてこっそりと、だけど。
実は、そろそろ限界だったのだ。
かなりムラムラしている。
移動中とかは、戦闘があったりして集中しているから問題はなかったけど、町中にいると、気が緩んでしまうのか、もうダメなのだ。
横にディーネがいると、なおさらだ。
ぶっちゃけ、ディーネに手を出せなくはない、と思う。
これは勘違いとか、そういうのではなく。
でも、どこかで躊躇ってしまうのだ。
仲間だから、だろうか?
精霊様だから、だろうか?
契約して召喚したから、だろうか?
手を出すのはゲスい、とオレは思ってしまっている。
その考え自体がセコいなぁ、とも思う。
嫌われたくないし。
嫌われないけど、それは契約したからなんだ、とか思いたくないし。
ちゃんと恋愛しろよ、と頭の片隅で考えて。
でも、この年で恋愛なんて……と躊躇して。
年なんて関係ないだろ、ビビってるだけだろ、とか。
相手は精霊様だし、とか。
契約で縛って断れないようにするのは卑怯だ、とか。
──頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。
自分でも何を考えているのかわからないし、まとまっていない。
こんな状態で、みんなと一緒にいられない。
いつ暴発するか、わかったものではない。
だから、解放しに行こう。
オレは、身も心もリフレッシュするのだ!
……結局のところ、今までのは、ただの言い訳なんですけどね!
はふう。
評判通りの、良いサービスでした!
プロの仕事というのは、こうでなくては。
この世界では、ケモミミの獣人や、エルフ、ドワーフなどのファンタジー住人がいる。
当然お店では、そういった方々も選べるわけで、ちょっとビビってしまい、普通の人を選んだのは、ナイショです。
次に行く機会があったら、そういった方々を指名したいかも。
下らないことを考えながら、宿の部屋に戻る。
森のお屋敷にすぐに行っても良いが、その前に。
着ていた服に『清浄』の魔法をかける。
ほぼ新品同様の状態になった。
念のため、自分の身体にも『清浄』の魔法をかける。
すっきりサワヤカです。
こんなことも可能なんて、魔法って便利だよね!
ついでだし、防具の補修を【錬金術】でしよう。
どういう理屈か全くわからないけど、できるのだから、しょうがない。
メニュー画面から、ポンポンとパネルをタップして、完了だ。
苦労することなど、なにもない。精神力が減るだけだし、それもすぐに回復する。
そういえば、お屋敷内を彷徨っている間に手に入れたものがあったな。
そうそう、『魔力木』。
ポルターガイスト現象によって襲ってきた家具をバラバラにしたものを、回収したのだ。
何かに使えないかな?




