61話
コボルトの群れがこちらに迫ってくるが、どうしよう?
ぶっちゃけ、逃げるのは簡単だと思う。
『ショートジャンプ』を駆使すれば良いのだ。
だからこそ悩む。
いつでも逃げられるのだし、だったら戦おうか、なんて考えてしまう。
実際、両隣の二人──ディーネとジュリアはヤる気十分だ。
しかし、相手はコボルトの群れ。
数の優位というのは、侮れないと思う。
さらに、その群れにはリーダーみたいのがいる。
烏合の衆ならまだマシだけど、そうではないのだ。
うーん……。
あれだけの数の魔物を倒せれば、かなりの経験値になるんだよな。
それに、ギルドの討伐対象になってそうだから、お金にもなるわけで。
よし! やろう!
いざとなったら、逃げよう。
慎重に、少しずつ減らしていけば良い。
……となれば。
まずは『ショートジャンプ』。
群れの裏側に出る。
突然消えたオレたちに、連中は驚いている。
しかし、すぐに背後──オレたちを見付ける。
これは……匂いか?
もう一度確かめてみよう。
『ショートジャンプ』で、再び移動する。
コボルトたちはもう驚くことはなく、一度空を仰いだ後、オレたちを見付けた。
やっぱり……か。
これは面倒な。
風で散らせなくはないが、どの程度の精度なのかわからない。
やるだけムダな可能性も、十分ある。
ふむ?
今度は、距離をとって離れてみる。
それでも迷うことなく、近付いてくる。
数匹のコボルトが走ってやってきた。
ジュリアが斬り倒す。
時間はかかるけど、このやり方でいけるか?
事故がないとはいえないし、不測の事態に陥りそうだな。
では……。
『ショートジャンプ』を発動する。
群れの後ろに到達するが、連中は反転してすぐにやってくるだろう。
次に、空中に大量の水を出す。
それが地面に落ちる前に、ディーネが霧状にして周囲に散らす。
コボルトたちが近くに来たら、また『ショートジャンプ』で移動する。
コボルトの群れを中心に、その周囲をぐるぐると移動する。
オレたちを追いかけるコボルトたちも、同様にぐるぐると移動することになる。
連中は数が多いので、その分移動に時間がかかる。
それでも、中には足の速いコボルトがいて、こちらにやってくるが、少数なのでジュリアが倒す。
集団移動するには、訓練が必要なのです。
そうしないと、コイツらみたいに突出してくるのが出てくるのだ。
ぐるぐるしている間、ディーネは周囲に水を撒き散らす。
霧状にしているので、コボルトたちは避けることができず、その身体は濡れそぼっていた。
地面も水が溜まり、そこをコボルトたちが走り回ることで、泥まみれになっていく。
まだまだです。
上空に水を集めて貯め、雨のように降らす。
精神力の消費が尋常ではないが、できたことにビックリ。
魔法って面白い。
「ワオオオォォォォン!」
ぐるぐるとコボルトたちを走り回らせ、突出してきたコボルトを少しずつ減らしていった。
半分ほどになった──それでもまだ、百匹以上いる──ところで、リーダーが遠吠えをあげた。
む?
埒が明かないとみえて、むやみに動くのをやめたか。
まぁ、身体は水に濡れて、足下も泥だらけ。
下手に動いて体力が消耗するのを恐れたか。
それならそれで構わない。
一方的に殴るだけさ。
っと、温存していたアーチャーとメイジを出すか。
矢と魔法──『ファイアアロー』かな?──が放たれた。
でも、ムダムダ。
矢はジュリアが盾で弾き、『ファイアアロー』は擬似的な雨で減衰した上で、ディーネが水の盾で防いだ。
この状況下で火魔法を使うかね……。
それとも、それしか使えないのか?
呆れるが、相手がコボルトだったことを思い出す。
あんなもの、なのかな。
逆に、魔法が使えるだけスゴいんだね。
さて、足を止めての殴り合いがご所望のようなので、期待に応えよう。
相手の攻撃を、ディーネとジュリアに任せて、と。
オレはこの状況で有効な魔法を使う。
高威力にするため、ちょっと溜める。
そして、【雷魔法】の『ライトニングブラスト』を発動した。
コボルトの身体は濡れそぼり、地面も水溜まりだらけである。
どうなるかは、言うまでもない。
もちろん、一発だけじゃないよ。
何発も放つに決まっている。
ついでに、泥だらけの地面に工作する。
底無し沼とはいかないけど、少し深い沼の出来上がり。
感電して死なないまでも、動けなくなった状態で、沼に沈んだらどうなるでしょうか。
これまた、言うまでもないね。
バンバン魔法を放つ。
うーん。
最高です。
ですが……。
コボルトリーダーが倒れない。
他のコボルトたちが盾となって、リーダーを守ってやがる。
その上で、持ち前の体力で耐えているようだ。
ムカつく。
オレの魔法がショボいみたいじゃないか。
良いでしょう。
とっておきを喰らいやがれ!
「ワオオオォォォォン!」
オレの魔法が止まったので、チャンスと思ったのか、突撃してきたコボルトリーダー。
ただ、それでもダメージが大きかったようで、ふらついている。
ふはは!
もう遅い!
死んでオレの糧となれ!
周囲にある水を集めて、高圧射出する。
水の刃はコボルトリーダーの腹を突き抜け、その上半身は後方に吹っ飛び、下半身はしばらく走った後、崩れ落ちたのだった。




