8話
「あー、びっくりした……」
あの巨大な樹を見た衝撃は、なかなか消えなかった。しばらく呆然としてしまった。
あれだけ大きいと、恐怖というか畏怖のようなものを感じる。その一方で、好奇心が刺激され近くで見てみたいとも思う。
そしてそのいくつもの感情の揺れは、自分がどこに立っているかを忘れさせ、そのまま腰をその場で下ろす。
――高い樹の枝の上で。
そこが地面だったら何も問題なく座れたのだろうが、場所が場所だ。
オレはバランスを崩し――落ちる!?
「……うわっ!?」
適当に振り回した腕が枝を掴む……掴めない! 爪が剥がれた!
「がッ! ギッ!?」
バサバサと枝葉の間を通る。太い枝に腰が直撃した!
「……グゲッ!」
その枝も衝撃で折れてしまって――
「ゴッ!?」
落ちた。けど、思っていたより、痛く、ない……?
落ちている途中、いろんな障害物があったからか、落下速度が落ちていたっていうのもあるし、何よりも、落ちた場所が想像より柔らかだったのだ。
「……こんなところにクッションがある……わけ……ない?」
少し温かく、もふもふの手触り。毛皮?
「ぐるぅ」
もふもふの何かが起き上がり、その上に乗っていたオレは転がり落ちる。
[グラスベアが現れた!]
グラスベア? ガラスのコップの熊? 緑色して草みたいだけど……あぁ、grassね。それで草熊と。でも、触った感じは普通の毛皮だったけど。ただ見た目で名前がついたのか?
「ガァッ!」
グラスベアは凶悪な爪を振り上げ、
「あれ?」
ただ無造作にそれを降り下ろした。
オレはものすごい衝撃を受け、視界が暗くなり――
[…………は戦闘不能になり……]
※※※※※
「……………………い」
あぁ、眠い……。
「…………な……い」
うーん、なんか最近もこんなことがあったような? でも眠い。
「いい加減に起きなさい!」
「はいッ!」
女性の怒鳴り声に、オレは慌てて起き上がった。
辺りを見回すと、そこには絶世の美女が……って、女神様! なんかデジャビュ。
いや、それよりも、何故ここに? っていうか、ここ、どこ?
オレは森の中にいたはずなのに、ここは……広い部屋の中に、天蓋付きベッドに鏡台、クローゼット等々、女性の寝室みたいだけど。
「そうですよ。ここは神界のわたくしの寝室です。以前に貴方と会ったところは、同じ神界でも誰でも使える……そうですね、会議室のようなものでしょうか」
女神様は豪奢なベッドに腰掛け、微笑みながら言った。
神界なのに、寝室があるのか……。しかも、会議室まで。
えっと……。
「その……何故?」
「何故、とは? 貴方がここにいることですか? それとも、何故寝室なのか、ということでしょうか? あるいは……わたくしが貴方の前にいることでしょうか?」
「えと、全部……?」
「では、全てお答えします。
一言で言えば……貴方がわたくしの世界に行き、そこで死んだので、わたくしが貴方をここに招待したのです」




